
「自宅で家族の介護をしているが、負担が大きくあまり外出にも連れていけない。デイサービスを利用すれば改善できるの?」
「そもそもデイサービスとはどんな所?」
自宅で家族の介護をしている方が、デイサービスをはじめとする介護サポートのサービスを利用しようと思ったとき、このような疑問を持つ場合も多いのではないでしょうか。
デイサービスとは、一言で言うと「日帰りで事業所へ通うタイプの介護サービス」のことです。
デイサービスの基本情報 | |
どんなサービスが受けられるの? |
|
費用はいくら? | 1回あたり1,000~2,000円程度 |
どんな人が利用できるの? | 要介護1~5の認定を受けた人 ※要支援1・2の人は利用できない |
どんな職員がいるの? |
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デイサービスを利用することで、孤独になりやすい高齢者の生活の質を上げる・介護をする家族の負担軽減といったメリットがある一方で、条件を満たしていないと利用できない・利用者が施設になじめないといったケースもあるため、全ての人にとってベストな選択とは限りません。
介護されるご家族とあなた自身が心穏やかに暮らしていくためには、デイサービスがどのようなものかを知り、利用するか否かをじっくり検討することが重要です。
本記事では、デイサービスの利用を検討している方が知っておくべき基礎知識を完全解説。
介護する方・される方どちらにとっても最良の選択ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.デイサービスとは何か
まずは、デイサービスがいったいどのようなものなのか、わかりやすく解説していきます。
- デイサービスとは「日帰りの介護サービス」
- デイサービスでの1日の流れ
- 他の介護サービスとの違い
順番に詳しく見ていきましょう。
1-1.デイサービスとは「日帰りの介護サービス」
デイサービスの正式名称は「通所介護」と言い、日帰りで事業所へ通うタイプの介護サービスのことを指します。
【デイサービスの目的】
起き上がる・歩く・食事するといった日常生活に必要な心身の機能を維持・向上させる
職員や他の利用者との交流を通して、家の中で一人きりになりがちな要介護者の孤立感を解消する
日中は施設・朝晩は自宅で介護をすることにより、家族の介護負担を軽減する
つまりデイサービスとは、要介護者とその家族の両方が心身ともに健康的な生活を送れることを目的とした施設のことです。
1-2.デイサービスでの1日の流れ
デイサービスでは、次のような流れで1日を過ごすのが一般的です。
上の図のように、
- 朝自宅まで車で迎えに来てもらう
※要介護者が家に一人でいられるようなら家族の立ち会いは不要 - 施設に着いたら体調のチェック
- 入浴・機能訓練・食事・レクリエーション
- その日一日で起こったことを職員が連絡帳に記入
- 自宅まで送迎
と言った流れが基本です。
利用できる時間は「午前中~夕方にかけての7~8時間」というものが多いですが、施設や利用者の希望によって異なり、半日だけの利用ができるデイサービスなどもあります。
1-3.他の介護サービスとの違い
日本にはデイサービス以外にも次のような介護サービスがあり、それぞれ目的やサービスの内容が違います。
- 訪問介護
- デイケア
これらの介護サービスと、デイサービスの特徴を比較してみましょう。
サービス名 | 対象者 | 特徴 |
デイサービス | 要介護1~5 |
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訪問介護 | 要介護1~5 |
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デイケア | 要支援1~2 要介護1~5 |
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レクリエーションなどを通した他者とのコミュニケーションの機会が多いというのが、他の介護サービスにはない、デイサービスの大きな特徴です。
2.デイサービスで受けられるサービスの内容
デイサービスが提供している介護サポートのサービスには、次のようなものがあります。
- 日常生活の介護
- 機能訓練
- レクリエーション
- その他一部のデイサービスで受けられるサービス
具体的に何を行うのか、一つずつ解説していきます。
2-1.日常生活の介護
デイサービスでは、以下のような日常生活の介護をサービスとして提供しています。
食事 |
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入浴 |
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排せつ |
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利用者一人ひとり身体の状態に合わせて必要な介助をしてもらえるので、自力での食事や入浴が難しい方でも安心して利用できます。
2-2.機能訓練
高齢者の身体や脳が衰えないようにする「機能訓練」を行ってくれるのも、デイサービスのメニューのひとつです。
【機能訓練とは?】
高齢者の心身の機能の減退防止を目的とした訓練のこと
