
「生前整理って、具体的に何をすればいいのかしら」
「生前整理をしたいけど、何から手をつければいいのかな」
死後に膨大な遺品を残したり、遺族でのいらぬ争いをさせないよう、元気で健康なうちに生前整理を始めようとお考えですね。
生前整理では、具体的に以下の4つを整理します。
- モノ
- カネ
- ヒト
- データ
「遺族に迷惑をかけたくない」「死後に禍根を残したくない」という希望を叶えるためには、形のある物品の整理をするほか、資産状況や自分の死を知らせて欲しい友人知人、インターネットでの契約やアカウントなどのデジタル情報などについても、家族が分かりやすいように整理しておく必要があるのです。
そこでこの記事では、生前整理の手順とそれぞれにおいての注意点やコツ、かかる費用を分かりやすくお伝えしていきます。
本記事のポイント
- 生前整理するべき4つのこと
- 生前整理の流れ
- 生前整理の注意点
- 生前整理にかかる費用
- 生前整理のメリットとデメリット
- 生前整理のタイミング
この記事を読むことで、生前整理を効率的に進めることができ、安心して前向きな人生を送ることができるようになりますよ。
目次
1.生前整理するべきはモノ・カネ・ヒト・データの4項目
冒頭でもお伝えしましたが、生前整理をするべきは以下の4点です。
生前整理するべき4つのこと
- モノ(物品)
- カネ(資産)
- ヒト(連絡先)
- データ(デジタル情報)
生前整理とは、本来は自分の死後に残された家族が遺産の整理や相続に困らないよう、生きている間に自分の資産状況を把握し、整理しておくことを指しています。
しかし、近年では資産だけでなく、死後を見据えて物品やデータの扱いについても整理する対象が広がってきているのです。
それぞれについて、どんなものを整理するべきなのか、わかりやすく説明していきましょう。
1-1.生前整理するべきこと①:モノ
生前整理するべき「モノ」とは、実際に目に見える物品すべてを指します。
たとえば以下のようなものを整理し、不用品については処分していきます。
■死後すぐに必要になるもの
その他、契約解除や停止手続き、相続に必要になるもの ■価値のあるもの
その他、市場にて高価にて取引されるもの ■形見分けの品
その他、愛用の品など |
自分自身で身の回りにある持ち物を整理し、不要なものをあらかじめ処分しておくことで、自分の死後、遺族に大量の遺品を残さないようにするのです。
| メリット | デメリット |
生前整理 |
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遺品整理 |
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生前整理の大目的は「死後の遺族の負担を軽減すること」です。
生前整理をしておかないと、あなたの死後、遺族は「どこに何があるのか分からない」「膨大な数の不用品の中から手続きや相続に必要なものを探さなくてはいけない」という状態から、遺品整理をスタートさせることになってしまいます。
本人の性格や住居形態にもよりますが、一般的に、人が生きていると、その年数が長いほど持ち物は多くなるものです。
持ち物の中には、本人も「そのうち捨てよう」と思っているものや「まだ持っていたのか」と驚くようなものも多く含まれているでしょう。
自分で増やしてしまった持ち物を、自分自身でできるだけコンパクトにすることで、死後の遺族の負担を大幅に軽減することができます。
1-2.生前整理するべきこと②:カネ
生前整理するべき「カネ」とは、以下のようなものを指します。
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死後に遺族間で財産問題や相続トラブルが発生するのを防ぐため、まず自分自身で資産状況を把握して整理しておきます。
| メリット | デメリット |
生前整理 |
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遺品整理 |
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「相続するほどの資産などない」と考えていても、遺産相続が問題となって家庭裁判所に持ち込まれるのは、総資産額5,000万円以下のケースだけで8割近くに上るのです。
特に、金融資産があまり多くなく、不動産が主な資産である場合は、分割が難しいために遺族同士の話し合いだけではなかなか解決しないことが多いのが実情です。
