
「老後の住み替えは、いつ頃から準備を始めたらいいの?」
「老後にの住み替えで後悔したくないんだけど、住み替え先はどう選んだらいい?」
老後を快適に過ごすための家を求めて住み替えを希望する人は多いものの、
- 準備を始める時期
- いつまでに終わらせるべきか
- 住み替え先を選ぶ基準
についてよくわからず、老後の住まいに漠然とした不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。
実は、老後の住み替えは、50歳を目処に備え始めることがおすすめです。定年を迎える前の64歳までには住み替えを完了できるように、計画的にすすめるとよいでしょう。
50歳ではまだ元気な人も多いため「早すぎるのでは?」と感じる人もいるでしょう。
しかし、実際に身体の衰えに気づいたり介護が必要になったりしてから住み替えを始めると、手続きや引越し作業、生活環境への適応などを短期間で進めなければならず、身体に大きな負担がかかります。
また、厚生労働省の調査によると、65歳を過ぎると身体の不調を感じる人が増える傾向があります。そのため、50歳から64歳の間には住み替えを済ませ、老後の生活に向けて新しい環境に慣れておくことが必要です。
そこで今回は、老後をより過ごしやすい家に住み替えたいと考えている人に向けて、準備を進めるべき時期や住み替え先の選び方、失敗しないためのポイントなどを詳しく解説します。
本記事のポイント |
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この記事を読んで老後の住み替えに備えることで、戸建てやマンションの特徴を理解し、自分に合う老後の住み替え先を選びやすくなります。また、注意すべきポイントをしっかりと押さえて住み替えることで、老後に向けた理想の住み替えを実現するための助けになるでしょう。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
1. 介護になる前に!老後の住み替えは50歳を目処に備え始めよう
冒頭でもお伝えしたように、老後に備えた住み替えをスムーズに完了させるためには、50歳を目処に備え始めることがおすすめです。
住み替えは、
- 住み替え先の家探し
- 資金の計画
- 書類作成など各種手続き
- 引っ越し作業
- 住み替え後の生活環境への適応
など、やることが想像以上にたくさんあります。肉体的・精神的な負担も大きいため、身体の衰えに気づいてからアクティブに動くことは難しいでしょう。
50代になると三大疾病の1つであるがんのリスクも大幅に増えます。
なかでも死亡数の多い
- 胃がん
- 肺がん
- 大腸がん
についての罹患率を40代と比べると、50代では2.9倍~3.9倍に上がることがわかっています。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
がんなどの病気以外にも、事故などの不測の事態によって急に体が不自由になる可能性もあるため、いつから介護が必要になるかはだれにも予測ができません。
しかし、必要に迫られてから住み替えに動き始めた場合、短時間でより良い住み替え先を探すことは難しいでしょう。
つまり、実際に介護が必要になってからでは遅いのです。自分の体力や気力を過信して「元気だから老後に向けて動くのはまだ先だ」と思わず、病気や介護のリスクが少ない段階で備えておくことがなによりも重要です。
今は健康で体力に自信がある人でも、身体機能は老化により徐々に低下していきます。
住み替えは
- 老後の長い時間を快適な家で暮らす
- いざ介護になったときにサービスを受けやすい環境を整える
ために、50歳を迎えたらできるだけ早い段階で備え始めましょう。
◆老後の住み替えには、資金面から見ても早めの備えが大切◆
資金面から考えても、安定した収入がある50歳から老後に備えることは大切です。現役で働きながら老後の住み替えについて考え始めることで、老後に向けた貯蓄や資金調達方法を吟味でき、住宅ローンを利用した場合にも余裕を持った資金計画が立てられます。
老後も安定した収入を得られる場合を除き、住み替えの選択肢を広げるためにも、定年退職まで15年程度の収入が見込める50歳から備えることが必要だと言えるでしょう。
