
防災への意識が高まっていく中、あなたは今「避難所生活」についてさまざまな疑問をもっているのではないでしょうか。
近年、度重なる豪雨被害が相次ぎ「すぐに避難!」「命を守る行動を」という認識が一層強まっていますよね。
しかし、災害を経験したことがない人にとっては、その先にある避難所生活の細かい事情を知らないことや、イメージが湧かないのは無理もありません。
「避難所ってどんな感じで過ごすんだろう?」「何日くらいいればいいのかな?」「何をどの程度持っていけばいいのかな…」
このように漠然とした疑問が湧いてきたり、防災の備えのネックになったりすることがあるかもしれません。
避難所生活では、公共施設の広いスペースを大人数で分け、設備を共有しながら過ごします。災害時は想定外の出来事の連続で、ストレス要因やトラブルのリスクなども多いです。そのため、避難所生活への事前知識を得て対策をしておくのがとても重要です。
ただ、食料や防災備品の充実度やプライベート空間の確保などは、災害の規模や各避難所の水準によってまちまち。現在発生リスクが高まっている南海トラフ巨大地震では、国民の半分以上の人が被災するといわれています。
国が試算する被害想定では、全国の避難者は最大で950万人にものぼると予想されており、地域によっては避難所に人が殺到することも考えられるでしょう。
参考:朝日新聞デジタル 南海トラフ地震の被害想定のデータを元に作成
地震に限らず、豪雨や台風などの被害も相次いで発生しています。災害という恐怖や不安のなか、不特定多数の人が集まる避難所ではどのような生活が送られるのか、どのような問題が起こりやすいのかを事前に知っておくことがとても大切です。
最近では災害時の体験談が数多く寄せられ、避難所生活のリアルな現状や問題点が鮮明に浮かび上がってきています。過去の教訓からしっかりと学んでおくことで、今後必要な対策や事前の心構えができるはずです。
そこでこの記事では、次のことを詳しくまとめています。
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通して読んでいただくことで、避難所生活の全体像や「これだけは事前に把握しておくべき」というポイントがわかるようになります。もしものときも、できる限りストレスを減らし、心身の健康を保つためにも、ぜひ当記事を参考に対策をしてみてください。
目次
1.避難所生活とは
避難所生活とは、災害発生時に自宅を離れて自治体の公共施設へ一時的に滞在すること。地震による家屋の倒壊、豪雨による浸水被害などで自宅に住めなくなった人が集まります。また、自宅にいることで命の危険が生じる場合に、身の安全を確保するために避難所に宿泊する場合もあります。
災害発生後は、地域の学校体育館や公民館など、各自治体で決められた指定避難所が開設されます。広いスペースを大人数で共有し、現状では男女混合で過ごすのが一般的です。
災害発生から3~4日間は支援物資なども届かないため、個人で用意した備蓄品、自治体で保管している非常食や飲料水などで乗り切ります。地域住民が協力して食料や水、生活消耗品の買い出しに行くことも。電気・ガス・水道などのライフラインが停止している場合が多いので、空調や照明、トイレなどは通常通り使用できません。
食料やライフラインが安定して供給されるようになるまでは、ひとまず「今あるもの」「各自でできること」でなんとか乗り切っていく生活になると考えておきましょう。
最低限の支援は受けられますが、雨風をしのぐ建物が提供されているに過ぎず、そこで行われる生活機能は被災者自身が運営していきます。長期化する場合はとくに、周囲の人と協力する必要があることを念頭に置いておきましょう。
2.災害の規模や個人の状況によって変わる避難所生活
災害に備えている段階では「どのくらいの期間の避難所生活を想定して準備すればいいの?」という疑問を抱くこともあるでしょう。災害の規模や状況によって、避難所に滞在する期間や困難の度合いが変わります。
避難所生活の期間は、自宅で安全に生活できるようになるまで、もしくは安全に生活できる居住先が確保できるまでと考えておきましょう。
避難所生活が短期間で済むケース |
