
高齢になると身体機能や認知機能の衰えにより、日常生活に何かと不便さを感じがちです。
特に、日常生活を営むために大切な買い物が負担になるケースが多くあります。
「足腰が痛むから買い物先までの道のりが苦痛」
「車がないから徒歩での買い物は大変」
このように、食料品や日用品などの買い出しが困難になることは、住んでいる地域に関係なく起こる問題です。
高齢者を中心にした「買い物弱者」と呼ばれる層が増加傾向にあり、社会問題として注目が集まっています。
今回は、高齢者の買い物弱者化が進む原因と、解決へ向け負担を減らすための方法について解説します。
目次
1. 高齢者の買い物弱者が増加中
高齢者を中心として増加している買い物弱者。
食料品の購入や飲食に対して不便さを感じている人のことです。
農林水産省の「食料品アクセス(買い物弱者・買い物難民等)問題ポータルサイト」によると、以下のような原因が挙げられています。
- 高齢化や単身世帯の増加により、一人で買い物に出かけるのが困難になっている
- 地域の小売店の廃業、商店街の衰退により、近くの買い物場所がなくなる
過疎地域だけでなく、都市部でも買い物弱者が増加傾向にあるようです。
農林水産省の定義によると、買い物弱者(食料品アクセス困難人口)はスーパーなどの店舗まで500m以上かつ自動車の利用が困難な65歳以上の高齢者を指しています。
また、買い物弱者は「買い物難民」や「買い物困難者」などと呼ばれることもあります。
農林水産政策研究所の調査によると、2015年の時点で全国に824万人の買い物弱者がいることがわかります。
出典:農林水産政策研究所 表1. 食料品アクセス困難人口(2015年)
2. 高齢者の買い物が困難になる5つの理由
高齢者が買い物弱者になる原因は、主に以下の5つの理由によるものです。
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高齢化による体力面の問題や社会を取り巻く情勢の変化など、原因は多岐にわたります。
2−1. 足腰が弱り移動が大変になる
高齢になることで足腰の筋力が衰え、長距離を徒歩で移動することができなくなり、買い物が困難になっている状況があります。
近隣のスーパーや商店街などから500m以上の距離がある場合、高齢者が毎日買い物に出かけるのは難しい現実があるのです。
公共交通機関が発達している地域であれば、バスや電車を利用できますが、そうでない場合は自力での買い物は困難といえるでしょう。
2−2. 近隣の店が減り、郊外の大型店舗が増えた
郊外を中心に大型店舗の出店が相次ぎ、昔ながらの商店街が衰退してしまったという理由です。
地方を中心にシャッター街となってしまった商店街は多くあります。
高齢者にとって身近な買い物の手段であった近隣の小規模店舗が減ったことで、手軽に買い物ができなくなっているのです。
郊外型のスーパーやショッピングモールは広大な駐車場を構えていますが、自動車のない高齢者の場合は買い物に出向くことができません。
2−3. 車や自転車を使えない
足腰が弱っている高齢者の場合、自転車を使った買い物は難しいといえます。
また、年齢を理由に運転免許を返納する高齢者が増えており、買い物用の足であった自動車を使えなくなっているケースもあります。
身体機能や認知機能が衰えている高齢者にとって、自動車の運転は事故につながるリスクがあるため、今後も高齢者ドライバーの数は減少していくでしょう。
先述の郊外型店舗の進出による近隣の商店の減少により、自動車がなくては買い物ができない状態に陥っているのです。
2−4. 重い荷物が持てず買い物の回数が増える
自転車や自動車が使えない場合、荷物を運ぶのが困難になります。
特にお米やペットボトル飲料などの重い荷物の場合、手で抱えて帰るのは難しいといえるでしょう。
そのため、一度の荷物の量を減らし、買い物の回数を増やすこともあります。
買い物先まで距離がある場合、高齢者にとっては日々の移動が大きな負担になってしまうのです。
2−5. 天候の悪い日は買い物に出られない
自動車や公共交通機関を使えない場合、買い物は天候に左右されがちです。