2. 老後の住み替えに動き始めるべき3つのタイミング
老後の住み替えは、50歳を迎えたら備え始めることが大切です。とはいえ、実際に住み替えの行動を起こすべきタイミングとしては、どのようなものがあるのでしょうか。
住み替えに向けて動き始めるタイミングとしては、以下のような状況が挙げられます。
- 住む家族が減り、部屋が余っている
- 退職や子どもの卒業で、その土地に住む必要がなくなった
- 老朽化などで家を修繕する必要がある
1つずつ見ていきましょう。
2-1. 住む家族が減り、部屋が余っている
子どもの独立などで住む家族が減り、部屋が余っている場合は、老後に向けた住み替えを検討するおすすめのタイミングです。
特にファミリー向けの戸建てに住んでいるケースでは、子どもが独立すると部屋を持て余してしまい、家の管理や掃除が負担となります。
老後に向けて家族の人数に合ったサイズの家に住み替えることは、
- 掃除の手間が減ること
- 光熱費の費用削減
に有効なため、家事の負担や無駄な出費を減らせます。早めの住み替えを実行しましょう。
2-2. 退職や子どもの卒業でその土地に住む必要がなくなった
退職や子どもの卒業をきっかけに、老後の住み替えを実施する人も多くいます。
会社や学校までの距離や交通の便を考える必要がないため、あこがれていた田舎への移住や生まれ故郷に帰るなど、希望に合わせて住み替え場所を自由に選べることが特徴です。また、定年退職の際には退職金が出ることが多いため、資金計画が立てやすいことも挙げられます。
住み替え先探しや資金計画など、事前に準備を整えておき、退職のタイミングに合わせて実施すればスムーズに住み替えできるでしょう。
2-3. 老朽化などで家を修繕する必要がある
今住んでいる家の状態をチェックしてみましょう。老朽化などで家の修繕が必要なら、住み替えに動き始めるタイミングとしておすすめです。
これから年を重ね身体が衰えてくると、
- 階段に手すりが必要になる
- 段差につまずきやすくなる
など、室内の設備に対し不便に感じることが増えてきます。
外壁や屋根の傷みなどで近いうちに修繕が必要となるのなら、早い段階で住み替えを実施しましょう。一時的な修繕にお金をかけるよりも、老後をより豊かに過ごすために、住み替え先の家や老後の生活に費用を使うほうが効率的です。
3. 64歳までには老後の住み替えを完了させておくのがおすすめ
老後に向けた住み替えは、64歳までには完了させておくことがおすすめです。65歳を過ぎると体の不調を感じ始める人が増え、なかには介護が必要になる人も出てきます。
2019年に厚生労働省が行った「国民生活基礎調査」によると、要介護等と認定された人の割合のうち65歳~69歳と70歳~74歳を比較した場合、男性では5.9%から10.4%に、女性では2.6%から5.4%に上昇し、どちらも2倍近くの割合になることがわかります。
参考:厚生労働省[「国民生活基礎調査」2019年(4介護の状況)
要介護者等と認定された人のうち65歳~69歳の人は、男性で5.9%、女性で2.6%であるため、それほど多いように感じないかもしれませんが、「要介護者ではない=健康」とは限りません。
なかには、ケガや病気などが原因で身体に不調を感じる間もなくいきなり要介護になってしまうケースもありますが、一般的には介護が必要となる前段階として、
- 目や耳といった感覚器官の衰え
- 体力や気力の低下
などの症状が目立ち始めます。
以下のグラフは、同じく「国民生活基礎調査」の結果をもとに、人口千人あたり「日常生活に影響がある」と答えた人数を5歳単位でグラフに表したものです。
参考:政府統計の総合窓口「国民生活基礎調査」2019年(健康 全国編)表番号109
このグラフで注目してもらいたい点は、60歳~64歳から65歳~69歳にかけての上昇率です。
「日常生活に影響がある」と回答した人数は、年齢が上がるにつれて増加し、65歳~69歳になるとさらに上昇スピードが上がります。特に男性の上昇率は高く、60歳~64歳と比較すると65歳~69歳は1.3倍以上です。
日常生活に影響が出るような不調をかかえていると
- 住み替えが負担となる
- 住み替えた後の生活や環境に適応しづらい
など、老後に向けたスムーズな住み替えの妨げになってしまいます。