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避難所生活が長期化するケース |
これらの要因で、自宅が大きく損壊、流出、全焼などしている状態 |
自宅建物が大きな被害を受けていなければ、状況が落ち着き次第自宅に戻れるので1~2泊程度で済むことも。比較的小規模な災害の場合はライフラインの復旧も早いため、1週間以内で自宅に戻れる可能性もあります。
一方、家屋倒壊や浸水などの被害がある場合、自宅が生活できる状態まで復旧するか、親戚や知り合いの家に移り住むなど、住居先の目途が立つまでは避難所で生活しなければなりません。そのため、家屋の倒壊が多発するレベルの大規模災害では、避難所生活が長期化する可能性が高まります。
阪神淡路大震災では3ヶ月以上、東日本大震災の場合では6ヶ月以上もの長い間、避難所生活を続けざるを得ませんでした。東日本大震災ですべての避難所が閉鎖されたのは、災害発生から7ヶ月後。新潟中越地震の場合でも、避難所の完全閉鎖は災害発生から2ヶ月後となりました。
ただ、災害救助法では避難所の開設期間を7日間と定めており、この基準に則って各自治体が避難所を運営しています。長期化を想定して避難所運営を計画していないことも多いため、避難している人の困りごとやニーズに応えきれないことはめずらしくありません。
避難所に住民が殺到し、個人のスペースや備品、食料などが不足する事態も想定しておくことが大切です。できるだけ被害の大きい人を優先するために、災害そのものが落ち着いたらできるだけ避難所を離れるよう求められることもあります。そのため、有事の際に避難所以外で生活する方法も考えておくとよいです。
在宅避難 | 安全に住める状況であれば、自宅で避難生活をする ※ライフラインの停止や食料不足などの問題もあるので、地域での助け合いや支援が必要なことも |
縁故避難 | 家族や親せき、知人宅などに滞在する |
車中避難 | 車の中で生活する。短期間、もしくはミニバンやハイエースなどの大きな車種に限る ※長時間同じ姿勢でいるとエコノミークラス症候群になる恐れがあるので注意 |
3.長期の避難所生活の実態は深刻
避難所生活が長期化した場合、暮らしの実態はとても深刻です。テレビのニュースで、避難所の様子を伝える映像を見たことのある方は多いでしょう。
たとえば、段ボールで間仕切りされた居住空間や、ボランティア団体による炊き出し風景など。ニュースでも慣れない避難所生活に苦しむ人の声を報道していますが、本当の実態は想像以上に過酷で、報道されない危険や悲惨な状況が多くあります。
電気ガス水道が止まっていることや、見知らぬ人と同じ空間で過ごすストレス、体育館の冷たい床に横たわるつらさなどは、経験のない方にも容易に想像できるでしょう。
加えて、支援物資がすぐに届かないことや、冷たいおにぎりやパンなどが何日も続くなど、実際に経験しないとわからないストレス要因が無数にあります。
また、水の流せないトイレには不特定多数の人の汚物で溢れかえり、屋外で用を足す人も。女性は、安心して着替えたり眠ったりすることもできず、常に人目や危険を気にすることで過剰にストレスを抱えます。
乳児連れから障害、アレルギーのある人、介護の必要な高齢者まで、多様な人が同じ避難所で生活するため、個々のニーズが満たされない過酷さがあるのです。
災害の恐怖やショック、今後の生活の不安などで精神状態が不安定な中、このような過酷な環境で過ごさなければなりません。環境への不満やストレスから、犯罪や病気などの二次的なリスクも高くなり、被災者を狙った犯罪も起こります。
さらに、今後発生が予想されている首都直下型地震では、想定避難者数が最大720万人、南海トラフ巨大地震では最大950万人にものぼるという想定にも、目を向けなければなりません。
参考:総務省「首都直下型」及び「南海トラフ地震」の被害想定のデータをもとに作成
相当な規模の地震が予想されるため、避難所へ人が殺到する可能性が高く、その場合避難所生活の困難さも強まるでしょう。
しかし、実際の避難所生活の様子や起こり得る問題を想定し、準備や心構えをしておくことで避難所生活の困難さは軽減することができます。過去の事例や実際に被災した人たちの声からしっかりと学び、事前対策に役立てていくことが大切です。
