グループホームとは?よくわかるサービス説明と入居前の5大確認事項

作業療法でリハビリする老人

認知症になった高齢者が、住み慣れた地域で周囲に大切に見守られながら、安心して暮らしていける施設として「グループホーム」というものがあります。

家族の安全を確保しつつ、暮らしやすい生活の場を選んであげたいものですが、グループホームがどういうものかが理解できていないと施設選びの際に「本当にここでいいのかな?」と、悩んでしまいますね。

そこで今回は、グループホームに関して以下のようにまとめました。

  1. グループホームとは 
  2. グループホーム入居前にしておくべき5つの確認事項
  3. グループホームの基本費用以外で発生するお金と使える助成金

最後までお読みになれば、グループホームの施設としての特徴がわかり、家族をグループホームに入居させる・させないの選択ができるようになります。また、入居先を選ぶ前に確認しておくべき内容や確認方法、入居後にかかるお金など、グループホームに関して知りたかったことが総合的にわかります。


1.グループホームとは 

グループホームとは、要支援2以上の認知症の症状を持つ高齢者が、家庭的な雰囲気のなか、59人で共同生活を送りながら、日常生活に必要な介護やサポートを受ける施設です。正式名を「認知症高齢者グループホーム」と言います。

施設内は、個室・リビング・キッチン・食堂・浴室などが揃っており、小規模な学生寮などと似ています。入居者は施設の中で自分が担当する家事などの役割を持ち、毎日の生活と役割を通じて認知症の進行を緩和し、同時に、心身共に安心した生活ができるようになることを目的にしています。

入居者の生活スタイルは、朝~昼は共同家事やレクリエーションなどをしながら過ごし、夜はそれぞれの個室で眠るという、ごく普通の生活リズムを崩さないように配慮されています。

認知症の症状による注意が必要な行動などに対して臨機応変に対応ができるように、すべての家事を含んだ共同作業・レクリエーション・睡眠中にも、グループホームのスタッフによる24時間の見守りがあります。また、食事・入浴・トイレの介助(介護)も必要な時はしてくれます。

1-1.グループホームを選ぶべき4つの理由

認知症の家族は、普通の高齢者向け施設よりも、グループホームに入居させたほうが良い理由を4つまとめました。

  1. 地域密着型サービスなので住み慣れた地域で生活できるから
  2. 認知症の進行を遅らせることができるから
  3. 認知症への理解が深いスタッフがいるから
  4. スタッフによるしっかりとした見守りがあるから

1-1-1. 地域密着型サービスなので住み慣れた地域で生活できるから

グループホームの利用者は、基本的にその自治体に住民票のある人で、要支援2と要介護15の認知症の診断をされた高齢者だけです。

グループホームは、地域密着型サービスという、高齢で介護が必要な状態になっても、できるだけ住み慣れた地域で生活が続けられるように、自治体が地域住民のために提供するサービスです。

自治体が主体となり地域内の事業所を指定して運営監督をしています。地域の特性にあったサービスができるという利点があるため、地域の高齢者に対してのみ提供されます。

入居者は、家族や知人友人との思い出がたくさんある、慣れ親しんだ場所で認知症と向き合って生活していくことができます。

【参照:公益財団法人 長寿科学振興財団 地域密着型サービスとは

【参照:地域の認知症ケアの拠点としての認知症グループホームのあり方に関する調査研究事業

1-1-2. 認知症の進行を遅らせることができるから

グループホームで適切な生活をしていると、認知症の進行が遅くなることがわかっています。例えば、グループホームでは脳機能の維持・向上のために、入居者に施設内の役割を持たせます。

自分が担当している役割をきちんとこなすためには、約束事と確認が必要になります。例えば、毎週決まった曜日に大広間の掃除をすることが役割担当になった場合、

  • 何曜日の何時から
  • 大広間の掃除をする
  • 必要なものは、雑巾とほうきとチリトリ
  • グループのみんなにも声をかける
  • 掃除は、何時までに終わらせる
  • スタッフのAさんに報告

など、自分の役割に一連の作業を関連付け、繰り返し記憶し続けることが、自然に脳の記憶機能の鍛錬になります。役割はその人の認知症の進行度合いや、得意なことによって違います。

このように、グループホームには、日々の普通の暮らしの中に、認知症の進行を食い止める要素がたくさんちりばめられています。

認知症は、自分の記憶の一部分がハッキリしなくなる病気のため、わからないことがあると大きな不安を感じ、心身ともに疲労困憊するという特徴があります。そのため、グループホームでの生活は、

  • 自分の個室
  • お風呂
  • トイレ
  • 食堂
  • キッチン
  • いつものメンバー
  • いつものスタッフ

など、入居者を取り巻く生活環境がシンプルになるように設計されており、「いつもの」なじみのあるもので自分の周りが構成されているので、記憶の確認に迷いが生じにくく、毎日を不安なく過ごせます。

心身ともに安心した生活ができることによって、焦燥感・疲労感が減り、新しいことを覚えていこうという気力が維持され、認知機能の回復にも役立ちます。

また、グループホームという社会の中に、自分の役割があることによって、自分が「支えられるだけの人」ではないという体感を得られ、自己信頼と自尊心の回復にもつながります。

【参照:グループホームケアの効果・評価に関する調査研究事業検討委員会

【参照:認知症グループホームの強みを活かして! – 厚生労働省

1-1-3. 認知症への理解が深いスタッフがいるから

グループホームは認知症の症状がある高齢者のための施設ですので、認知症という病気をよく理解したスタッフが勤務しています。

グループホームのスタッフは        、「今までの暮らしに障害がでる」という認知症の特徴をよく理解しており、正しい関わり方を知っています。例えば

  • 叱らない
  • 言っていることを否定しない
  • 一度にたくさんのことを言わない
  • 近すぎず遠すぎない場所から声をかける
  • 目線を同じに高さに合わせてくれる
  • 突然、後ろから話しかけない
  • トイレや風呂など、大事なものは見つけやすいように表示しておく

など、認知症という病気の方が置かれている状態をよく理解し、その人の「今の状態」に合わせてサポートをしてくれます。そのため、入居者は暮らしの中で不安になることが減り、心身ともに安定した生活を続けられます。

【参照:認知症介護情報ネットワーク 認知症の理解

【参照:伸康会 認知症ケアマニュアル

【参照:トム・キッドウッド パーソンセンタードケア

◆コラム◆認知症、という病気    

認知症は過去の記憶の何もかもわからなくなっている状態ではなく、記憶の一部がハッキリしなくなってくるという病気です。そのため、認知症がある状態というのは、本人が一番、不安を感じています。