そのため、不調を感じる人が増加する前の64歳までには住み替えを完了させておきましょう。身体の不調を感じる前に住み替えを完了させ、65歳からは老後に向けて新しい環境での生活基盤を整えることが重要です。
4. 老後の住み替え先の希望は戸建てよりもマンションのほうが多い傾向
実際に住み替えに向けて動こうと考えたとき、まず悩むのは
「マンションと戸建てのどちらを選ぶべきか」
という問題でしょう。
老後に向けた住み替えを考えている人に行った調査によると、老後の住み替え先としては、戸建てよりもマンションを希望している人が多い傾向があります。
希望する住み替え先 | 割合 ※複数回答含む |
マンション(アパート含む) | 76.5% |
一戸建て(2世帯住宅含む) | 49.2% |
参考:一般社団法人不動産流通経済協会「シニアの住宅に関する実態調査」
マンションを希望する人が多い理由としては、以下の理由が考えられます。
- 老後を見据えたフラットな構造
- 商業施設などが近くにある立地のよさ
しかし、実際に住み替え先としてマンションと戸建てのどちらを選ぶべきかは、
- 老後にどのような生活を送りたいか
- 何を重視して家を選ぶか
によって異なります。
たとえば、防犯対策や周辺施設へのアクセスを重視したい人は、マンションを選ぶと満足度が高いでしょう。
一方で、趣味でガーデニングを楽しみたい人やペットと一緒に生活したいと望んでいる人は、戸建てのほうが望みをかなえやすい傾向があります。
このように、住み替え先を選ぶときはマンションと戸建てのどちらが自分の希望に合うのかを、老後の生活を具体的にイメージしながら選ぶことが重要です。
理想となる老後の生活は、人によって異なります。住み替えてから後悔しないために、一緒に住む人やご家族と今後の生活について話し合い、望みが叶えられる住み替え先を選びましょう。
5. 老後の住み替え先で戸建てがおすすめな人
先程お伝えしたように、住み替え先にマンションか戸建てかを選ぶためには、自分の希望している老後の生活を明確にイメージし、それが叶えられる住まいを考えることが大切です。
ここからは、老後の住み替え先に戸建てを選んだ場合のメリットとデメリットを解説します。併せて戸建てがおすすめな人を紹介するため、メリットとデメリットを踏まえたうえで、自分の状況に当てはまるかを考えながら見ていきましょう。
5-1. 戸建てを選ぶメリット
老後の住み替えに戸建てを選ぶメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
◆戸建てを選ぶメリット◆
| ペットとの生活やガーデニングなどの趣味を存分に楽しめる。 |
| 購入した場合は、介護が必要になったときに必要に応じたリフォームを行える。 |
| 周囲の家と離れているため、お互いの生活音を気にせずに過ごせる。 |
| マンションに比べて車から家までの距離が短く、移動や荷物を持ち運ぶ際の負担が少ない。 |
戸建てを選ぶメリットのなかでも注目したいのは、ペットとの生活やガーデニングといった自分好みの暮らしを実現しやすい点です。マンションにもペットの飼育が可能な物件はありますが、築年数や追加費用がかかるなど条件が厳しく、地域によっては物件自体も少ない場合があります。
また、老後を安心して過ごすために、身体機能の低下に合わせて必要なリフォームができることも、大きなメリットでしょう。
5-2. 戸建てを選ぶデメリット
老後の住まいに戸建てを選ぶときのデメリットは、以下の2つです。
◆戸建てを選ぶデメリット◆
| 段差や階段がある場合には、身体が衰えてきたときに転倒する危険性がある。 |
| 修繕が必要かの判断や手配、庭の管理など、自分で家のメンテナンスをしなければならない。 |
戸建てのデメリットとして特に注意したい点は、段差や階段による転倒事故の危険性です。段差の高さや手すりの有無などにも注意して物件を選ぶ必要があります。最終的に階段の上り下りが難しくなったら、1階部分のみで生活することになるかもしれません。
また、マンションの場合は管理会社が計画的に修繕してくれますが、戸建ては修繕の判断や業者探しなども自分で行わなければならず、思いのほか負担が増える可能性も考えられます。
5-3. 戸建てがおすすめな人の特徴