4.避難所生活で困ることランキング
想定外の事態に備えるには、過去に避難所生活を経験した人が実際に困ったことを参考に対策していくとよいでしょう。
避難所生活の初期では、防災グッズや備蓄品など、その場にあるものを、各自が工夫しながらなんとか乗り切ります。避難所生活の初期の困りごととして、次のような事柄があげられています。
参考:平成28年熊本地震 「避難生活におけるトイレに関するアンケート」結果報告のデータをもとに作成
睡眠やトイレ、食事など生理的な問題に関わる困りごとが上位を占めていることがわかるでしょう。
ここからは、それぞれどんな点に困ったのか、実際の声をまとめました。リアルな体験談をベースに、避難所生活をイメージしながら必要な備えを考えてみてください。
4‐1.第1位 眠れる環境
避難所生活では、食料不足やライフラインの不便といった問題が取り沙汰されがちですが、もっとも困ったと感じた人が多かったのは睡眠環境の問題でした。
非常時の不安や恐怖、そして普段と違う環境によって神経が過敏になっているのも大きな要因です。加えて、人の話し声や物音など、常に他人の気配があることによって安心できなかったり、床が硬くてうまく寝付けなかったりすることも多いです。疲れているのに眠れない日が続くことで、体力の消耗が激しくなったり、精神的不安が強まることもあります。
4-2.第2位 トイレ
トイレは避難所の設備面でもっとも深刻な問題になっています。断水中は水を流せないため、通常のトイレの設備が使用できません。仮設トイレが設置されるまでは、被災者独自に簡易トイレを作ったり、野外で用を足したりすることも。
しかし、その環境はかなり劣悪です。トイレの環境が悪いせいでがまんすることが増え、体調面に影響を与えたり、不衛生な環境が原因で感染症が発生したりするケースもあります。
4‐3.第3位 食事
食事も避難所生活の困りごとの上位になっています。避難所生活の初期は、支援物資が十分に行きわたることはまずないと思っておいたほうがよいでしょう。
支援物資が届くようになっても、支給される食事は、保存がきくおにぎりやパン、お弁当、カップラーメンなど炭水化物やレトルトがメイン。栄養が偏ることや、暖かいものを食べられないことで肉体的にも精神的にも不調を感じやすくなります。提供される食事は、避難所ごとに質のバラつきや格差が大きいです。
4‐4.第4位 プライバシー
プライバシーは目に見えにくい要素ですが、避難所生活の大きな問題点です。災害の状況が落ち着くまでは、個人スペースを区切ることさえできないこともあります。
簡易的な仕切りを備えている避難所もありますが、場所によっては使えるものがなく災害発生から1週間経ってようやく仕切りが備え付けられたケースも。避難所では、個人の空間、休める場所、人目に触れない場所を作ることが非常に難しいです。
4‐5.第5位 飲み物
避難所では、飲み物の調達に困るケースも多いです。飲み水は備蓄用のものしかないので、必要な数が行き渡らないこともあります。
川やプールの水などは生活用水には使用できても、飲料水や乳児のミルクには使用できません。
夏の暑い季節に災害が発生した場合、水分補給にはかなり困ることが予想されます。また、口にするものが水しかない状況は普段経験のないことです。甘いジュースやコーヒー、ホッとできるお茶などが一切ないのもストレスになります。
4‐6.第6位 寒さ
過去の災害では「寒さが厳しかった」と答えた人も多かったです。避難所になる体育館は、天井が高く面積も広いため冷え込みます。毛布やカイロでは到底防げない気温になることも。
とくに東日本大震災では、雪の降る寒い東北地方での被害だったため多くの人が寒さに苦しみました。春先の4月に起こった熊本地震でも、朝晩の冷え込みが厳しく大変だったという声が多く寄せられています。10度以下になると命の危険もあるため、冬の寒さ対策は重要なポイントです。
5.避難所生活で起こり得るトラブルやリスク