雨の日は傘を差しながら重い荷物を運ぶことになるため、体力的な負担が増します。
また、雨で足元が滑りやすくなるなど、怪我などのトラブルにつながりかねません。
雨季や積雪の多い時期などは満足に買い物に行けず、食料品や日用品が不足する事態が起こります。
3. 高齢者が買い物弱者になる4つの問題点
高齢者が買い物弱者になると、健康面や精神面での大きなデメリットがあります。
特に、以下の4つの問題点は高齢者の健やかな生活を妨げる大きな原因となるのです。
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3−1. 外出の機会が減り生きがいを失う
買い物のために外に出ることは、心身共にリフレッシュにつながります。
太陽の光を浴びることで脳内物質のセロトニンが分泌され、うつ病や認知症の予防に有効とされているからです。
買い物のついでに散歩をすることで、足腰を程よく鍛えることもできます。
景色を見たり人と話したりすることで、多くの刺激を受けられる貴重な瞬間といえるでしょう。
そのため、買い物に出かける頻度が減ると日常の変化が乏しくなり、生きがいを感じにくくなる恐れがあります。自宅に閉じこもりがちになることで運動不足になり、筋肉量の減少や食欲の低下を招き、介護が必要な状態になるリスクが高まるのです。
3−2. 移動中にトラブルに遭うリスク
買い物のために長距離を移動する場合、それだけ交通事故などのリスクが高まります。
加齢による身体能力や認知機能の低下により、道路を横断中に自動車や自転車の接近に気づけない場合があるためです。
また、道中の坂や段差につまずき、怪我をする危険性もあります。
買い物に必要な距離が増えるほど、何らかのトラブルに巻き込まれるリスクが増加するのです。
3−3. 栄養不足からの健康問題
買い物にいけないために食料品が手に入らず、栄養不足に陥る懸念があります。
インスタント食品ばかり食べるなど、食事の内容が偏ることで必要な栄養素が充分に摂れなくなるのです。
高齢者の栄養不足は、低栄養による筋肉量の低下により、身体の衰えを招きます。
免疫力が低下すれば、風邪や肺炎にかかるリスクを高めてしまうのです。
また、毎日のおいしい食事は生きがいにもつながるため、精神的な影響にもつながります。
3−4. 地域の治安や経済状況の悪化
高齢者の買い物弱者が増加した場合、地域の商店街などの売上減少が起こります。
高齢者が買い物にいけなくなり、そのせいで近隣の商店が閉鎖するなど、悪循環が起こってしまうのです。
これにより、地域の経済の低迷を招く恐れがあります。
その結果、人が出歩かない場所が多くなり、治安が悪化するなどの懸念もあるのです。
4. 高齢者の買い物の負担を減らすサービスを利用しよう
高齢者が買い物弱者化する問題は、国や地域も重要な課題として認識しています。
高齢者の買い物をサポートするための施策やサービスが、多く展開されるようになっているのです。
また、高齢者自身やその家族ができる、買い物の負担を減らす方法を実践してみましょう。
高齢社会となった日本において、先端のテクノロジーや新しいサービスの利用を検討してください。
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4−1. ネット通販の利用
インターネットの普及と物流の整備により、通信販売は身近な存在になりました。
パソコンやスマホから商品を注文するだけで、最短で即日荷物が届く利便性により、利用者が増加しています。
総務省統計局の調べによると、2020年には高齢者の世帯の3割がネット通販を利用していることがわかっています。高齢者であってもインターネット環境を整えることで、ネット通販の恩恵を受けている人は大勢いるのです。
ネット通販は家電製品や日用品だけでなく、店舗によっては生鮮食品などの食料品の注文も可能です。
重い飲料水などは、ネット通販を利用して購入するのが効果的といえます。
鮮度の高い食品を注文可能なネット通販は、下記がおすすすめです。
食料品の購入におすすめのネット通販一覧 |