資産の多寡に関わらず、生前整理で資産状況を把握し、相続についてあらかじめ備えておくことで、遺族に禍根を残さないようにすることができるのです。
1-3.生前整理するべきこと③:ヒト
生前整理するべき「ヒト」とは、自分の死を伝えて欲しい人物や母校等の連絡先の整理を指します。
携帯電話でのやりとりが多くなり、自分の親しい友人や関係機関の連絡先を家族が知らないケースも増えていることから、生きている間に死後の連絡先をまとめて整理しておきます。
| メリット | デメリット |
生前整理 |
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遺品整理 |
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年賀状を交わす機会も減り、仲が良くても電話番号どころかSNSアカウントしか知らないという関係も存在することでしょう。
手元の携帯電話だけですべての連絡を済ませていると、普段は便利でも、万が一死を迎えた際に、自分の死を相手に伝えることができないのです。
「報せてほしかった」「お見送りをしたかった」という、残される立場の人たちの気持ちに寄り添うことも、生前整理をしておかないとできない場合があります。
自分の死を伝え、生前の感謝の気持ちを伝えるためにも、遺族がすぐに連絡を取ることができるよう、連絡先のリストアップは必ずしておきたいものです。
1-4.生前整理するべきこと④:データ
生前整理するべき「データ」とは、以下のようなものを指します。
- スマホやパソコンのロック解除のパスワード
- ネットバンクのIDとパスワード
- 月額会員のアカウントとパスワード
IDやパスワードは、日頃はほかの人に知られないように管理している物ですが、突然の死を迎えると、解約手続きができずに支払いが発生したり、中にある情報が取り出せなくなってしまったりするため、死後に遺族が手続きをしやすいよう、オンラインで契約しているものについて整理します。
| メリット | デメリット |
生前整理 |
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遺品整理 |
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オンラインで契約や決済をしているもののほとんどが、契約者本人の死亡を自動的に知らされるものではありません。
そのため、遺族が契約者の死亡を伝えて解約手続きを取る必要があるのです。銀行口座やクレジットカードをストップし、支払いが滞れば自動的に契約解除や解約になるものもありますが、以下の2つの問題が起こる可能性があります。
- 支払いが数回滞ることで信用会社に債権が移り、請求が続くものがある
- 自動解除になったら、中のデータを取り出すことができない
- の場合は、死亡届を提出したり必要書類を書くことで、死後の支払いについて請求を取り消すことはできますが、関係機関すべてに連絡をするなど、とても面倒な手続きが必要になる場合があります。
- の場合では、特に写真データを収めているインターネット上のストレージの契約が挙げられます。
旅先で撮ったものや趣味の写真などを、ストレージに貯めたままにしているという方も多いでしょう。
写真は、あなた自身がどんなものを見てどんなものに心を動かされたのかを伝えるものです。
死後にそのデータがすべてなくなってしまっては、残された家族や友人も残念に思うかもしれません。
データの生前整理は、死後に遺族が行う事務手続きをスムーズにすることができるだけでなく、遺族の心を慰めることができるものでもあるのです。
2.モノの生前整理は手を付ける順番が重要
物品の生前整理は、人によって量の違いはありますが、生前整理するべき4つのものの中で最も体力を使うものだと言えます。
完璧にやろうとすると、途中で挫折してしまうこともありますし、予期せぬ事故や病気に遭ってしまって続けられなくなることもあります。
そのため、以下のようにゴールを段階的に設けて、無理なく少しずつ進めていくことが、成功への近道です。
ゴール①:死後に必要になる書類をまとめておく
ゴール②:価値のあるものをまとめたりリストアップしておく
ゴール③:形見分けの品をまとめたりリストアップしておく
ゴール④:不用品の処分をする
物品の生前整理をしようとして、最初から「モノを減らすこと」を目標にしてしまうと、膨大な時間がかかったり途中で頓挫してしまうことがあります。
生前整理の目的は、あくまでも「死後の遺族の負担を軽減すること」なので、残された家族にとっての重要度や死後の緊急性の高いものから進めていく方が、あなたの肉体的・精神的な負担も軽くなりますし、家族も助かります。