避難所では、困難な環境、災害によるストレスによって特異なトラブルや犯罪など、二次的な問題も発生します。とくに避難所生活が長期化すると、問題の質が変わったり、深刻化する事柄が出てくる可能性もあるのです。
ここからは、避難所で起こりやすい問題について、実際の事例をもとにお伝えしていきます。避難所生活で多発するトラブルには、次のようなものがあります。
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テレビでは報道されない部分にも触れていますので、よりリアルな実態を知ることができると思います。それでは、各問題をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
5‐1.衛生面の問題
避難所では衛生環境が悪くなります。生活用水が足りないので、手や顔を洗うことや歯磨き、風呂など、体の清潔さを保つための習慣が疎かになりやすいです。
また、不特定多数の人が同じ空間にいることによって感染症のリスクも高まります。過去の災害でも、衛生環境の悪さから集団ウイルス感染がたくさん起こりました。居住スペースやトイレなどの施設の掃除が行き届かないのも、避難所生活の問題点になっています。
東日本大震災の事例 |
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熊本地震の事例 |
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5‐2.気温や室温調整の問題
避難所では、気温や室温の調整が難しくなります。冬場の冷え込み、夏場の猛暑、どちらも体調を崩すおそれが高くなるでしょう。
夏場に空調設備が使えた場合でも、個人のプライバシーを守る段ボールの仕切りや簡易テントなどがあると、風通しが悪く温度調整ができないこともあります。
冬季の場合は低体温症、夏場は熱中症リスクが高まるため、季節に応じて寒さや暑さをしのげる方法を考えておくのが重要です。
東日本大震災の事例 |
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新潟中越地震の事例 |
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西日本豪雨の事例 |
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5‐3.栄養失調
保存食や支援物資による食べ物は栄養のバランスが偏るため、栄養失調のリスクがあります。災害備蓄品や支援物資として支給される食べ物は、炭水化物がメインで味の濃いレトルトも多くなります。過去の災害時には、栄養不足が原因でさまざまな体調不良を訴えるケースがありました。
栄養のバランスだけでなく、1日に必要なカロリーを摂取できないことも。栄養失調に陥ると免疫が低下し、感染症やその他の病気にかかる危険性も高くなります。
東日本大震災の事例 |
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5‐4.犯罪の多発
災害時には犯罪が増加し、治安が悪くなるのは多くの方がご存じかもしれません。避難所以外でも、空き巣や強盗、自動販売機荒らしなどの問題が増えますが、避難所の中でも犯罪は起こります。
とくに避難所では、荷物の管理がしにくいため盗難に注意してください。金目のものだけでなく、生活に必要な日用品や食料などが盗まれることも。また極度のストレスから、ささいなことで暴力行為に走る人が増え、毛布や支援物資の奪い合い、家庭内暴力など警察沙汰になることもあります。
東日本大震災の事例 |
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鬼怒川豪雨の事例 |
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5-5.セクハラや性被害
災害時や避難所生活の問題のなかでもとくに重視されるようになったのは、女性へのセクハラや性被害です。性被害は女性が声を挙げにくく、被害を訴えてもなかったことにされるケースが多かったためこれまで浮き彫りになりにくかったのですが、近年では災害時の性犯罪への意識や対策に注目が集まるようになりました。