例えば、認知症の方の内側はこのような世界になっています。

「いつも通っていた道のはずだけど、なぜか今日はいつもの場所にたどり着けない、なぜだろう?」

「今日は何の予定があったんだっけ? 今日は一体、何月何日の何曜日なんだろう?」

このように、歩く・確認する・話す・考える・思い出すなどは普通にできますが、記憶の一部だけがつながらず、自分の体験と記憶の確かさがグラグラと揺らいでいる状態です。

認知症の方は、今の自分が置かれている状況がよく理解できないことを、本人が最も驚き、もどかしく感じています。そのため、認知症の方の心理状態は非常に不安定であり、周囲からの支援や理解が得られない時、例えば

  • 相手から嫌そうな顔をされる
  • 相手が不安そうな表情をする
  • 叱られる
  • 「だから、さっきも言ったでしょ!」のような言葉を言われる

などがきっかけで、焦りや混乱でパニックになり、感情が不安定になります。グループホームのスタッフは認知症のメンタル面での理解も深く、状況によっては、家族よりも適切な対応ができます。

【参照:グループホーム都和のはな  業務マニュアル

【参照:認知症は病気です!

1-1-4. スタッフによるしっかりとした見守りがあるから

グループホームで暮らす59人のメンバーに対し、24時間365日の見守りがあるため、家庭での見守りよりも強く守ってあげることができます。

要介護度が上がってくると、毎日の生活の立つ・座るにも、都度、サポートが必要になりますが、施設でしっかりと見守りができる範囲のグループ人数に対応をしますので、家で見守るよりも、安心してお任せができ、小さなケガなどが減っていきます。

また、要介護度が軽い場合は「動ける高齢者」であることを前提に見守りをします。

「徘徊」という認知症特有の症状によって行方不明になり、家族による捜索願届が出る人数は、2013年度から毎年で平均1万人以上もいます。グループホームには24時間365日の見守り体制があるため、このようなトラブルに遭う可能性が非常に低くなります。

【参照:桜美林大学老年学総合研究所 国立長寿医療研究センター 鈴木 隆雄 認知症と社会

【参照:鈴木 隆雄 認知症高齢者の徘徊・行方不明・死亡に関する研究

【参照:厚生労働省 行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ


2.グループホーム入居前にしておくべき5つの確認事項

本章では、グループホーム入居を検討したときに、入居前にしておくべき5つの確認事項をまとめました。

確認事項1 グループホームの入居5条件

確認事項2 グループホームの入居待機期間の対処法

確認事項3 グループホームでかかる基本費用相場

確認事項4 グループホームの介護体制(スタッフ)

確認事項5 グループホームの医療体制

2-1. 確認事項1 グループホームの入居5条件

グループホームは59人を1グループとし(施設側ではユニットと呼びます)、このグループは1施設に最大で2つまでしかない、非常に小さな規模の施設です。

グループホームに入居するには、以下の5条件が必要です。

条件1 認知症の診断があること

条件2 要支援2以上、要介護15であること

条件3 原則として65歳以上であること

条件4 地域住民であること

条件5 共同生活ができること

2-1-1. 条件1 認知症の診断があること

医療機関で医師による認知症の診断結果が必要です。認知症の検査や診断は、病院・診療所・クリニックなどの医療機関で受信できます。

診療科目は、精神科・心療内科・脳神経外科・神経内科などです。これらの外来がある医療機関であれば、どの科目でも診察をしてくれます。かかりつけ医がいる場合は、まずは相談してみましょう。

【参照:一般社団法人認知症予防協会

2-1-2. 条件2 要支援2以上、要介護15であること

要介護認定で要支援2または要介護15の診断が必要です。要介護認定の診断は、入居希望者本人が住んでいる市区町村の窓口か郵送で、入居希望者本人か家族がします。

受付窓口の名称は市区町村によって異なりますので、自治体ホームページや電話問い合わせで確認します。例えば、神奈川県の相模原市にお住まいであれば「介護申請 神奈川県相模原市」でネット検索をすると次のような相模原市の運営するホームページがあります。

介護保険認定申請書|相模原市

申請書のダウンロード先と、地域ごとの申請場所がリスト化されていますのでお近くの申請場所を利用します。申請は郵送でもできます。

本人または家族が諸事情によりすぐに申請ができない状態にある場合(入院中、遠方に住んでいるなど)は、自治体の地域包括センターで代行申請をお願いすることができます。その場合は、担当者が認定を受ける人のお宅へ直接伺い、申請書を記入します。

【参照:地域包括支援センター

2-1-3. 条件3 原則として65歳以上であること

グループホームは、正式名を「認知症高齢者グループホーム」と言いますので、原則として介護保険が適用される65歳以上の「高齢者」が対象です。入居予定者が40歳~64歳の場合は、健康保険証が必要です。

2-1-4. 条件4 地域住民であること

グループホームは地域密着型サービスであることから、入居者はグループホームがある地域の住民であることが条件になります。施設によっては住民票の提出が必要なところもあります。

気に入ったグループホームが、現在お住まいの地域とは違う場所にある場合は、住民票を移動させる必要があります。

住民票を移動させてからどのくらいの期間が必要かは、地域や施設によって違いますので、入居希望のグループホームに確認しておきます。また、介護保険料は自治体によって金額が違いますので、移動前によく確認しておきましょう。

【参照:厚生労働省 全国の地域別介護保険料額と給付水準を公表します

2-1-5. 条件5 共同生活ができること

グループホームは59人で構成される1グループで共同生活をする場所ですので、人と一緒の暮らしが問題なくできる必要があります。

これは、グループホームの重要事項説明書などに記載のある、退去条件と関わりがあります。

多くの施設では、重要事項説明書で「暴力行為などの問題行動や、迷惑行為により共同生活が困難になった場合」を退去条件に上げており、施設で問題が解決できないと判断した場合は、退去を勧告される可能性があります。