また、なんでも「死後には必要ないだろう」と、断捨離と称して処分してしまうと、ゴール③に設定している「形見分けの品」まで廃棄対象になってしまうことがあります。
生前整理は、決して「自分が生きてきた跡をきれいさっぱりなくすこと」ではないのです。
形見分けの品や家族に伝えておきたいものを自分自身で判断して用意しておくことこそが、遺品整理や単なる断捨離とは異なる、生前整理ならではの点と言えます。
それぞれのゴールの具体的な内容や注意点について、詳しく説明していきましょう。
2-1.モノの生前整理の流れ
生前整理におけるモノの整理は、断捨離や片付けとは異なり、残された家族にとっての優先度や必要度を考えて、以下の順で行います。
| モノの生前整理の段階的なゴール | 遺族が必要になる時期 |
ゴール① | 死後に必要になるものをまとめておく | 死亡が確認されたらすぐ〜死後2週間まで |
ゴール② | 価値のあるものをまとめたりリストアップしておく | 死亡が確認されたらすぐ〜死後3ヶ月まで |
ゴール③ | 形見分けの品をまとめたりリストアップしておく | 葬儀〜四十九日法要まで |
ゴール④ | 不用品の処分をする | 葬儀や各種手続きが落ち着いてから順次 (特殊清掃が必要な場合は死後すぐに) |
いま元気で健康だからといって、大掛かりな部屋の片付け作業から始めると、万が一の不慮の事故や病気などで継続できなくなった場合、家族は片付け途中の部屋から必要な書類を探すことになってしまいます。
残される家族のために良かれと思って始めたことなのに、かえって負担を大きくしてしまう可能性もあるのです。
そのため、家族の優先度や重要度を踏まえた、段階的なゴールを設けて物品の生前整理をすることが大切です。
それぞれのゴールでやるべきことについて、具体的に説明していきましょう。
2-1-1.モノの生前整理のゴール①:死後すぐに必要になるもの
死後すぐに必要になるものは、主に以下のものです。
通帳 クレジットカード 印鑑 印鑑証明 年金手帳 株式や債券など金融資産に関する書類 保険関係の書類 不動産関係の書類 公共料金の請求書または領収書 債務やローンの契約書類 身分証明書 スマートフォン |
これらは本人死亡による契約解除や停止の手続き、相続において必要になります。死亡が確認されたらまず最初に所在の確認をするものです。
基本的には物理的に存在するものを出してきて整理する作業になるため、早い人であれば1日もかからずに終わるでしょう。
非常に貴重な書類もありますので、空き巣や盗難などに気をつけて分けて管理し、所在は信頼できる家族だけに伝えておきましょう。
また、身分証明書やクレジットカード、スマートフォンなどは生前整理をした後にも使うため、置き場所を決めて伝えておくだけでも安心です。
2-1-2.モノの生前整理のゴール②:価値のあるもの
価値のあるものというと、主に以下のものが挙げられます。
宝飾品 時計 貴金属 カメラ ブランド品 和服や帯 趣味のコレクション 自動車やバイク |
中古市場でもあまり価値の下がらないものや、マニアの間で高値で取引されるものなどを整理します。手放しても良いものは売却し、手元に置きたいものは生前整理時点での時価相場を調べておきます。価値の高いものは相続の対象にもなるため、一覧にしておくと家族も安心です。
作業としては以下のことを行うため、数量や内容にもよりますが数日から2〜3週間はかかるでしょう。
STEP1:状態を確認する
STEP2: おおよその時価相場を調べる
STEP3:一覧を作成する
自分の価値観や、今後の人生を見つめ直すきっかけになることも多い作業です。
これからの人生をどう生きるか、何を実現したいかについて内省しながら進めるため、生前整理において重要な過程のひとつと言えます。
2-1-3.モノの生前整理のゴール③:形見分けの品
家族や親しい友人に、生前の感謝を伝えるための品を選びます。一般的には以下のようなものが多いです。
装身具 文房具 書籍 家具 写真 和服 反物 日記 |
形見分けの品は、高価なものである必要はありません。
自分が愛用していたものを死後に贈り、手元に置いていつでも思い出してもらいます。
贈りたい品の数や内容により、かかる時間や作業もさまざまです。
形見分けは、一般的に目上の人に贈るのは失礼なものとされていましたが、特に親しい間柄であれば、近年では問題ないとされています。
生前整理で形見分けの品を選んでおくメリットは、以下の2点です。
生前整理で形見分けの品を選んでおくメリット |