戸建てのメリットとデメリットを把握した上で、老後の住み替え先として戸建てを選ぶことがおすすめな人は以下のとおりです。
◆戸建てがおすすめな人の特徴◆
- 静かな環境で自分好みの暮らしを実現したいと考えている人
- ペットとの生活やガーデニングなどを楽しみながら過ごしたい人
老後も自分好みの暮らしを続けたいと考えている人は、戸建てのほうが望みをかなえやすいことから、住み替えの満足度が高いと考えられます。
特にペットとの生活やガーデニングを楽しみながら老後を過ごしたい人は、戸建てに住み替えることがおすすめです。マンションに比べて、条件に合う物件を見つけやすい特徴があります。
DIYや楽器演奏など、音が鳴るような趣味を持っている人も、戸建てを選ぶと気兼ねなく楽しめるでしょう。
6. 老後の住み替え先でマンションがおすすめな人
続いて、老後の住み替え先にマンションを選んだ場合のメリットとデメリットを解説します。マンションがおすすめな人の特徴も紹介するため、自身の状況と照らし合わせながら考えていきましょう。
6-1. マンションを選ぶメリット
老後の住み替え先にマンションを選ぶメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
◆マンションを選ぶメリット◆
| マンションは駅や商業施設から近いエリアにあることが多く、買い物などが近場で済ませられる。 |
| 玄関からワンフロアの構造になっており、移動による負担が少ない。 |
| 2階以上の部屋であれば、玄関を施錠すれば戸締りが完了する。 オートロックや管理人がいるマンションを選ぶとより安心して過ごせる。 |
老後は移動がしづらくなるため、買い物や病院など生活に必要な施設が近場にそろっていることは大変重要です。マンションは駅や商業施設から近いエリアに建っているものが多く、立地が大きなメリットとなるでしょう。
また、段差が少ない構造のため、身体が衰えてきたときにも移動による負担が少ないことも特徴です。
6-2. マンションを選ぶデメリット
老後の住み替えでマンションを選ぶデメリットは、以下の4つです。
◆マンションを選ぶデメリット◆
| マンションの管理修繕を任せられるものの、毎月管理費や修繕積立金の支払がある。 |
| 賃貸の場合は継続的に家賃の支払が必要なため、長期間住む場合の負担が大きい。 |
| 周りの生活音が気になることや、自分も騒音を立てないよう気を付ける必要がある。 |
| マンションの管理規約など、決められたルールを守って生活しなければならない。 |
マンションを選んだときの最大のデメリットは、毎月の費用負担がある点です。管理費や修繕積立金に加え、賃貸の場合は家賃もかかります。長期にわたって住むことを考えると、大きな金額となるでしょう。
また、マンションでは管理規約によって定められたルールを守って生活することが求められます。ペットが飼えなかったり、バルコニーなどの共有部分の使用に制限があったりするため、住み替え先にマンションを選ぶときには管理規約などもチェックすることが必要です。
6-3. マンションがおすすめな人の特徴
マンションを選んだ時のメリットとデメリットを踏まえたうえで、老後の住み替えにマンションがおすすめな人の特徴を見ていきましょう。
◆マンションがおすすめな人の特徴◆
- 老後に向けて、より便利な立地の住まいに住み替えたい人
- 身体が衰えたときにも動きやすい、段差の少ない家に住み替えたい人
マンションは、住み替え先に立地のよさや階段や段差などの少ないバリアフリー構造を求めている人におすすめです。
- 身体が衰えたときにも生活しやすいこと
- スーパーや病院など必要な環境が近くに整っていること
を重視して住み替え先を探している人は、マンションに絞って探すと条件に合う物件を見つけやすいでしょう。
7. 老後の住み替えは約7割が賃貸よりも購入を希望している
老後の住み替えに際しては、購入か賃貸かについても迷う人が多いでしょう。
実際に老後の住み替えを経験した人に対するアンケート調査では、76.2%が住み替え先を購入しています。これから住み替えようと考えている人に関しても68.7%が購入を希望しており、全体の約7割が購入を選んでいることがわかります。
参考:一般社団法人不動産流通経済協会「シニアの住宅に関する実態調査」