各施設によって見解が違うため、「問題行動」や「迷惑行為」を具体的にどのようなものだと捉えているかを、事前によく聞いて、確認しておく必要があります。

【参考:ベネッセ グループホームくらら南大沢 重要事項説明書 P4「利用をお断りする場合」

2-2. 確認事項2 グループホームの入居待機期間の対処法4

グループホームは一つの施設の受け入れ人数に上限があるため、満室になるとなかなか空きが出ないことがあります。そのような場合の対処法を4つにまとめました。

対処法1 地域すべてのグループホームを確認してみる

対処法2 1つの家庭が複数申し込みをしているケースがある

対処法3 介護認定には30日かかると想定して動く

対処法3 グループホーム入居待ち期間中の2大対策

2-2-1. 対処法1 地域すべてのグループホームを確認してみる

たまたま、気になって申し込みをしたグループホームに空きがなかっただけで、同じ地域で他のホームには空きがある可能性があります。

グループホームは、基本的に住宅街の中に設立するため、長く住んでいる地域でも、普段あまり足を運ばない方面の施設の存在は知らない可能性があります。また、新規施設が開業することもあります。

グループホームは地域ごとの自治体が監督・指示をしているため、新規施設の開所・各ホームの空き状況などは、自治体の地域包括支援センターが最新データの入手先になります。ネット検索では、厚生労働省が運営する介護サービス情報公表システムの全国版検索ページからも空き情報が探せます。

次項でも説明がありますが、グループホームの申し込みは一度に複数申し込めます。

【参照:厚生労働省 統計データ 事業所の現況 令和元年

2-2-2. 対処法2 1つの家庭が複数申し込みをしているケースがある

グループホームへの申請件数には特に上限がないため、1家庭が区内の複数のグループホームに申請書を一度に提出しており、その審査待ちである可能性もあります。

そのため、仮に施設からキャンセル待ちだといわれても、そのままキャンセル待ちに申し込んでおけば、想定よりも早く順番が来る可能性があります。

2-2-3. 対処法3 介護認定には30日かかると想定して動く

介護認定が下りるまでには30日かかる想定で準備をしましょう。いろいろ悩んだ結果「やっぱり親をグループホームに入れよう!」と決断しても、要支援2以上の介護認定がないとグループホームには入れません。介護認定は以下の手順で進みます。

  • 申請
  • 認定調査(コンピューターと専門家による2段階調査をします)
  • 審査判定

基本的に、認定が下りるまでに丸一か月かかります。

グループホームを含めたなんらかの施設に入居を検討しはじめた時点で、要介護認定は受けておくほうが良いでしょう。申請書は最寄りの地域包括支援センター・地域の介護保険課や高齢者福祉課などの窓口で入手できます。

2-2-4. 対処法4 グループホーム入居待ち期間中の2大対策

グループホームのキャンセル待ちなどの待機期間中は、基本的には在宅介護になりますが、各家庭の事情によってはできないこともあります。そのような場合の解決方法として以下の2つ方法があります。

・対策1 入居一時金のない有料老人ホームに短期入居をして待機

民間の有料老人ホームのうち、入居一時金がないタイプのホームを選択して、一時入居をしてサポートを受け、キャンセル待ち順番の声がかかったら移動をします。民間の有料老人ホームの場合、ほとんどの施設は認知症の受け入れをしており、適切な対応ができます。

・対策2 ショートステイの最大限活用で待機期間を乗り切る

介護保険で利用できるサービスに、ショートステイという短期間の宿泊サービスがあります。

もともとは、介護者が病気・冠婚葬祭・出張・リフレッシュなどのために使うもので、公的施設(特養など)に短期利用で宿泊をし、短期入居者は宿泊中に必要な介護や機能訓練を受けます。

本来のショートステイは要介護認定別に利用日数の上限が決まっていますが、諸事情により長期の宿泊が必要になった場合には、最大30日までの利用が可能です。

今回のように、在宅介護が難しく、すぐにグループホームに入居できない場合に、この方法を使って乗り切ることができます。ショートステイの長期利用条件は2つあります。

①ショートステイは、介護認定期間の半数を超えてはいけない

介護認定期間とは、要介護認定の有効期間のことをいいます。介護される側の状態は日々変わりますし、要介護度ごとに必要なサービスも変わるので、要介護認定には介護認定期間という有効期間があります。

原則、介護認定期間は6か月(180日)で、この認定期間の半分である90日までは、ショートステイが使えます。

【参照:厚生労働省 要介護認定について

②ショートステイを連続して利用する場合、同じ施設で30日を超えてはいけない

同じ月内でも月をまたいでも、30日までは同じ施設で連続利用ができます。次の長期ショートステイ先が別の施設の場合は、その施設で再度、30日の最大利用が可能です。(空きがあれば)

①②の条件を両方クリアすれば、施設を3か所移動しての3か月利用、または1か月ごとに在宅を挟んで半年間の待機にも対応ができます。

【参照:ショートステイ

2-3. 確認事項3 グループホームでかかる基本費用相場

グループホームでかかる基本費用と相場をまとめました。費用のうち、介護保険が適用できるのは介護サービスのみですので、それ以外の生活全般にかかわる費用は基本的に自費です。

グループホームは民間会社が自治体の許認可と監督のもと運営しているため、運営会社と立地などによって施設の費用などに違いがあります。

以下の表は、厚生労働省が運営するサイトから介護サービス事業所比較の一例を参考に、サイトで任意にピックアップした施設をもとに、基本費用相場を編集部がまとめたものです。グループホームにかかる費用の目安として参考にしてください。

 

グループホームA

グループホームB

個室の広さ

個室 9.9

個室 8.8

敷金

150,000円

なし

保証金(入居一時金)・償却の有無

保証金あり・償却なし

保証金あり・償却200,000

家賃

50,000円/月

65,000 円/月

食材料費

1,300 円/日

1,500 円/日

介護サービス費

全サービス費用の13割負担

全サービス費用の13割負担

【参照:認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)介護サービス事業所比較の一例 

2-3-1. 個室の広さ

個室は約6畳ほどです。個人の愛用している持ち物や家具などの運び入れが可能です。多くの施設では、トイレ・浴室・リビング・食堂はグループで共同使用です。

2-3-2. 敷金

 

グループホームA

グループホームB

敷金

150,000円

なし

敷金は、施設によって設定のあるところ・ないところがあります。グループホームAの場合は敷金ありで150,000円、家賃の3か月分の設定です。

敷金の有無は、施設の建っているエリアや立地条件、建物の構造や内装設備、築年数などをもとに運営会社で決定します。また、都道府県によって、もともと不動産に敷金設定がある地域・ない地域があり、その慣習にも準じています。

各施設の敷金の値段は、施設の契約書と重要事項説明書に記載があります。 

2-3-3. 保証金(入居一時金)・償却の有無

 