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ただし、形見分けは受ける側からすると、内容に関わらずどんなものでも受け取りを断ることのできるものです。
事前に直接相手と相談して決めるなど、自分の想いだけでなく、相手の希望や意思を尊重することも大切にして準備したいですね。
2-1-4.モノの生前整理のゴール④:不用品の処分をする
必要なものを選んで保管場所を決めたら、少しずつ身の回り品を処分していきます。主に以下のものを処分します。
衣類 書籍 CD 文房具 家具 食器 調理器具 布団 |
不用品の処分は、以下のような手順で行います。
STEP1:要不要の判断をする
STEP2:分類する
STEP3:使用頻度や数量で再度要不要を判断する
STEP4:物理的に手放す
最後の「物理的に手放す」は、廃棄する以外に、不用品の回収に出したり、フリマやオークションサイトで売却したりと、処分の方法はそれぞれです。
この工程は生前整理においてもっとも肉体的・精神的に負担の大きい部分ですが、一方で生前整理だからこそ捗る部分でもあります。
なぜなら、物品の片付けでもっとも重要な「要不要の判断」の基準が、一般的な片付けよりも明確になるからです。
「死ぬまで使い続けたいか」「死ぬ時まで持っていたいか」という究極的な問いかけをしながら片付けをするため、自分の価値観や嗜好を改めて確認しながら、厳選して整理することができます。
つまり、生前整理における不用品の処分は、家族の物理的な負担を減らす以外に、自分自身の今後の人生を快適に過ごすためのパートナー選びとも言えるのです。
すでにモノの生前整理のゴール①〜③までを終えていることで、残された家族にとって重要度や緊急性の高いものは選び出されています。
言い換えれば、ゴール①〜③を終えて残ったものは、あなた自身が生きている間だけ必要なものであり、死後にはすべて処分してもらって構わないものなのです。
手間のかかる部分ではありますが、すでにゴール③まで終えていることで、安心して取り組むことができます。
2-2.モノの生前整理における注意点
生前整理の目的は「死後の遺族の負担を軽減すること」なので、モノの整理においては、これまでご紹介してきたように残された家族にとっての重要度や緊急性の高いものから手をつけることが大切です。
| モノの生前整理の順番 | 遺族が必要になる時期 |
ゴール① | 死後に必要になるものをまとめておく | 死亡が確認されたらすぐ〜死後2週間まで |
ゴール② | 価値のあるものをまとめたりリストアップしておく | 死亡が確認されたらすぐ〜死後3ヶ月まで |
ゴール③ | 形見分けの品をまとめたりリストアップしておく | 葬儀〜四十九日法要まで |
ゴール④ | 不用品の処分をする | 葬儀や各種手続きが落ち着いてから順次 (特殊清掃が必要な場合は死後すぐに) |
たとえ片付けがすべて終わらなかったとしても、「死後に必要なモノの所在が明らか」で「要不要の判断をしなくて良い」ことだけで、家族は安心して残りの遺品整理をすることができるのです。
もちろん、価値があると思っていた物品の相場が変わったり、形見分けの相手の方が先に亡くなってしまったりと、思わぬ事態が起きることもあります。
作成した一覧などは、定期的に内容を確認し、更新しておくと安心です。
2-3.モノの生前整理にかかる費用
不用品を廃棄するだけでも、細かいところではゴミ袋代や粗大ゴミの回収費用などがかかってきます。
ひとつひとつは大きな額ではなくても、たとえば一軒家をまるごと片付けてゴミ出しをした場合、処分費用だけで数万円から数十万円に上ることもあります。
また、整理するべき物品がとても多いという場合や、体力に不安がある、健康上の理由などで自分一人では整理がつかないという場合は、片付けサービスを利用するのも良いでしょう。
家事代行サービスの会社や掃除会社、引越し業者などが、おおよそ以下のような相場で生前整理のための片付けサービスを設けています。
生前整理サービスの費用相場 | ||
部屋の広さ | 費用目安 | 作業人数目安 |
1Kまたは1R | 30,000円〜80,000円 | 1~2名 |
1DK | 50,000円〜120,000円 | 2~4名 |
2LDK | 120,000円~300,000円 | 3~6名 |
3LDK | 170,000円~500,000円 | 4~8名 |
4LDK以上 | 220,000円〜600,000円 | 4~10名 |
料金の内訳は、どの形態の業者でも主に人件費と廃棄処分にかかる費用です。