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また、ネット通販で日用品や健康関連のものの購入を検討するなら、信頼性の高い下記の店舗を利用するとよいでしょう。
人気の高いネット通販一覧 |
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4−2. 食材・弁当の宅配サービスの利用
食材や弁当の宅配を行っているサービスの利用もおすすめです。
申し込むことで、毎週月曜日から金曜日まで直接自宅まで食材や弁当を届けてもらえます。
弁当は健康面に配慮し、新鮮な食材を利用した栄養バランスの考えられたものが届くため、安心して口にできます。
高齢者にとっては買い物のために遠出するリスクがなくなり、日々のメニューを考える負担が減らせるメリットがあります。
食材や弁当の宅配サービスを利用するためには、地域で対応してくれる事業者を見つけましょう。
インターネット環境があるなら、「地域名」+「弁当宅配サービス」などのキーワードで検索すれば、複数の事業者が見つかるはずです。
以下に、知名度の高い食材・弁当の宅配サービスを紹介します。
食材・弁当の宅配サービスの事業者一覧 |
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4−3. 出前サービスの利用
「飲食店の味が恋しいけれど、外食のために外出するのは大変……」
外食を躊躇している人には、出前サービスの利用がおすすめです。
新型コロナ感染症により、自宅にいながら飲食店の食事を出前する人が増えています。
出前館やウーバーイーツなどのサービスを利用すれば、人気のレストランやラーメン店、個人経営の居酒屋のメニューを自宅まで届けてもらえます。
スマホがあれば簡単に注文できる手軽さが魅力です。
出前の際に料理代と別に手数料が発生しますが、クーポンなどを使えばお得な利用が可能です。
出前サービスの利用方法について、ウーバーイーツを例に説明します。
- アプリを起動し、近隣の飲食店を探したりお気に入りの店を検索したりします。
- 店が決まったら、気に入った料理を選択します。
- 会計の準備が整うと、住所や配達予定時間、注文金額が表示されるため、確認して注文を完了させます。
- アプリ上で注文状態をチェックできます。店側が調理を始めるタイミング、配達担当者が届けに来る様子をマップ上で確認可能です。
一度住所や支払い方法を登録しておけば、次回からはすぐに注文ができるようになります。
どれくらいの時間に出前が届くかを逐一チェックできるため、計画を立てやすくなっています。
4−4. 買い物代行サービスの利用
民間企業が買い物代行サービスを行っている場合があります。
これは、数百円程の手数料と交通費を支払うことで、担当のスタッフが代わりに食料品や日用品を購入して来てくれるというものです。
買い物代行のサービスを利用すれば、悪天候の日や体調が優れない日でも買い物をお願いできる点が優れているといえます。
買い物代行は、介護事業者のほか、地域のタクシー会社やコンビニエンスストア、商店街などがサービスを提供している場合があります。
4−5. 家族やボランティアの助けを借りる
家族や親戚が近隣に住んでいる場合は、定期的に買い物のサポートをしてもらうとよいでしょう。
代わりに買い物をしてもらったり、自動車を出してもらって一緒に買い物に出かけたりすることができます。
家族にとっても数日に一度なら負担になりにくく、離れて暮らす高齢者の顔を見られるため安心できます。
また、地域のボランティアのサポートを受けることも検討できます。
例として、群馬県高崎市では、高齢者等買物代行事業として買い物代行のボランティアを利用できます。
ボランティアの補助を受けたい場合は、お住まいの地域の役所などに問い合わせてみるとよいでしょう。
4−6. 移動スーパーの利用
近隣に買い物ができる場所がない場合、移動スーパーの利用が効果的です。
移動スーパーとは、軽トラックなどに食料品を載せてエリア内を巡回し、自宅の近くで直接買い物ができる販売方式のことです。
移動スーパーとくし丸などが有名です。