グループホームA

グループホームB

保証金(入居一時金)・償却の有無

保証金あり・償却なし

保証金あり・償却200,000

保証金(入居一時金)はグループホームABとも設定がありますが、グループホームAは償却がないため退去時には全額返金、グループホームBは預かった保証金(入居一時金)の中から、20万円分は必ず施設が運営費として充当します。

保証金(入居一時金)の金額は数万~100万円までと幅広く、この金額の差や償却の有無は、施設のあるエリアと立地条件が大きく影響します。グループホームは基本的に地域の住宅街に施設がありますので、周辺エリアの地価が高いと、保証金も高額になり、経営の観点から運営費として保証金の償却をする傾向があります。

保証金(入居一時金)の金額は、契約書と重要事項説明書に記載があります。 

2-3-4. 家賃

 

グループホームA

グループホームB

家賃

50,000円/月

65,000 円/月

 家賃はグループホームAで月額50,000円、Bで月額65,000円です。

家賃設定は、グループホームABとも、同地域で同じ広さの賃貸マンションの家賃相場と比例します。平均的な個室の大きさは、で示したように6畳程度になります。

③の保証金同様、エリアの地価が高いと家賃も高くなります。

 

2-3-5. 食材料費

 

グループホームA

グループホームB

食材料費

1,300 円/日

1,500 円/日

 食材料費はグループホームA1日あたり1,300円、B1,500円となり、月額で40,00046,500円になります。厚生労働省の発表する家計調査(家計収支編) 時系列データ(総世帯・単身世帯)のデータでは、20002020年までの平均的な月間食料費は

  • 単身世帯:46,130円(1日あたり1,488円)
  • 総世帯:70,316円(1日あたり2,268円)

ですので、単身で支払う費用としては妥当な金額だといえます。

【参照:家計調査(家計収支編) 時系列データ(総世帯・単身世帯)

2-3-6. 介護サービス費

 

グループホームA

グループホームB

介護サービス費

全サービス費用の13割負担

全サービス費用の13割負担

※介護保険の自己負担割合は、毎年7月に郵送されてくる介護保険負担割合証に記載があります。

介護サービス費用は要介護度と利用する施設ごとに厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索サイトの介護サービス概算料金の試算で概算を把握できます。

要支援2でグループホーム利用の場合、月額介護サービス費用の概算は247,860円となり、この金額を介護保険の負担割合に応じて支払います。

※介護保険の自己負担割合は、毎年7月に郵送されてくる介護保険負担割合証に記載があります。

【要支援2・グループホーム入居の場合】

  • 1割負担(年金収入280万円未満):自己負担額のめやす 24,786
  •  2割負担(年金収入280万円以上340万円未満):自己負担額めやす 49,572
  •  3割負担(年金収入340万円以上):自己負担額のめやす 74,358

2-4. 確認事項4 グループホームの介護体制(スタッフ)

グループホームで働くスタッフの介護体制を確認しましょう。グループホームの人員配置は法令に沿っており、介護サービスやサポート内容も施設ごとのマニュアルに沿って行いますので、入居者とその家族がチェックすべきポイントは、スタッフの質の部分です。

施設見学や周辺を通った時に、グループホームスタッフのちょっとした態度から、職場環境の状態が垣間見ることができます。特に、以下の3つに注目しましょう。

  •  スタッフのあいさつ
  •  スタッフの働きぶり
  •  スタッフ同士の雰囲気

2-4-1.スタッフのあいさつ

笑顔で気持ちの良い挨拶ができているかを確認します。地域密着型サービスであるグループホームは、主に住宅街にあり、近隣住民の方にも積極的に地域高齢者との関わりをお願いしています。

そのため施設スタッフの挨拶の良さはそのまま、周辺地域との関係性を反映している可能性あります。特に、見学などで内部に入ったときに「こんにちは」などの挨拶の言葉だけでなく、

  • 立ち止まって挨拶をする
  • 目を見て挨拶をする
  • 笑顔で挨拶ができている

などに注目します。自分の仕事が忙しすぎて、ゲストへの挨拶もままならない環境では、入居者に丁寧なサポートをするのは無理であると想像できます。

2-4-2.スタッフの働きぶり

食事・排泄の介助の時の、入居者への態度をよく見ておきましょう。

  • 言葉使い
  • 嫌そうな表情
  • 入居者への扱い方

など、乱暴で粗雑な感じの印象を受けた場合は、スタッフの教育が良く行き届いていない現場である可能性があります。

2-4-3.スタッフ同士の雰囲気

ゲストに対して礼儀正しくても、仲間同士のコミュニケーションが良くないと、良い介護サポートはできません。

介助時などにスタッフ同士がお互いに声を掛け合っているか、普段からよくコミュニケーションが取れているかなどをよく観察しましょう。

2-5. 確認事項5 グループホームの医療体制

グループホームは、看護士の配置義務がないため、医療体制は施設によって大きな差があります。

医療体制が不十分な施設では、地域医療との連携をし、訪問看護を充実させているところもありますが、医療依存度が高い状態は適切な対処ができないため、入居を断られることがあります。

グループホームの施設内で介護スタッフができる医療行為には制限があります。特定の研修を受けて合格をした介護スタッフは、「認定特定行為業務従事者」として、以下の医療行為ができます。

  • 喀痰吸引(定期的に痰を取り除く行為)
  • 経管栄養(体外から管を通して栄養や水分を投与する行為)

ただし、認定特定行為業務従事者が行う医療行為に関しては、本人と家族の同意が必要であり、その医療行為は、施設が連携している医師・看護士の指示があるときのみになります。

入居をしていても、この医療体制でのサポートが不十分になるほど医療依存度が高くなった場合は、施設から退去をお願いされますので、入居者に持病がある場合は、将来のことも考えて施設選びをする必要があります。

【参照:厚生労働省 施設・居住系サービスについて

【参照:喀痰吸引制度について

◆コラム◆ すぐわかる!グループホームと老人ホームの違い

グループホームも老人ホームも、認知症の高齢者の受け入れがある施設ですが、入居先を探していると施設によって個性があるため、違いがわからなくなってくることがあります。

本コラムでは、パッと見てわかるように、2つの違いを表にして比較しました。老人ホームは公的施設から民間施設までを含めた総合的なまとめになっています。

グループホーム

 