部屋の大きさによるおおよその費用目安を紹介しましたが、どれも料金に幅があるのがお分かりいただけるかと思います。
実際にどれくらいかかるかは、以下のことで大きく変わります。
片付けサービスの費用に関わること |
|
特に、処分する物品の量や内容については、素人判断では少なく見積もりがちなため、電話やメールなどで伝えても、実際の作業ではほとんどのケースで相違が出てしまいます。
追加請求のトラブルなどを回避するため、片付けサービスを依頼する場合は、必ず現地調査で見積もりを取ってから作業を依頼するようにしてください。
なお、処分するものが大量にある場合は、以下のような方法を取ることで、多少の手間はかかりますが廃棄処分にかかる費用を抑えることができます。
- 書籍や衣類の買取サービスを利用する
- 着られる衣類を途上国への支援に送る
- フリマサイトやオークションで売却する
- フリーマーケットに出店する
- ガレージセールを行う
どの方法も、あくまでも不用品を手放すためのものなので、収益の見込めるものではありませんが、過程から楽しんで行える方にはおすすめです。
3.カネの生前整理は節税効果も見込める
資産の生前整理の主な目的は、以下の2点が挙げられます。
- 相続争いを引き起こさせない
- 相続税を節税する
実際に資産の生前整理をする際は、税理士や弁護士などの専門家の手を借りて行うのがもっとも確実です。
特に、以下の場合は専門家に相談をして、具体的な対策を生きている間に行いましょう。
資産の生前整理を専門家に相談した方が良いケース |
|
元気で健康なうちに資産の生前整理をしておくと、生前贈与を活用したり相続する資産の形態を見直したりすることで、相続税を抑えることができます。
相続税の節税対策は生きているうちにしか行うことができないため、まさに生前整理ならではの遺族への最後の贈り物になるでしょう。
3-1.カネの生前整理の流れ
資産の生前整理は、以下の手順で行います。
STEP1:資産状況の確認をする
STEP2:法定相続人の把握をする
STEP3:法定相続人ごとの相続分を確認する
STEP4:大まかな相続分を決めておく
STEP5:遺言書を書く
聞きなれない言葉も出てくるため、ステップごとにやるべきことを分かりやすく説明していきましょう。
STEP1:資産状況の確認をする
まずは資産をすべて洗い出します。
- 預貯金
- 保険
- 株や投資信託
- 信用取引
- 不動産
- 借金
資産はあくまでも現時点のものなので、実際に相続する段階では増減することもあります。
しかしそれはいつのことになるのかは分からないため、あくまでも現時点での資産の総額を把握しておきましょう。
STEP2:法定相続人の把握をする
法定相続人とは、民法で定められている「財産を相続する権利のある人」です。
以下の人が法定相続人に当たります。
常に相続人 | 配偶者 |
第一順位 | 本人の子ども(子どもが死亡していて孫がいる場合は本人の孫) |
第二順位 | 本人の父母(父母が死亡していて祖父母がいる場合は本人の祖父母) |
第三順位 | 本人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡していて甥姪がいる場合は本人の甥姪) |
第二順位や第三順位の法定相続人は、順位の高い者がいなかった場合にのみ相続を受けられます。
現在の自分の法定相続人に当たる人が、どんな関係で何人いるのかを把握しておきましょう。
STEP3:法定相続人ごとの相続分を確認する
相続人が複数いる場合は、以下のように遺産が分けられます。
相続人 | 配偶者の相続分 | 配偶者以外の相続分 |
配偶者と本人の子ども | 2分の1 | 子ども全員で2分の1 |
配偶者と本人の父母 | 3分の2 | 父母両方で3分の1 |
配偶者と本人の兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹全員で4分の1 |
なお、法定相続人がひとりもいなく、遺言書による遺産の扱いについての指示がない場合は、遺産はすべて国庫に帰属します。
STEP4:大まかな相続分を決めておく
相続する資産の総額と相続人ごとの相続分が出たら、その金額をそれぞれに「なにで」相続するかの内訳を決めます。
たとえば以下のように決めておきます。
相続分の内訳の決め方の例 |
|
「いくらを」だけ決めたのでは、死後にどの資産をどのように分割するべきか、遺族の話し合いが複雑になってしまうからです。