被災者同士がストレスで追い詰められて発生する事例もあります。加えて、ボランティアとして来た者が加害者であるケースが多いことにも注意しなければなりません。
また、若い女性だけでなく、60代の女性や子どもへの被害もあります。男性や男児が性被害に遭うことも少なからずありますし、被害に遭いやすい人を協力して守ることも必要です。そのため、災害時の性犯罪はすべての人が意識すべき問題だと考えておくべきでしょう。
東日本大震災の事例 |
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熊本地震の事例 |
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5-6.災害関連死
災害関連死は、災害そのものの影響ではなく、二次的な問題によって命を落としてしまうことをいいます。災害から逃れ命を取り留めたものの、避難中や避難所におけるさまざまな要因で死亡してしまうケースがあるのです。
災害関連死が発生する要因
- 低体温症や熱中症
- 感染症
- エコノミークラス症候群
- 過度なストレス
- 水分や栄養不足による衰弱
- 持病の悪化
- 疲労やストレスによる交通事故
- 復旧作業による過労死
小さな乳幼児や高齢者、持病や障害などを持つ人はとくに災害関連死のリスクが高くなります。健康な成人であっても、大規模災害などの過酷な状況では起こり得る出来事だと考え、対策を考えていきましょう。
新潟中越地震の事例 |
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東日本大震災の事例 |
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災害時に起こり得るトラブルや、考えられるリスクは本当にたくさんあります。深刻な状態に陥るケースもあり、強い不安を感じた方もいるかもしれません。
しかし、実際にこのような事例があること、起こり得る問題を知識として備えておくことがトラブルやリスクの回避につながります。次章では、実際にどのように準備や対策をしておけばよいか、具体的に確認していきましょう。
6.避難所生活のためにやっておきたい7つの備え
避難所生活での快適さや健康を保つことや、身の安全を確保するには、防災用品や事前知識を備えておくことが重要になります。
避難所生活での困りごとを減らすためにできる対策は、大きく7つです。
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上記の点を、必ずおさえておくと安心です。各項目ごとに知っておくべき情報や細かいポイントがありますので、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
6‐1.非常持ち出し袋の準備
避難所に行くときに持参する、非常持ち出し袋の準備をしっかりしておきましょう。緊急時は荷物をまとめている時間はないので、最低限必要なものやあると助かるグッズなどをリュックサックやバックパックなどに入れ、ひとまとめにしておきます。
避難所に持っていく物は、それぞれの事情や状況によって異なりますので、以下のリストを参考にしつつオリジナルの非常持ち出しリストを考えてみるとよいでしょう。
| 必要なもの |
基本 | 飲料水・非常食(最低3日分)・着替え・携帯トイレ・トイレットペーパー・歯ブラシ・石鹸・バスタオル・フェイスタオル・汗拭きシート・マスク・除菌用アルコール・ドライシャンプー・ウエットティッシュ・体温計・救急セット(ばんそうこうや脱脂綿、包帯など) |
給水袋・缶切り・ナイフ・はさみ・ひざ掛け・軍手・懐中電灯・レインコート・スマホ充電器・モバイルバッテリー・カイロ(冬)・うちわ(夏) | |
現金・保険証・通帳や印鑑・家族の連絡先情報・服用中の薬・お薬手帳 | |
女性 | 生理用品・パンティライナー・化粧品・ニット帽(長い髪の毛を隠す用)など |
乳幼児 | 液体ミルク・哺乳瓶・紙コップ・授乳ケープ・離乳食(最低3日分)・おむつ・おしりふき・おもちゃ |