老人ホーム

65歳以上の、要支援2・要介護15認知症の診断がある方が対象

対象者

60歳以上の高齢者が対象・入居時自立~要介護5まで幅がある。認知症の受け入れはOK

自治体の指定を受けた地域の民間事業。

運営監督は自治体が主体

運営

民間企業、社会福祉法人、医療法人、NPO法人

各施設が独自に運営

認知症の進行を緩和させる目的がある施設。介護の必要がある場合は、介護サービスもする。

特徴

高齢者に必要な介護サービスをする施設。

1グループに59人。1施設に最高2グループまでの少人数体制。

入居人数

数名から100名越えなど、規模によってかなりの幅がある。

役割と共同作業があり、認知症の方が生活しやすいようにコントロールされている。

生活

介護の必要がない場合は、比較的自由に行動ができる。

地域の住民票がある方が対象。

地域条件

地域による制限はない。ただし公的施設の場合は地域住民を優先する。

地域家賃相場に準じた家賃+生活費

費用相場

施設により月額数万~100万までの幅がある。

一般的なマンションや寮などと近似

施設設備

一般的な医療施設~ホテル並みまで幅がある

看護士の配置義務なし。

緊急時は地域の医療連携で対応。

病気の場合はかかりつけ医などの訪問診療。

医療体制

看護士の配置義務あり。

協力医療機関と提携をして、定期健診・訪問診療を実施。看護師による毎日の健康管理。

施設によっては併設医院あり。

共同生活が難しくなった場合

医療依存度が高くなった場合

退去

共同生活が難しくなった場合

長期入院による不在期間が続いた場合

両施設とも認知症の受け入れをしますが、グループホームはより、認知症に特化した施設であることがわかります。

老人ホームは施設によって各項目大きな違いが出ますが、グループホームは基本的に自治体指定・監督をする施設のため、地域においては、項目ごとの大きな差が出にくい傾向があります。

医療体制のみ明確な差があり、看護士配置の義務がないグループホームは、入居者の医療依存度が高くなった場合には、医療体制の整った老人ホームなどに移動する必要が出てきます。入居予定者に持病がある場合は、先々のことを考慮に入れて、慎重に施設を選ぶ必要があるでしょう。


 3.グループホームの基本費用以外で発生するお金と使える助成金

本章では、グループホームを利用したときに、施設の基本費用以外で発生するお金と、費用負担を軽くする助成金などをまとめました。

3-1.基本費用以外でかかるお金

23で解説したグループホームの基本費用以外で介護にかかるお金には、以下の6種があります。

  1. 医療費
  2. デイサービス費
  3. ショートステイ費用(お試し入居にも使える)
  4. 子供世代の通いのための交通費
  5. 携帯代などの通信費
  6. 看取り費用

これらはすべて、利用したときだけかかるお金です。 

3-1-1. 医療費

医療機関にかかると、訪問・外来・入院で医療費がかかります。例えば、グループホームに入居中、風邪をひいてしまい、近所の医療連携施設で診察をしてもらった場合などに医療費が発生します。

日本には皆保険制度という、日本国民であれば誰もが入れる医療保険がありますので、窓口で健康保険証を提出し、保険適用の診療内容であれば医療費がそれほど高額になることはありません。

医療費の負担割合は以下の図のようになっており、年収と年齢で一律に振り分けられます。

 

低所得・一般所得者

現役並み所得者

年収約370万円以上

75歳以上

1割負担

 

3割負担

70~75

2割負担

 

義務教育開始後

6~70

 

3割負担

 

0~6

2割負担

【参照:我が国の医療保険について

主にグループホーム入居中に発生する医療費は以下の内容になります。

・往診

入居者からの求めに応じて施設に訪問して診察をした場合の診療費

・訪問看護

看護士が施設に訪問した場合の訪問看護費用

・外来受診

自分で医療機関へ出向き、診察を受けた場合の診療費

・薬代や検査費用

処方箋で出した薬代。検査が必要な場合の検査費用。または、自分で薬局などで購入した「症状を良くする目的」の薬品など。(例:鼻風邪がひどいので、パブロンなどの風邪薬を買った)

・あんま マッサージ

国家資格のあるあんま・指圧・鍼治療などにかかったときの代金。

<医療費が高かった時>

また、保険適用外の診療を受けた・複数の診療を受けた・手術をした・入院が長引いたなどで医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の適用により一か月の上限金額までの支払いに負担が軽減され、窓口支払った金額から上限額を超えた分が払い戻しされます。

上限金額は、年齢と所得によって異なります。例えば、70歳以上の方の月額の医療費上限額は以下のようになります。

70歳以上

外来(個人)上限額

ひと月の上限額 (世帯ごと)

 

 

現役並所得者

年収約1160万円~

252,600円+(医療費-842,000)×1

年収約7701160万円

167,400円+(医療費-558,000)×1

年収約370770万円

80,100円+(医療費-267,000)×1

一般所得者

年収156370万円

18,000円

 57,600円

 

低所得者

住民税非課税世帯

 

8,000円

24,600円

住民税非課税世帯

(年金収入80万円以下など)

15,000円

【参照:厚生労働省保健局 高額療養費制度の見直しについて(概要)

上記表をもとにすると、例えば、一般所得者の場合は、個人での外来診療で18,000円以上の金額がかかった場合は、上限を超えて支払った分が支給されます。(黄色部分)

例)70歳 一般所得者 外来での診療費が40,000円だった場合

窓口で支払った金額40,000円 ー 外来の上限額18,000= 22,000円が支給されます。

上記表は制度の概要をまとめたものですので、69歳以下、家族世帯全員分の金額、年間に複数回の医療費が発生した場合などの詳細は、厚生労働省の資料を確認してください。

高額療養費の支給は、自分で申請する必要がありますので、加入している公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合などに、高額療養費の支給申請書を提出または郵送してください。

医療機関によっては、窓口での支払い時に高額療養費の説明と資料を手渡してくれるところもあります。

【参照:厚生労働省 高額療養費制度

3-1-2. デイサービス費

入居・宿泊とは違い、必要な介護を必要な施設まで通って受けることを「通所サービス」と言います。入居先グループホームのレクリエーションプログラムなどに、希望しているプログラムがない場合は、通所系サービスの利用ができます。

通所系サービスには以下のようなものがあります。

・デイサービス(通所介護)

必要な介護サービス、例えば入浴などをプロの介護職員がいる施設まで行って、介助をしてもらいます。

・デイケア(通所リハビリテーション)

必要な歩行訓練などの介護リハビリテーションを、理学療法士や作業療法士などのプロがいる施設まで行って、機能訓練を受けます。

・ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)