【リハビリとは何が違うの?】
リハビリが医師の指導のもと行う専門的な医療ケアであるのに対し
機能訓練では体操や脳トレなどの手軽なメニューを通して心身の機能の減退を防止する
利用者一人ひとりの状態に合わせて、機能訓練指導員が考案したメニューを行います。
機能訓練メニューの一例 | |
メニュー名 | 内容 |
歩行訓練 | 平行棒を使った歩行練習・散歩などを行い、歩行のふらつき防止や歩行できる距離を伸ばす |
ストレッチ | 足関節などの可動域を広げ、浴槽をまたぐ等の日常生活でできる動作を増やす |
筋力増強訓練 | ペットボトルやバンドなどを使用した軽いトレーニングを行い、椅子から立ち上がる・ベッドから起き上がる等の日常動作に必要な筋力をアップさせる |
口腔体操 | 表情筋を動かして誤嚥を予防する |
マッサージ | 固まった筋肉をほぐす・血流改善・リラックスなど、利用者の状態に合わせたマッサージを行う |
脳トレ | 指先を動かす・クイズに答えるなどして認知症を予防する |
2-3.レクリエーション
日常生活を送るうえで必要な訓練や介護をするだけではなく、レクリエーション(娯楽)の時間があるというのも、デイサービスの大きな特徴です。
家の中にこもりがちな高齢者にとって、レクリエーションは日々の生活に刺激を与えてくれるため、デイサービスに通うのが楽しみになるといったケースも多いのです。
デイサービスで行われるレクリエーションには、次のようなものがあります。
【レクリエーションメニューの一例】
- リズム体操
- クイズ
- 折り紙
- お菓子作り
- 園芸
- 書道
- 陶芸
- カラオケ など
ピアノが弾ける職員がいるデイサービスでは音楽系のメニューが増えるなど、どんなレクリエーションができるかは事業所によって大きく異なります。
2-4.その他一部のデイサービスで受けられるサービス
これまでご紹介してきたもの以外にも、施設の特色によっては次のようなサービスが受けられる場合があります。
一部のデイサービスで受けられるサービス | |
サービス | 内容 |
機能訓練 のみの利用 |
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施設での宿泊 |
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認知症の 専門的ケア |
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「認知症が進んできて、通常のデイサービスでは対応しきれるか心配…」
「仕事が夜遅くなることが多く、いざというときは宿泊できる施設だと安心」
といったように、ご家庭の事情に合わせて必要なサービスを選択すれば、介護者の負担を大幅に軽減することができます。
3.デイサービスの利用にかかる費用
ここでは、デイサービスの利用にかかる費用について、以下の順に解説します。
- デイサービスの費用相場は1回当たり1,000~2,000円
- 1ヶ月の料金シミュレーション
順番に一つずつ説明していきます。
3-1.デイサービスの費用相場は1回あたり1,000~2,000円
デイサービスの利用にかかる費用は、施設によって異なりますが、相場は1回あたり1,000~2,000円程度です。
利用料金の内訳は、以下の通りです。
- 基本のサービス費用
- その他の雑費
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1-1.基本のサービス費用
日常生活の介護や機能訓練などのサービスにかかる費用です。
要介護度が上がるほど手厚いサポートが必要になるため、以下の表のように利用料金も上がります。
要介護度 | 利用料金目安 (1回あたり) |
要介護1 | 645円 |
要介護2 | 761円 |
要介護3 | 883円 |
要介護4 | 1,003円 |
要介護5 | 1,124円 |
「意外と安い」と感じるかもしれませんが、これはデイサービスの利用に介護保険が適用されるためです。
介護保険は原則65歳以上から適用され、基本的には1割負担ですが、利用者の所得が多いと2~3割負担になるケースもあります。
3-1-2.その他の雑費
基本のサービス費用には食費やおむつ代といった雑費が含まれていないため、これを別途支払う必要があります。
【雑費に含まれるものの一例】
- 食費(500円~1,000円程度)
- おむつ代(1枚100円程度)
- その他日常生活費(歯ブラシなど)
このような雑費は介護保険が適用されないため、100%利用者負担となります。
3-2.1ヶ月の料金シミュレーション
1回あたりの費用相場がわかったところで、実際に1ヶ月間デイサービスを利用した場合いくらかかるのか、次の例を参考にシミュレーションしてみましょう。
デイサービスの利用回数に決まりはありませんが、
- 要介護1~2:週3~4回
- 要介護3〜5:週4〜5回
の利用が一般的です。
4.デイサービスを利用できる人
続いては、デイサービスを利用できる人の条件についてお話しします。
- 市町村で要介護認定を受けている
- 医療行為が不要
- 自宅が事業所の送迎エリア範囲内
介護を必要とされているご家族がデイサービスの利用対象内であるか、一つずつ確認しながら読み進めていきましょう。