老後に長い期間住み続けられる安心感や、最終的に資産として残せることから、老後の生活資金にある程度の余裕がある場合は購入を選ぶケースが多いようです。
しかし、住み替え後の家を購入するには多額の資金が必要であり、無理な返済計画で住宅ローンを組むと老後の生活資金を圧迫するため、避けなければなりません。
また、賃貸であれば住み替えた先が合わないと感じたら住む場所を再度変更することもできますが、購入した場合は簡単に移動できないでしょう。
購入と賃貸のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| 購入 | 賃貸 |
メリット |
|
|
デメリット |
|
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購入か賃貸かは安易に決められるものではなく、どちらにもリスクが存在します。双方のリスクを理解したうえで自分の年齢や資金面、相続についてなど、さまざまな観点から慎重に判断しなければなりません。
購入か賃貸かで迷っている人は、高齢期の住まいについて相談できる窓口や、ファイナンシャルプランナーなどにアドバイスをもらうことも検討するとよいでしょう。
8. 老後の住み替えで失敗しないために余裕をもった資金計画を立てよう
老後に備えるための住み替えは、しっかりとした資金計画が欠かせません。
退職金を住み替え資金に充てようと考えている人も多いと思いますが、退職金は老後の生活を支える重要なお金です。老後の住み替え費用として退職金を全て使ってしまうと、老後の生活資金に影響を及ぼす危険性があります。
購入する場合、現金で一括支払いしても貯蓄に十分な余裕があるならベストですが、住み替え先の購入費用を一括で支払ったことにより、生活資金の不足や急な出費に対応できなくなってしまっては大変です。年齢や健康状態によっては住宅ローンを利用することもできるため、資金計画は慎重に立てなくてはなりません。
資金計画を立てる際は、まずは自分が支払える物件の金額を把握することから始めるとよいでしょう。
以下の4ステップで、老後の住み替えに使えるおおよその金額を計算できます。
ステップ1 | 今の家を売って仲介手数料やローン残債などを引いたときに、残る金額を計算する |
ステップ2 | 貯蓄額から老後の生活資金を引き、住み替えに支払える資金を洗い出す |
ステップ3 | 住宅ローンを利用する場合は、完済まで無理なく返済できる借入額を計算する |
ステップ4 | ステップ1~3の金額を合計し、住み替えに使える資金を把握する |
持ち家の場合、まずは家を手放して手元に残る金額を計算します。今住んでいる家の住宅ローンが残っているなら、売却した金額でローンを返済することになるため、そのまま住み替え費用には充てられません。住宅ローンの残債や仲介手数料、税金などを抜き、最終的に手元に残る金額を計算してください。
- 家を売って手元に残る金額
- 貯蓄額から支払える金額
- 住宅ローンで無理なく返済できる借入額
の3つを合計すると、住み替えに使える金額がわかります。その金額の範囲内で、住み替える物件を探すことが重要です。
今住んでいる家を売却して住み替え先住居の購入を考えているケースを例に、住み替え先に使える資金を計算してみましょう。
ステップ1 | 住んでいる家の査定額 | (A) | 2,000万円 | 複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。 |
住宅ローンの残債 | (B) | 1,000万円 | 金融機関から送付される残高証明書で確認できます。 | |
売却にかかる仲介手数料、税金等 | (C) | 75万円 | 仲介手数料は「売却金額×3%+6万円」で予測が可能です。 | |
家を売却して手元に残る金額 | (D) | 925万円 | 「A-B-C」を計算します。 | |
ステップ2 | 貯蓄のうち住み替えに使える資金 | (E) | 1,800万円 | 老後の生活資金を引き、無理のない資金を考えます。 |
ステップ3 | 住宅ローン借入額 | (F) | 2,000万円 | 毎月可能な返済額、返済期間から計算します。 |