次項で説明

利用した通所サービスは介護保険の適用があり、費用は利用時間と要介護度+利用サービス+オプションの加算方式で算出されます。

例えば、要介護1の方が、通所系のリハビリテーションを78時間利用した場合は、以下のような計算方法になります。厚生労働省の資料によると、平均的な通所系サービスの月額利用料は6,867円(年間82,400円)です。

例)要介護1 通所系リハビリと入浴 7時間滞在を月2回 介護保険1割負担

①716円(要介護178時間利用費)+50円(入浴介助加算)=766

②766円+50円(施設のおやつ代)+600円(昼食代)=11416

③リハビリマネジメント 月額850

月額負担(①+②2,232円)×2+③850円=5,314

【参照:厚生労働省 通所リハビリテーション

 利用時間は12時間から最高8時間まで、希望滞在時間と体力に合わせ、必要なプログラムを組み合わせます。利用方法はフレキシブルです、例えば、利用プログラムは1個だけで、あとは通所サービス先の友達とおしゃべりや遊びを楽しみたいから8時間滞在、などもできます。

利用する費用の試算は、利用予定の施設、ケアマネージャーまたは地域包括支援センターなどの相談窓口で、見積もりを出してくれます。

通所サービスは、ワゴン車などで利用者の施設玄関までの送迎があります。朝8時代に迎えが来て、夕方5時過ぎてから自宅前まで送りがありますので、通所サービスに家族が付き添う必要はありません。

実施プログラムは施設ごとに違いがあり、施設によって集まる人や雰囲気なども違うため、通い系サービスの施設を決める場合は、学校選びなどと同じように、先に下見やクラス見学をして、通う人・家族とも納得したところのほうが、友人もできて長く楽しく通えます。

3-1-3. ショートステイ費用

前項の通所系サービスの中に、施設に宿泊をするサービスがあり、ショートステイと呼ばれています。

グループホームの場合は施設に自分の個室があり、介護スタッフも常駐していますので、基本的にショートステイは不要なのですが、病気やケガなどの回復期に、集中的に介護やリハビリが必要なケースでは、ショートステイの利用をすることがあります。

宿泊先はある程度限定されており、介護サービスを利用する場合は特別養護老人ホーム、リハビリをする場合は老人保健施設などの医療系施設となります。

滞在費用は施設によって異なりますが、介護サービス費以外で実費としてかかる費用は以下の通りです。

・食費

グループホームでの一日の食費に準じる

・宿泊費

施設の規模などにより、一泊1,0002,000円の範囲

持病や身体機能に問題があり、ある程度整った医療体制が必要になってきた場合は、ショートステイでグループホームからの移動先を確認するためのお試し入居にも使えます。また、グループホームの待機期間の一時入居先としても使えます。

【参照:ショートステイ

3-1-4. 子供世代の通いのための交通費

グループホームは地域密着型サービスですので、親は地元のグループホームに入りますが、子世代が離れた場所に住んでいる場合は、親の様子を見に施設まで来るのに交通費がかかります。

グループホームのある場所が交通の便の悪いところや、遠方だったりすると、時間節約のためにタクシー利用をすることもあります。また、そこまで遠くなくても、仕事帰りにちょっと様子を見ようとする時には、面会時間に間に合わせるためにタクシーを使ったりすることが増えます。

これらは全額自己負担になります。交通費負担軽減への対策は32を参考にしてください。 

3-1-5. 携帯代などの通信費

グループホームの近くに住んでいても、遠く離れていても、普段のコミュニティや、万が一の安否確認・徘徊や迷子対策として、親や家族にGPS機能をオンにした状態のスマホを持たせるケースは多いでしょう。

 離れた場所に住む場合は、自然災害などの安否確認としても使えるため、スマホまたはiPadなどを持ってもらうほうが安心です。これらの携帯代金は、今まで通り自己負担になります。また、自治体によって、徘徊防止のためのGPS小型機などのレンタルがあるところもあります。

【参照:東京都江戸川区 熟年者徘徊検索サービス

3-1-6. 看取り費用

グループホームを終の棲家とした場合は、看取り費用が発生します。グループホームにおける看取りとは、「口から食べられなくなったら、不必要な延命治療は行わない」ことを、本人・家族・施設の3者が了承している前提です。

医師や看護士が通ってきて定期的な診療はしますが、基本的には自宅にいるのと同じような、自然死に近い最期の迎え方をします。

ただし、グループホームでの看取り症例はそう多くはありません。理由としては、入居者の医療依存度が高くなると高度医療が必要になるため、グループホームから病院へと移動するケースが多いこと、または、病気などがない場合は終末期に一度、自宅に戻り、そのまま亡くなるケースが多いからです。

グループホームで看取りをする場合は、最期の時期には手厚いサポートが必要になるため、看取り介護加算という介護保険適用の介護サービス費が発生します。いずれも、医師が終末期にあると判断し、看取り介護を行った場合にのみ発生します。

これらの看取りと、看取り介護加算に関した内容は、施設の重要事項説明書に記載があります。以下の表は、看取り介護加算報酬額の一例です。具体的な看取り方法に関しては、入所審査時と入所後に、看取りについての希望などを質問されます。

死亡日以前430日以下 

148円 

死亡日前日・前々日 

699円

死亡日

1315円

【参考:看取り介護加算 一日あたりの報酬 高齢者グループホーム「輪」利用料金表

【参照:厚生労働省 認知症について 看取り介護加算の見直しについて

【参照:民医連医療 介護福祉士 寺田慎 終末期にかかわる介護職の実践と課題 

3-2. 費用負担を軽くする方法

グループホームの基本費用以外に発生するさまざまな介護コストを、少しでも軽くするための方法や助成金などの情報をまとめました。

3-2-1. 要介護認定と介護保険

グループホームに入居をするためには、要支援2以上の要介護認定が必要です。そして、介護サービスは、要介護認定が下りてはじめて介護保険による負担割合が適用されます。

介護保険の負担割合は、自分で計算をしなくても、毎年7月に郵送されてくる介護保険負担割合証に記載があります。負担割合は前年度の世帯年収などをもとに毎年更新されます。)

介護保険は医療保険とは違い、介護保険証を持っているだけでは介護保険サービスが使えません。介護保険を利用して介護サービスに介護保険適用するには、この人には介護が必要だと認定される必要があり、その認定方法を「要介護認定」と言います。

この認定を受けるためには、入居予定者の住んでいる地域の役所に、本人か家族が要介護認定の申請を出し、どの程度の介護が必要なのかを自治体に決めてもらう必要があります。
必要な介護サービスを十分に受けるためには、適切な認定が必要です。

例えば、要支援2と認定されるべき親が、要支援1で認定されてしまうと、グループホームの申し込みすらできなくなります。要介護認定は、申請後に認定調査員が家に来て、

  • 1人で寝返り打てますか?
  • 両足で10秒以上ちゃんと立っていられますか?
  • 椅子やベッドから自力で立ち上がれますか?