なお、相続分は民法で定められているものですが、「必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならない」というものではありません。例にあるように、遺言書によって別途定めることで、団体や相続人以外の他人にも遺贈することができます。
ただしその場合は、もともと受け取れるはずだった相続分を受け取ることができなくなった「配偶者」「子ども」「父母」は、遺贈を受けた相手に対して「遺留分侵害額請求」を起こすことができます。
遺留分侵害額請求となると、裁判所の判断を仰ぐことになるため、せっかく遺言書を残しても遺族に相続争いを起こさせてしまいます。
上記の表を参考に、それぞれの相続額を大まかに把握しておき、遺贈したい相手がいる場合は、事前に家族に相談したり、それぞれの相続額を大きく減らさないように配慮しましょう。
STEP5:遺言書を書く
大まかな相続分を決めたら、遺言書を書き記しておきましょう。
遺言書には、以下の4種類があります。
種類 | 特徴 |
公正証書遺言書 | 遺言者が公証人の前で述べた遺言内容を、公証役場で公証人が作成する |
自筆証書遺言書 (本人保管) | 本人が手書き・捺印して保管する |
自筆証書遺言書 (法務局保管) | 所定の様式に従い、本人が手書き・捺印したものを法務局で保管する |
秘密証書遺言書 | 遺言者本人が遺言書を書き、内容については秘密にしながら、存在についてだけ公証および証人に証明してもらう |
いずれの方法であっても、法的な効力は変わりません。
ただし、内容に法的な誤りがあったり不備があったりする場合には、遺言書そのものは無効にはならないものの、遺族で相続の分割し直しが起こる場合があります。
そうならないためにも、法律や税務の専門家に相談して、相続の相談から遺言書の作成まで済ませておけば安心です。
3-2.カネの生前整理における注意点
資産の生前整理は、税理士や弁護士、司法書士などの専門家の手を借りて行います。
しかし実際のところ、専門家といってもそれぞれに得意不得意があるため、だれに相談すべきかについては、おおよそ以下の一覧を参考にしてください。
生前整理でやりたいこと | 相談する相手 |
| 税理士 |
| 弁護士 |
| 司法書士 |
それぞれの専門家が、上記以外の処理は絶対にできないものではありませんが、同じようなケースを多数扱っているため、手続きがスムーズに行われて抜け漏れの心配がありません。
自分が生前整理で何を行いたいかの目標を明確にし、正しく処理できる専門家を頼りましょう。
3-3.カネの生前整理にかかる費用
生前整理にかかる費用は、主に以下のふたつがかかります。
- 専門家への相談費用
- 遺言書の作成費用
専門家に資産の把握から相続内容まで相談する場合は、相続する資産の総額や内容、相続相手の人数によって報酬は大きく異なります。
生前整理業務に関する報酬についての法的な規定もないため、個別に契約を交わして決めることになります。
おおよその目安としては、相続財産の0.5%〜1%程度であれば相場と言えます。
相続財産の総額 | 報酬の目安 |
〜5,000万円 | 25万円〜50万円 |
5,000万円〜7,000万円 | 25万円〜70万円 |
7,000万円〜1億円 | 35万円〜100万円 |
1億円〜3億円 | 50万円〜300万円 |
3億円〜5億円 | 150万円〜500万円 |
5億円〜 | 個別に問い合わせ |
また、相続する内容はほぼ決定していて、遺言書の内容についての確認や相談から作成までを専門家に依頼した場合、費用相場は以下のようになります。
司法書士 | 7~10万円 |
税理士 | 7~10万円 |
弁護士 | 20~30万円 |
どの士業も、依頼すれば遺言書の作成から証人、死後の遺言執行者まで引き受けてくれます。
弁護士だけ料金が高いのは、万が一裁判などになった際に、代理人として法廷に立つことができるという理由によるものです。
裁判沙汰となって法廷に立つというのは、だれであれ気分の良いものではありません。どうしても揉めそうな相続人がいる場合は、最初から弁護士を頼って相談しておいた方が良いでしょう。
4.ヒトの生前整理は電話番号が基本
交友のある友人や関係機関の連絡先をまとめて一覧にし、万が一の場合に自分の死を伝えて欲しい相手を家族に残します。
特に、携帯電話にすべての連絡先が入っている場合、携帯そのものにロックがかかっていると、相手からの連絡がなければ訃報を伝えることはできないのです。
携帯電話にかかっているロックは、遺族が死亡届などを提出して携帯電話会社に届けを出せば暗証番号を教えてもらうことができますが、書類の往復だけでも数日かかってしまいます。