高齢者 | 高齢者向け非常食(3日分)・成人用おむつ・入れ歯洗浄剤・老眼鏡・補聴器の電池など |
非常食や水、着替えなどは最低でも3日分持っていると安心です。災害支援が整うまでに1週間ほどかかることもあるので、余裕があれば非常食は多めに持っていてもよいでしょう。洗濯ができないので、着替えも3日程度あると理想的です。支給品に頼らずできるだけ自力で乗り切れる準備をしておくことをおすすめします。
上表のリストは一例なので、個々の事情によって追加したり変更したりしてください。季節によって必要なものが異なるため、定期的に中身の見直しや入れ替えが必要です。
6‐2.健康管理に気を付ける
避難所では、被災者自らが進んで健康管理に気を配るようにしましょう。体の健康が損なわれることで精神的なストレスも増大します。
反対に、精神的ストレスから体調を崩すことも。こまめな水分補給や適度な運動、休めるときに休む、といった基本的な体への意識を忘れないでください。
避難所生活での健康管理ポイント
- 1~2時間置きに、屈伸運動など体操をする
- 水分と塩分をこまめに摂取する
- 手洗いをする、断水時は除菌ウエットティッシュやアルコールで消毒する
- うがいや歯磨きをする
- 支給された食べ物はすぐに食べて食中毒を予防する
- 下痢や嘔吐、発熱等があったらすぐに知らせて、感染の拡大を防ぐ
- 眠くなったら昼間でも無理せず眠るようにする
- 避難所の運営や復旧作業は休息をしっかりとる
- マスクを着用する
- 息抜きや人とのコミュニケーションを意識する
感染症や二次的な病気を防ぐための対策も重要です。最近では、避難所での新型コロナウイルス感染も懸念されています。マスクの着用やアルコール消毒などは、避難所でも引き続き徹底するようにしましょう。
6‐3.身分証明書や現金を持っていく
避難所には、現金と身分証明書を持っていきましょう。災害時は、スーパーやコンビニなどの店舗が開いていても、電気が止まっているのでクレジットカードや電子マネーは使えません。災害時でも稼働する自動販売機などでも現金は必須です。
また、災害発生時は特別措置がとられ、保険証や運転免許証があれば銀行口座からお金を引き出すことができるようになります。手元の現金がなくなっても、身分証明書があれば預金を下せることもあるので必ず持っていくようにしましょう。
貴重品の管理に注意!
貴重品は盗難に遭う可能性があるので管理方法には工夫が必要です。個人スペースを離れるときには顔見知り士で見張りをする、ウエストバックなどに入れて常に携帯するなど、管理方法も考えておきましょう。
6‐4.情報収集を欠かさない
避難所生活では、情報収集が欠かせません。ラジオやテレビの情報は積極的にチェックしましょう。スマートフォンやパソコンが使えれば、インターネットやSNSで情報収集することも可能です。
ネットは即時性があるので、情報の受け取りと発信の両方に役立ちます。ただし、デマや間違った情報も広く出回るので見極めを慎重に行うことが大切です。
また、メディアからの情報収集だけでなく、避難所に集まった地域住民や自治体の担当者からの情報収集も絶対必要です。避難所生活は被災者同士の協力や結束が欠かせないので、情報交換を怠らないようにしましょう。
場合によっては、ストレスや疲労などで人との交流を避けたくなるかもしれません。しかし被災者同士の情報や意見の交換によって「みんなの状況」「みんなの困りごと」が共通の認識になっていきます。結果的に避難所からの要望が固まったり、意見が通りやすくなるなどの利点も。情報収集は、メディアと現場の両方から積極的に行うようにしていきましょう。
当記事内の6‐7.防災に役立つサービスやアプリをダウンロードしておくの見出し内で、災害時の情報収集に役立つラジオアプリを紹介していますので、そちらもあわせてチェックしてみてください。
6‐5.女性の身の守り方を知っておく
女性は、性被害から身を守るための工夫をしてください。不便や面倒を被ることも増えますが、できる限りの対策をしておくことで被害を未然に防いだり、安心感を高めたりすることができます。
女性が性被害から身を守る方法