などの74項目にわたる聞き取り調査を親(またはグループホーム入居予定者)にします。しかし、親世代には、プライドが高い方や遠慮がちな方が多いので、聞かれたことに何でもかんでも

「はい、できます」

「大丈夫です!問題ありません」

と優等生な回答をしてしまう傾向があり、その結果、介護の実情よりも軽い認定になってしまうことがあります。

また、認知症の方は、症状がかなり進んでいる状態であっても、初対面の人の前では緊張し、シャキッとした立派な態度で対応する人も多いため、聞き取り調査時には、万難を排して家族が付き添い、事実と異なることは訂正をしておく必要があります。

【参照:要介護認定はどのように行われるか

【参照:要介護認定の不服申し立て 介護保険審査会

コラム■チェックリストに注意

申請をして、明らかに支援が必要な場合はすぐに認定が下りますが、本人と家族の状況によっては「基本チェックリスト」というものを渡されます。

チェックリストに回答をして、介護が必要だと判断するための総合点が足りないと、要介護認定の申請ではなく、総合事業(地域の事業者等が行う、介護予防のための有償生活支援サービス)の利用をすすめられてしまうことがあります。

こうなるとグループホームへの入居ができないばかりか、要介護認定を受けるまでの期間**は介護保険の適用をするサービスが使えずに、家族の介護負担と、費用負担が増大していきます。

**要介護認定の内容に納得がいかない場合は、不服申し立てができますが、その返答までにはさらに12か月を要します。

役所が総合事業をすすめて来る理由の一つに、その地域での介護保険の給付額を抑制したいことが目的の場合があります。しかし、グループホームを希望している場合は、要支援2以上の要介護認定が下りないと入居ができませんので、

たとえ申請時に総合事業サービスの利用をすすめられても、「要介護認定を申請したい」といえば申請できますので、臆せずに申請をしてください。

【参照:厚生労働省 要介護認定

3-2-2. 高額介護サービス費の支給制度

高額介護サービス費支給制度とは、グループホームを利用していて、1か月間に支払った介護サービスの自己負担額(13割)の上限金額を超える時には、その超えた分が払い戻される制度です。

支給対象は介護サービスのみですので、グループホームの家賃や食費(その他 福祉用具の購入)は該当しません。

高額介護サービス費支給制度に該当する場合は、利用した施設から申請書が来ます。一旦手続きをすると、2回目からは条件が該当すれば自動で払戻金が口座振り込みされます。以下の表は、高額介護サービス費の上限額の一覧表です。

高額介護サービス費の上限額一覧

 

本人か世帯全員が住民税を払っている

① 3割負担の人

世帯 負担上限額 44,400

② ①③④⑤以外の人

世帯 負担上限額 44,400

 

 

世帯全員が住民税の課税をしていない

③ ④⑤以外の人

世帯 負担上限額 24,600

④ 年金年収80万円以下の人

世帯 負担上限額 24,600

個人 負担上限額 15,000

⑤ 生活保護者

個人 負担上限額 15,000

【参照:高額介護サービス費の基準

1人分で上限額に達しなくても、世帯で介護費用の上限額を超えれば申請可能です。例えば、上記表のに属している世帯(青色)の場合、要介護者である父母2人分の介護費を合算し、その金額が、世帯負担上限額を超えれば、差額が戻ってきます。

例)に属している世帯 要介護者 父母2人 

  • 父の介護費 45,000
  • 母の介護費 15,000

世帯の介護費用合算(45,000+15,000円=60,000円)-世帯の負担上限額44,400円=15,600

この例の場合は、15,600円が高額介護サービス費として払い戻されます。

3-2-3. 自治体助成金

要介護者が住んでいる自治体が出している助成金が使えます。自治体の助成金は、国が「家族介護支援特別事業」として定めたものを、各自治体の判断で行っている制度ですので、地域の実情にあった支援が受けられます。

さまざまな支援策があり、適宜、自治体で必要なものに更新されています。要介護者の住む自治体ホームページでのお知らせか、お近くの地域包括支援センターに広報資料などが揃っていますので、探してみましょう。

または自治体の福祉課などに定期的に確認をし、該当する助成金があれば賢く利用していきましょう。以下は、自治体助成金の一例です。

  • 家族の元気回復のための助成金

・目的:

 介護をしている家族を一時的に、介護から解放してリフレッシュさせるための助成金。費用は宿泊・日 帰り旅行、施設見学などに利用できる。 

・助成金額:

 年間125,000円上限

【参照:あわら市 元気回復事業

  • 介護用品にかかる費用の助成

・目的:

 要介護4又は5に相当する在宅の高齢者の介護をしている家庭に、介護用品(紙おむつ、尿取りパット、 使い捨て手袋、清拭剤、ドライシャンプーなど)を支給

・助成金額:

 年間1人当たり75,000

【参照:東京都杉並区公式ホームページ 介護用品の支給

  • 排徊高齢者位置情報検索サービス

・目的:

 痴呆性高齢者が徘徊した場合に、早期に発見し、事故の防止を図り、家族を安心させるための整備

・助成金額:

 機器リース代金の実費負担

【参照:東京都江戸川区 熟年者徘徊検索サービス

  • 家族介護者ヘルパー受講支援事業

・目的:

 家族の介護をしている、または介護をしていた方がその経験を活かし、ホームヘルパーとして社会で活 躍するための支援

・助成金額:

 訪問介護員研修2級・3級課程の受講料の一部負担 上限30,000

【参照:海津市家族介護者ヘルパー受講支援事業実施要綱 

3-2-4. 確定申告による医療費控除

医療費控除は、その年に支払った医療費が多額だった場合に、税負担を軽くできる制度です。医療費合計が10万円を超えた部分から、上限200万円までが対象になります。

生計を1つにする配偶者や家族が対象になります。グループホームに入居している場合は、以下の「別居」に該当し、さらに、親の生活のために必要な費用を少しでも負担していれば合算ができます。