4-1.市町村で要介護認定を受けている
デイサービスの利用は、お住まいの市町村で要介護1~5の認定を受けた方が対象となります。
デイサービスの利用対象内 | デイサービスの利用対象外 |
要介護1~5 | 要支援1 要支援2 |
要支援1・2と認定された場合は、デイサービスの利用はできないため、注意が必要です。
ヘルパーが自宅まで来てくれるサービス「訪問介護」、リハビリに特化した介護サービスの「デイケア」であれば、要支援1・2の方でも利用することができます。
4-2.医療行為が不要
「施設にいる間に医療行為が必要ない」というのも、デイサービスを利用できる条件の一つです。
【医療行為に該当するものの一例】
- インスリン注射
- 摘便
- 床ずれの処置
- 痰吸入 など
上記のような行為は、医師や医師の指示を受けた看護師以外が行えない「医療行為」であるため、医師がいないデイサービスでは対応できません。
日常的に医療行為が必要な方は、医師が常駐している
- 介護療養型医療施設(医療環境が整った介護施設)
- 介護老人保健施設(リハビリや医療ケアが受けられる施設)
に入所するのが一般的です。
4-3.自宅が事業所の送迎エリア範囲内
利用したい事業所が自宅から離れた場所にある場合、「送迎可能なエリアから外れているため利用できない」といった可能性もあります。
送迎エリアの範囲は施設によって異なりますが、「車で片道10km程度、所要時間が30分程度」というものが一般的です。
自宅の周辺で良い事業所が見つからない場合は、訪問介護など他の選択肢も検討してみましょう。
5.デイサービスを利用するメリット
ここでは、デイサービスを利用することで得られるメリットについて解説します。
あなたやあなたのご家族にとって有益なものかどうか、チェックしていきましょう。
5-1.脳や体の機能の低下を防ぐ
年齢とともに低下していく脳や体の低下を防ぐというのは、デイサービスを利用する大きなメリットです。
体の機能 |
→日常生活に必要な動作ができなくなるのを防ぐ |
脳の機能 |
→認知症の予防に |
デイサービスに通い続けて頭と体を動かすという行為そのものが、要介護度の進行を防ぐことに繋がるのです。
5-2.栄養バランスの良い食事がとれる
家庭ではなかなか用意するのが難しい、栄養バランスのとれた食事を提供してもらえるというのも、デイサービスの特長です。
デイサービスでは昼食とおやつが提供されるのが一般的ですが、施設によっては朝食や夕食が付けられる場所もあります。
【デイサービスの昼食メニュー一例】
- 焼き魚
- 野菜の煮物
- 酢の物
- 味噌汁
- ご飯
専門スタッフが調理した日替わりの食事を食べられることで、健康維持だけではなく食事の楽しさアップにも繋がります。
5-3.家族の介護負担が軽減する
デイサービスを利用している間、日中の家族の介護負担がなくなるというメリットです。
デイサービスのスタッフに日常の介護を代わりにやってもらえることで、同居家族の介護をする人が抱えてしまいがちな
- 仕事が忙しく食事や入浴といった介護に手が回らない
- 日中家を空けるのが心配
- 自分の時間が持てない
といった不安やストレスを軽減してくれます。
介護をされる方にとっても、「家族に負担をかけて申し訳ない」「もっと外出に連れて行ってほしい」といったストレスを感じにくくなり、家族間で良好な関係が保ちやすくなるのです。
6.デイサービスを利用するデメリット
続いて、デイサービスを利用するデメリットについてご紹介します。
良い面と悪い面の両方を見たうえで、利用するかどうかを判断しましょう。
6-1.医療的なケアができない
デイサービスには施設に医師が在籍していないため、医療行為が行えないというデメリットがあります。
【デイサービスでできない医療ケアの一例】
- 人工肛門の管理
- 注射
- 点滴
- 酸素供給機器の管理 など
デイサービス中に病院へ受診にいくことや、デイサービス後に病院へ送るといったことも緊急時以外は基本的にはできません。
そのため、経過観察や定期的な医療行為が必要な持病を持っている方はデイサービスを利用できないというのが現状です。
6-2.費用がかかる
デイサービスの利用は、介護保険が適用されるとはいえ、1回につき1,000円~2,000円程度の自己負担が必要です。
要介護度や通うペースによっては、利用料が高額になるケースもあるため、
- 施設を選ぶ前にあらかじめ無理のない予算を決めておく
- 自治体の制度を活用する
といった対策を取ることをおすすめします。
【介護費用が高額になった際に活用したい「高額介護サービス費」】
介護サービスに払った自己負担分の料金が一定の金額を超えた場合、超過分が自治体から払い戻される制度。
※世帯年収が約770万円未満なら、1ヶ月の上限額は4万4,400円
6-3.利用者が行きたがらないケースもある
介護をする家族にとっては負担軽減になるデイサービスも、要介護者の方が施設を気に入らず、通うのを拒むというケースがあります。
【要介護者がデイサービスを利用したがらない主な原因】
- 施設との相性が悪い
- 元々出歩くのが苦手
- 集団行動が苦手 など
こういった場合、施設の移動や訪問介護への切り替え、もしくは引き続き家族だけで介護を行う等の対応が必要になります。
ご家族にとってデイサービスが必ずしも「楽しみを見つけられる場所」になるとは限らない、ということを念頭に置いておきましょう。