- 女性らしいピンクや赤、花柄などを身に付けない
- 髪の毛が長い場合は結び、ニット帽などを被る
- ひとり行動を避ける
- 防犯ブザーを常に持ち歩く
- 子どもは家族と離れた場所で眠らないようにする
災害時に性被害が発生しやすいことを家族や周囲の人と話して、話題に上げておくことも重要です。どのような対策ができるか、災害時にどう協力体制を作るかなど、一度触れておくだけで被災後の意識が変わります。
6‐6.高齢者への配慮や対策をする
少子高齢化に伴い、避難所は高齢者の数も多くなります。家族や身近なところに高齢者がいる場合には、避難所生活における対策を考えておきましょう。
高齢者への配慮や対策
- 災害時に対処してほしいことをまとめておく
- 持病や薬に関する要望はすぐに相談する
- 地域の防災訓練に参加する
- 日ごろから地域の人との交流を欠かさない
高齢者の避難所生活では、周囲の人の協力が必要不可欠になります。家族がいないひとり暮らしの高齢者の方は、日ごろから地域住民とのコミュニケーションをとっておくことや、地域防災訓練に参加しておくようにしましょう。
また、高齢の方は持病や薬などに関する要望が増えます。不安なことは、避難所の看護師や薬剤師などに積極的に相談してください。配慮が必要な場合は、対処してほしいことを紙にまとめて非常持ち出し袋に入れておくのもよい方法です。
6‐7.防災に役立つサービスやアプリをダウンロードしておく
スマートフォンをお持ちなら、災害時に使えるサービスやアプリも準備しておきましょう。アプリをダウンロードしておくことや、ネットサービスを使ってできることや使い方を知っておくのも大事な防災活動になります。
ここでは、災害発生直後から避難所生活までに役立つサービスやアプリを紹介します。
6‐7‐1.Googleパーソンファインダー
Googleパーソンファインダーは、災害が発生したときにだけ提供される安否確認サービスです。名前や電話番号だけで登録ができ、自分を探してもらう、自分が人を探すことの両方ができます。
東日本大震災の際には、地震発生から2時間後にパーソンファインダーが立ち上がり、たくさんの被災者が安否確認に利用しました。家族や身近な知人と「Googleパーソンファインダーに安否情報を登録しておこう」と約束しておくことで、安否確認がスムーズになります。
体験版で動作確認をすることができますので、サービスの流れや操作方法を一度確認し、お気に入りにブックマークしておくことをおすすめします。
6‐7‐2.防災情報 全国避難所ガイド
全国避難所ガイドは、災害が発生してから避難所に移動するまでに役立つスマートフォン向けアプリです。全国15万件以上の避難所情報が登録されており、災害時にハザードマップの表示や避難所までのルート、避難所の混雑状況などを案内してくれます。
現在地に応じた避難所や各種防災情報を取得できるため、外出先や勤務先で災害が起こったときも安心です。ネットにつながらない場合でも、キャッシュ保存された地図や避難所情報が確認できます。
全国避難所ガイドのダウンロードはこちら
6‐7‐3.radico
出典:radiko
radikoは、スマホでラジオ放送が聞けるアプリです。ラジオは速報性も高く、地域に根差した情報を取得できるため災害時には必須。全国放送のテレビよりも、地元放送局の方が素早く情報が集まります。安否確認や給水所の情報など、被災者や生活に直結する細かな情報が届くので、災害時にもっとも頼りになるメディアです。
また、音声配信アプリは動画視聴に比べてスマホのバッテリー消費とデータ通信量がかなり少ないので安心して使用できます。無料で視聴できるので、万が一に備えてダウンロードしておくことをおすすめします。
radikoで無料視聴できる放送局
- 全国民法放送局
- NHK放送局
- 放送大学
radicoのダウンロードはこちら
7.避難所生活Q&A
実際の避難所生活の全体像がイメージできると、より細かな疑問や事情が気になるかもしれません。この章では、防災の備えについて考える中で湧いてくるよりピンポイントな疑問を解消していきます。
7‐1.避難所にテントを持っていくことはできる?