  • 同居の場合:合算できる
  • 別居の場合:仕送りなど、なんらかの扶養をしていれば合算できる

具体的に、医療費に含まれるものは以下になります。

  • 親の入院や施設への付き添いで利用するためのタクシー代を含む交通費
  • 介護保険適用のサービスのうち、医療系のサービス(訪問看護・訪問診療・リハビリ)
  • 上記医療系サービスと一緒に使ったホームヘルパーやデイサービス費用
  • ショートステイなどで利用した特別養護老人ホーム・介護老人保健施設利用料の1/2
  • 薬局で購入した治療目的の一般薬
  • 歯科医師による診療と治療費
  • 国家資格保持者の行うあんま・マッサージ・鍼灸・柔道整復師の施術代金

医療控除を受けるためには確定申告が必要で、前年度1/112/31までに支払った医療費が対象です。確定申告の時効は5年あるので、申告を忘れていた人でも5年以内であれば還付されます。

医療費還付の申告には、加入している健保組合から送付されてくる「医療費のお知らせ」か、自分で作成した医療費明細の添付が必要です。

【参照:確定申告 医療費

3-2-5. 介護休業給付金・その他企業の助成金

家族の介護のために、今の仕事を一時的に「休業」し、まとまった休みを取る制度を「介護休業制度」といい、事業主に申請をすると取得できます。対象家族1人につき通算93日まで、最高3回までに分割して利用できます。

事業主にはこの休業期間中に従業員に賃金を支払う法的義務がないので無給となりますが、この休業期間中の賃金の67%までは、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。給付対象者は以下の通りです。

  • 65歳未満である
  • 雇用保険の一般被保険者(週20時間以上働く人)
  • 介護休業開始前2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある
  • 介護対象:父母・子・配偶者・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫

介護休業給付金は、介護従業制度を利用してから支給されます。13回までの利用回ごとに、事業主からハローワークに受給資格確認申請と支給申請をし、支給決定がされると1週間くらいで指定口座に振込まれます。

また、自分が所属している企業の福利厚生にも注意をしましょう。福利厚生事業の一環として介護支援メニューがある企業も多く、特に昨今は、介護離職を食い止めるため、各企業は介護対策メニューを増やしている傾向にあります。例えば、年間数万円までの現金補助や、ホームヘルパー利用補助などがあるケースなどがありますので、遠慮なく使いましょう。

【参照:介護休業給付金

【参照:介護休業制度

3-2-6. 介護交通費の割引

グループホームにいる親の様子を見に行くための交通費も、回数を重ねるとかなりの負担となります。これには、割引制度などを上手に組み合わせて利用します。

<航空会社>

航空会社各社で親族介護のための交通費割引を設定しています。基本的に、利用制限期間がなく、予約変更もできます。割引率は30%程度なので早期割りよりは値引き率が下がりますが、急な帰省で使えます。

・日本航空「介護帰省割引

JALマイレージバンクに加入後、「介護帰省割引のお客さま情報登録」で利用できます。

・ 全日空「介護割引

ANAマイレージクラブカードに加入後、「介護割引情報登録」で利用できます。

・スターフライヤー「介護割引

「介護割引パス」の発行をしてから利用可能です。

・ソラシドエア「介護特別割引

「介護割引パス」の発行をしてから利用可能です。

JR・電鉄系>

JR

JRに介護割引制度はありませんが、JRが発行している高齢者向け会員制度を上手に利用して割引率を上げましょう。「ジパング倶楽部」は男性65・女性60歳で入会可能で年会費は3,840円です。親の名義で会員になり、会員特典として使える

JR線きっぷが年間20回まで最大30%割引

JR西日本線きっぷがネット購入で何回でも30%割引

を利用します。金券ショップのほうが割引率は大きいですが、利用日にいつもチケットがあるわけではないので、このような特典利用と併用しましょう。

・電鉄系

一般の電鉄系には介護割引などの特典はありませんので、電鉄系ごとに発行しているクレジットカードによる割引またはポイント加算を使う、またはその電鉄系の株を購入し、株主優待割引を利用する方法があります。

3-2-7. 親の生活保護申請

親の介護は子世代がすることが多いのですが、子の親に対する扶養義務は、親が未成年の子供を養育して監護するタイプの扶養とは違い、自分たちの生活を維持したうえで、親の面倒を見られるだけの余裕がある場合のみ発生する義務です。

親の介護や手助けが必要でも、親の年金がわずかで、まとまった貯金や資産もなく、自分たちの生活もカツカツ。グループホームの利用料金が負担だが、家に引き取って在宅介護をするのはとても無理という場合もあります。

また、遠距離介護で仕送りを頑張っていても、今のご時世、来年・再来年も継続できるとは限りません。親の介護をする子世代は、数年内に自分たちの定年が控えている年代でもあり、金銭的な負担の無理は禁物です。無理をすれば、将来、自分たちの老後生活に影を落とすことになります。

親の介護で自分たちが経済的にピンチに立たされる前に対策しましょう。今の状態を継続するよりも、まずは親の生活保護を申請することで、負担を軽減します。

生活保護とは「その人の生活の困窮度合い応じた保護」をするためのものですので、今の親の状態で必要な保護を必要な分、必要な期間だけサポートをしてもらいましょう。

生活保護で保証されるのは、親の生活費だけではなく、介護・医療の分野でも負担が軽減されます。

  • 生活費:食費・光熱費・介護保険料
  • 住宅:家賃の全額負担・住宅補修費の一部負担
  • 医療費:医療券の発行による医療費の全額免除
  • 介護費用:要支援要介護認定がある生活保護者への扶助あり。本人負担なし

相談と申請は、親の暮らす自治体の福祉事務所で、本人か家族が行います。相談窓口では「もっと援助を頑張れませんか?」などの厳しいことを聞かれますが、これ以上の負担は自分たちの生活に影響が出るから相談に来ていることを丁寧に伝え、親の生活保護の申請をしてください。

【参照:生活保護

【参照:生活保護法改正法の概要


まとめ

いかがでしたでしょうか。グループホームに関して総合的な理解が深まるように、以下のようにまとめました。

  1.  グループホームとは 
  2. グループホーム入居前にしておくべき5つの確認事項
  3. グループホームの基本費用以外で発生するお金と使える助成金

グループホームがいかに認知症の家族に対して適切であるかがご理解いただけ、地域のグループホームの中でも家族にとってより安全で安心なグループの選び方、介護にかかる費用を軽くする方法などが理解できたと思います。本記事を参考に、家族のために最適最善の選択ができることを応援しています。

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