ステップ4 | 住み替えに使える資金 | 4,725万円 | 「D+E+F」を計算します。 |
上記条件の場合、住み替えに使える資金は4,725万円までのため、仮に5,000万円の物件を購入すると資金計画に問題が生じます。
記載した金額は一例ですが、このように具体的な金額を割り出しながら、住み替えに使える資金を計算していきます。住み替えに使える資金を明らかにし、金額内に収まる物件に絞って探しましょう。
綿密な資金計画を立てずに住み替えを実施すると、老後の生活が苦しいものになってしまいます。必ずしっかりとした資金計画を立てたうえで住み替えることが、老後の住み替えを失敗しないためには必要です。
◆住宅ローンを無理なく返済するためにも、住み替えは50歳を過ぎたら早めに備えることが大切!◆
住宅ローンの借入には年齢制限があり、金融機関や商品によって異なりますが、借入対象を70歳以下、完済時年齢を80歳未満に設定していることが一般的です。
現在、多くの企業では65歳までに定年を迎えるため、65歳以降は収入の減少が見込まれます。借入のタイミングによっては定年してからも返済が続くことから、住宅ローンを借りられたとしても月々の返済で生活が苦しくなってしまっては、安心して老後を迎えられません。
月々の返済額は、
- 借入額
- 返済期間
によって決まります。
そのため、定年まで時間のある50歳から住み替えに備えることで、早いタイミングで住宅ローン借入の判断ができます。借入の判断が早まれば、そのぶん返済期間を長く設定できるため、月々の返済額を抑えられるでしょう。
計画的に返済する観点から見ても、早めに住み替えを実施し、安定して収入を得ている期間に少しでも多くの住宅ローンを返済しておくことが大切です。
9. 老後の住み替えで失敗しやすい注意すべきポイント3つ
老後の住み替えで失敗しないためには、余裕を持った資金計画を立てることが重要であるとお伝えしましたが、そのほかにも注意すべきポイントが3つあります。
- 周辺施設や利便性をチェックする
- 周辺の環境や高齢者福祉の充実度を確認する
- 積極的に地域の人と交流する
老後の住み替えを問題なく成功させるために、この3つは必ず押さえておきたいポイントです。
1つずつ説明します。
9-1. 周辺施設や利便性をチェックする
住み替え先を探すときは、
- スーパーや病院が近くにあること
- 駅やバス停が近くにあること
を必ずチェックしましょう。
老化により身体が衰えてくると、遠くに出かけることが徐々に困難になります。そのような状況で、普段から利用するスーパーが近くにないと、自分で買い物にも行きにくくなり生活に支障が出てしまうでしょう。
また、アクセスが悪いと外出がおっくうになり、家にこもりがちになる可能性が高まります。
そのため、老後の住み替え先は高齢になったときに必要な施設が近くにあり、アクセスがよい場所であることが非常に重要です。具体的には、ゆっくり歩いても10分程度で行ける距離に、必要な施設や駅、バス停などがある場所を選ぶとよいでしょう。
9-2. 周囲の環境や高齢者福祉の充実度を確認
住み替え先を選ぶ際は、周囲の環境や自治体の高齢者福祉に関する充実度なども確認しましょう。
一見落ち着いて老後を過ごせそうな地域でも、大通りに面していて夜になると車の音がうるさかったり、坂が多くて移動が大変だったりと、環境に問題がある場合があります。周囲の環境は、実際に訪れてみないとわからないケースが多いものです。
また、住み替え先によっては高齢者福祉への取り組みが進んでおらず、希望しているサービスが利用できないケースも考えられます。利用できる福祉制度は全国統一ではなく、各自治体によって異なります。老後の生活のために住み替えるなら、高齢者福祉に力を入れている自治体を選びたいでしょう。
インターネットで「〇〇市 高齢者」と検索すると、自治体の高齢者福祉についての情報を閲覧できます。自治体のホームページで、高齢者向け福祉の充実度も確認しておきましょう。
9-3. 積極的に地域の人と交流する
老後に向けて住み替えた後は、積極的に地域の人とのコミュニケーションを取ることが非常に重要です。特に住み慣れた地域から離れた場所に住み替える場合は、挨拶を交わしたり話をする相手もいないため、社会から孤立したように感じてしまうケースは少なくありません。