移動スーパーでは生鮮食品やパン、お菓子、日用品などを取り揃えており、スーパーやコンビニと遜色のない買い物ができます。
特にトイレットペーパーなどかさばる日用品を手軽に買える点はメリットです。
数日に一度の巡回となるため、必要な食料品をまとめて購入するのに向いています。
4−7. ドローンによる宅配の活用
プロペラを回転させて自在に空を飛ぶドローン。
動画の空撮などに多く利用されていますが、物流の現場でも活躍の場を広げています。
楽天市場の楽天ドローンでは、ドローンを使った宅配ができるように計画を進めています。
スマホのアプリで注文するだけで、ドローンが荷物を運んでくれるというものです。
また、物流事業を手掛けるセイノーホールディングス株式会社でも、ドローンを使ったサプライチェーンの仕組みである「SkyHub」の開発に取り組んでいます。
出典:drone エアロネクスト、セイノーHD、新スマート物流事業化に向け業務提携
今後、ドローンによる宅配が普及すれば、過疎地にある家庭にもスムーズに食料品を届けることが可能になるでしょう。
5. 高齢者の買い物補助にはスマホがあると便利
買い物の宅配や代行サービスを利用するうえで、インターネットによる情報収集は欠かせません。
そのため、高齢者といえど最低限インターネットを使いこなせるようになっておくことが大切です。
パソコンやスマホ、タブレット端末を使いこなしている人は問題ありませんが、これから初めて触れようとしている人には、少し敷居が高いと感じるかもしれません。
しかし、手軽に操作できてどんな場所でもインターネットが使えるスマホを使いこなすことは、今後のライフスタイルの充実において重要な意味を持ちます。
5−1. おすすめは「らくらくスマートフォン F-42A」
スマホ初心者の高齢者には、FCNT株式会社が開発を手掛けた、NTTドコモの「らくらくスマートフォン F-42A」の利用がおすすめです。
「らくらくスマホ」の愛称で親しまれているシリーズの最新機種で、見やすい画面や押しやすいボタン構造など、初めてのスマホ操作でも戸惑いにくいように工夫されています。
5−2. よく電話する相手を登録できる
出典:らくらくスマートフォン F-42A 製品特長(より使いやすく)
らくらくスマートフォン F-42Aでは、家族や親戚など、よく電話をかける相手をホーム画面上に登録しておくことができます。
宅配サービスなどの連絡先を登録しておけば、追加で弁当を注文したいときやキャンセルが必要な時に素早く電話を掛けられて便利です。
また、よく使うアプリをまとめられるため、ネット通販などのアプリに迷うことなくアクセスできます。
5−3. 画面が大きくインターネットがしやすい
出典:らくらくスマートフォン F-42A 製品特長(基本の機能)
らくらくスマートフォン F-42Aの画面は大きくつくられており、文字や写真が見やすくできています。
また、使用頻度を考慮した機能配列や大きくて見やすいアイコン表示など、視力の低下した高齢者でも快適に使いやすいように工夫されています。
インターネットを活用して買い物を行う際にも、見やすい画面でストレスなく選ぶことができ、誤って注文してしまうリスクを低減できます。
まとめ
高齢者が買い物弱者になる流れは、少子高齢化社会の日本では今後も増加し続けます。
郊外型の店舗の進出による、地域の店舗の減少。
自動車や自転車が使えないことによる、買い物時の距離や荷物を持つ負担。
さまざまな要因によって、高齢者が買い物しづらい環境ができあがっているのです。
食料品や日用品の買い物が滞ると、日常生活に多くの支障をもたらします。
特に栄養不足は深刻で、不健康な生活を続けることで要介護状態になりかねません。
しかし、買い物が困難な状態は工夫によって改善することが可能です。
ネット通販や宅配サービス、買い物代行サービスを利用してみてください。
可能な限り自立した生活をおくり、適度な運動と外出を意識して、健やかな毎日を送れるように心がけることが大切といえます。
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