7.デイサービス以外の介護サポート
デイサービスのメリットとデメリットを比較して、
「デイサービスのメリットがいまひとつピンとこない」
「もしかしたらデメリットの方が多いかもしれない」
と感じた場合は、他の介護サービスを検討してみるのも一つの方法です。
デイサービス以外の介護サービスには、次のようなものがあります。
- デイケア(通所リハビリテーション)
- 訪問介護
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
それぞれの特徴を比較してみましょう。
デイケア (通所リハビリテーション) | |
デイサービスとの違い |
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こんな人におすすめ |
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訪問介護 | |
デイサービスとの違い |
|
こんな人におすすめ |
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介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム) | |
デイサービスとの違い |
|
こんな人におすすめ |
|
介護する側・される側の両者が「我慢しない」介護を実現するためには、デイサービスにこだわらず、利用者本人の意思や家庭の事情に合わせた介護サービスを選ぶことが重要です。
8.デイサービスの利用に向いている人・向いていない人
デイサービスのメリット・デメリットや他の介護サービスと比較してもなお、通うかどうかが決められないという場合は、次のチェックシートを参考にしてみましょう。
要介護者側・家族側共に、チェック項目の半分以上が当てはまるようなら、デイサービスの利用をおすすめします。
9.デイサービスを利用するために必要な手続き
デイサービスを利用しようと決めた場合、実際に利用を開始するまでには、次のような手続きが必要です。
①介護認定を受ける
まずはお住いの地域の市区町村役場にて介護保険の申請を行い、要介護度の認定を受けます。
一般的に介護認定の通知が届くまでには1ヶ月程度の時間がかかるため、その後の施設探しなどにかかる時間も考えて、利用を開始したい2ヶ月ほど前から準備を進めておくのがおすすめです。
②ケアプランを作成する
介護支援の専門家であるケアマネジャーと相談して「ケアプラン」と呼ばれる介護サービスの計画書を作ります。まずは自宅周辺の「居宅介護支援事業所」を調べて、ケアマネジャーに訪問に来てもらいましょう。なお、相談や計画書の作成は無料でできます。
③デイサービスを選ぶ
料金やサービスを比較していくつか候補を絞り、デイサービスの見学に行きましょう。
要介護者本人と相談して、最も良いと思った施設と契約します。
急ぎでない場合は、全ての手続きを一気に行う必要はありません。
「まずは介護認定を受けて、詳しいことは専門家に相談」と認識しておくと良いでしょう。
10.毎日に楽しみが見つかるシニア向けSNS「らくらくコミュニティ」
デイサービスには、日常生活の介護以外にも「家庭以外のコミュニティを持つことで要介護者の孤独を解消する」という役割がありますが、家庭の外のコミュニティはインターネット上でも作ることができます。
会員数250万人以上のシニア向けのSNS「らくらくコミュニティ」なら、スマートフォン一つで共通の趣味を持つ人とやりとりする、自分の撮った写真を誰かに見てもらうといった交流ができます。
自宅にいながらさまざまな人と繋がることができるので、
「生活に新しい刺激を増やしたい」
「話し相手がいなくて寂しい」
といった思いを抱えている方にこそおすすめしたいSNSです。
「らくらくコミュニティ」の詳細はこちらをご覧ください。
11.まとめ
最後に、本記事でお話しした内容のまとめです。
デイサービスとは、日帰りで事業所へ通うタイプの介護サービスです。
- 入浴、排せつ、食事等日常の介護
- 機能訓練(体や脳のトレーニング)
- レクリエーション
といったサービスが受けられ、施設内での活動や職員や他の利用者との交流を通して、要介護者とその家族の心身の健康をサポートしてくれます。
デイサービスが利用できる人の条件は、次の通りです。
- 市町村で要介護認定(要介護1~5)を受けている
- 医療行為が不要
- 自宅が事業所の送迎エリア範囲内
条件に当てはまらない場合はデイサービスを利用したくてもできないため、注意が必要です。
デイサービスのメリットとデメリットは、以下の表の通り。
メリット |
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デメリット |
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メリットよりもデメリットが大きいと感じる場合は、「デイケア」や「訪問介護」といった他の介護サービスの利用を検討するのがおすすめです。
介護をする家族と、要介護者本人の意見を擦り合わせつつ、デイサービスを利用するかどうかを検討しましょう。
本記事の内容でデイサービスについての理解が深まり、あなたとあなたのご家族が心穏やかに生活できることを祈っています。