東京都健康長寿医療センターの研究によると、日常生活に問題がない健康的な状態において、社会的に孤立し閉じこもり傾向にある高齢者は、そうでない高齢者に比べて6年後の死亡率が2.2倍高くなることがわかっています。
参考:東京都健康長寿医療センター「高齢期の社会的孤立と閉じこもり傾向による死亡リスク」
社会的孤立や閉じこもり傾向を防ぐためには、積極的に外出し、周囲の人とのコミュニケーションを図ることが有効です。しかし、身体の不調により外出しづらくなってからでは交流の機会が減少し、環境や周囲の人と馴染むのに時間がかかってしまうでしょう。
新しい地域の人と良好な関係を築くことは、孤立化の予防だけではなく、老後に充実した時間を過ごすことにもつながります。
そのため、比較的アクティブに動ける60代前半のうちに住み替えを完了し、
- ボランティアに参加する
- 公民館などで開催しているカルチャースクールに通う
など、周囲の人と積極的に交流することが大切です。
◆楽しい情報がたくさん!シニア向けSNS「らくらくコミュニティ」をきっかけに交流しよう◆
「らくらくコミュニティ」とは、会員同士がインターネット上のやり取りを無料で楽しめる、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)です。主な利用者は50代以上であり、遠くに住んでいる人の投稿を見たり、コメントをやり取りしたり、近い世代の人との交流を気軽に楽しめます。
同年代の人が投稿した内容を見ているだけでも楽しめますが、らくらくコミュニティの利用方法として特におすすめしたいのは、投稿です。特別な内容を投稿する必要はなく、近くの風景や作った食事、咲いている花など、日常の一瞬を切り取り共有するイメージで投稿してみましょう。
撮影するために出かける頻度が増えれば、住み替え後の環境に適応するきっかけにもなります。らくらくコミュニティを開くたびに新しい情報や投稿が楽しめるので、たくさんの情報を得ることができ、地域の人との会話にも活かせるでしょう。
10. まとめ
老後に向けた住み替えは、50歳を迎えたらできるだけ早い段階で備えを始めましょう。住み替えは、肉体的にも精神的にも負担が大きいため、実際に介護が必要になってから考え始めるのでは間に合いません。
具体的に動き始めるべきベストタイミングとしては、以下の状況です。
- 住む家族が減り、部屋が余っている
- 退職や子どもの卒業で、その土地に住む必要がなくなった
- 老朽化などで家を修繕する必要がある
老後の住み替えは64歳までに完了できるように進めてください。65歳を過ぎると身体の衰えや不調を感じる人が増える傾向があり、なかには要介護になってしまう人もいるからです。そうなる前に住み替えを完了させ、住み替え後の環境や生活に慣れておく必要があります。
また、老後の住み替え先としては、戸建てよりもマンションを希望する人の割合が多いものの、実際にどちらを選ぶべきかは人によって異なります。自分が老後にどのような生活を望んでいるのかを明確にイメージし、何を重視して住宅を選びたいかを考えて選んでください。
戸建てとマンションについて、それぞれを選ぶメリットとデメリット、おすすめな人の特徴をまとめると以下のとおりです。
| 戸建て | マンション |
メリット |
|
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デメリット |
|
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おすすめな人 |
|
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なお、老後の住み替えは、約7割の人が賃貸よりも購入を希望しています。しかし、賃貸にも購入にもそれぞれリスクがあり、自分の年齢や購入に使える資金など、さまざまな観点で検討し、余裕を持った資金計画を立てることが非常に重要です。資金面はもちろん、注意すべきポイントも必ず押さえて、老後の住み替えを成功させましょう。
この記事が、老後の住み替えに関する不安を払拭し、理想の老後を迎えるためのお役に立てば幸いです。
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