避難所へのテントの持ち込みの可否は、避難所によって異なります。NGではありませんが、実際に使用できるかどうかは各避難所の状況やルールによりけりです。
避難所の規模が大きく、世帯のスペースが十分に確保できる場合はテントを持ち込めることもありますが、反対に人がひしめき合っているような状況では使用が難しいでしょう。
しかし実際に「避難所にテントを持って行ってよかった」と話す経験者の方もいます。ポップアップ式の簡易テントなら持ち運びやすく間仕切りや目隠し、寒さ対策にもよいです。
ただ、すべての人がテントを持っているわけではないので、自分たちだけテントに入るのが忍びないと感じることもあるかもしれません。そんなときは、授乳スペースや女性用更衣室として提供することもできますね。
7-2.避難所にはペットを連れて行ける?
ペットの避難に関しても避難所の状況やルールによってまちまちです。原則として、災害時のペットの扱いは同行避難です。一緒に逃げることは可能ですが、同じ居住スペースではなく屋外やペット専用のスペースに連れて行くことが多くなると考えておいてください。
一方、ペットも家族と同じスペースで生活することを同伴避難といいます。2018年の西日本豪雨の際には、ペット連れの方とその他の方の居住スペースを分けて、同伴避難ができるようにした避難所もありました。ペットの同伴に関しても、地域の自治体の対応マニュアルなどをチェックしてみてください。
7‐3.避難所でインターネットはつながるの?
避難所でもインターネットは使えます。災害時は有線の回線は使えなくなりますが、キャリア回線やWi-Fiなどは使用可能です。
また東日本大震災の教訓をもとに、災害時に公衆無線LANを無料で開放する00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)の普及も進んでいます。00000JAPANは熊本地震の際に実用化し、とても重宝されました。ただしセキュリティ面が脆弱なので、重要な個人情報の入力などには十分注意が必要です。
8.シニアの方におすすめ!災害時に活用できるSNS「らくらくコミュニティ」
災害時にはSNSでの情報収集がとても役立ちます。災害時は電話がつながらないため、SNS経由で連絡を取り合ったり、情報収集したりするケースも過去にたくさんありました。
また、被災者が現状をSNSに投稿することで、必要な支援を伝える手段にもなります。東日本大震災以来、災害時のSNS活用はソーシャル防災とも呼ばれ、重要な取り組みと考えられるようになったのです。
ただ、SNSに馴染みのない世代や抵抗のある方にとって、twitterやFacebookといった従来のSNSは敷居が高く感じられるかもしれません。そこでおすすめなのが、シニア向けSNS「らくらくコミュニティ」です。
らくらくコミュニティのおすすめポイントは?
- シニア向けの情報が集まっている
- シンプルで操作がしやすい
- スタッフがSNS内を24時間チェック
- わからないことは電話でサポート
同年代が集まっているSNSなので、興味関心の高い投稿や情報を見ることができます。管理やサポート体制もしっかりしているので、安心してSNSを楽しめるでしょう。シニア層のSNSデビューにはぴったりですので、この機会に一度覗いてみてくださいね。
9.まとめ
避難所生活とはどのような感じなのか、どんなことに注意し、備えておくべきなのかを総合的にお伝えしました。非常事態の混乱や、災害のショックなどで、想定通りに事が進まなかったり、予期せぬ困りごとが発生したりすることもあるでしょう。普段と違う環境でストレスが強まることも予想できます。
しかし、避難所での実態やリスクを知り、起こり得る問題を想定しておくことで、できる対策やとれる行動が変わります。事前準備が避難所生活の快適さを大きく左右するため、災害の備えを徹底していきましょう。
最後にこの記事の内容をまとめると…
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いつ起こるかわからない災害に備え、定期的に非常時の生活や行動をシュミレーションしておくとよいです。災害が起こらないに越したことはありませんが、万が一のときはあなたと、あなたの大切な家族が無事であること、また少しでも快適な生活を送れることを願っています。
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