連絡先の生前整理をして一覧の存在を家族に伝えておくことで、家族にとってもあなたの友人にとっても、スムーズに報せを届けることができます。
4-1.ヒトの生前整理の流れ
連絡先の生前整理は、以下の手順で作業します。
STEP1:連絡先を確認する
STEP2:一覧を作成する
それぞれのステップを詳しく説明していきましょう。
STEP1:連絡先を確認する
一覧にする連絡先は、できれば電話番号でまとめておきます。
以前に聞いていた電話番号がいまも変わらず繋がるかについても、確認しておく必要があります。
知っている連絡先がメールやSNSだけだという場合も、できれば電話番号を聞いて控えておきましょう。
開封までに時間がかかることもありますし、書き写したり打ち込んだりする際に間違える可能性が大きいからです。
電話番号であれば、伝えたい相手に直接、葬儀が決まってすぐに連絡をすることができます。
STEP2:一覧を作成する
一覧の作成は、手書きでもパソコン等で入力してもどちらでも良いですが、パソコンで作成する場合は、紙にも出力しておきましょう。
一覧がパソコンに入っているだけの状態では、遺族がそのパソコンのパスワードを知らないと、せっかく作成した一覧を見ることができなかったり、見るとしても時間が経ってからになる場合があるからです。
作成した一覧は家族に渡しても良いですし、エンディングノートに書いておき、死後に見てもらうように伝えておいても良いでしょう。
4-2.ヒトの生前整理における注意点
連絡先一覧の作成をする際は、手書きの場合は書き写しに、入力の場合は打ち込みミスに気をつけてください。
また、意外に忘れがちなのが、母校や以前の勤め先などです。
死亡の連絡をしないと、広報誌や各種案内などが死後もいつまでも変わらず届き続ける場合があります。
また、企業によっては退職後でも特別弔慰金などが遺族に支払われる場合がありますので、連絡をすることで遺族を少しだけ助けることができるのです。
5.データの生前整理は外付けメモリを活用
使用しているパソコンやネットバンク、オンライン会員などのIDやパスワードといったデジタルデータの生前整理は、もっとも細かい手間のかかるものと言えます。
なぜなら、オンラインで契約したものは、手元に紙の契約書などがないことが多く、いつ・どこで・何を契約したかについて、本人自身も思い出せないケースが多いからです。
パスワードを忘れていたり、長期間更新していなかったりすれば、再設定をするなどひとつひとつ確認する手間が生じます。
また、物品の定期購入などは実際に物が届くので気がつきやすいものですが、映画や音楽といったオンラインの月額会員などは、利用しないまま月額を払い続けているケースもあります。
デジタルデータの生前整理は、家族のためでもある一方で、現在の自分自身にとっても、やっておいた方が良い作業と言えるでしょう。
5-1.データの生前整理の流れ
デジタルデータの生前整理は、以下の手順で行います。
STEP1:オンライン契約しているものを洗い出す
STEP2:それぞれのIDとパスワードを確認する
STEP3:一覧を作成する
STEP4:外付けメモリに一覧を保存する
それぞれのステップで行うことをわかりやすく説明していきましょう。
STEP1:オンライン契約しているものを洗い出す
インターネット上でIDやパスワードの入力を求められるものを洗い出します。
利用頻度の高いものはすぐに思い出せますが、以前と比べてあまり利用しなくなったものや、契約したきりのものについては、なかなか思い出すことができないでしょう。
支払いの発生がないものならそのままにしておいても構いませんが、中には利用していないのに支払い続けているものもあるかもしれません。
クレジットカードの明細や銀行の引き落とし履歴を確認して、不明な支払いがないかチェックしながら行ってください。
STEP2:それぞれのIDとパスワードを確認する
IDやパスワードを忘れていないか、それぞれ確認します。
利用頻度の低いものについては、パスワードの変更を求められる場合があります。
契約を続けるのであれば新たなパスワードを設定しますが、今後利用しないと思われるものは、解約してしまっても良いでしょう。
STEP3:一覧を作成する
利用しているサイトのURLと、登録しているID・パスワードを一覧にします。
一覧の作成は、手書きではなくパソコンで作成した方が便利です。
手書きでは書き写す際に間違いが生じやすく、「0(ゼロ)」と「O(大文字のオー)」、「I(大文字のアイ)」と「l(小文字のエル)」など、区別しにくいものもあるからです。
パソコンで作成してパソコン上で開ける状態であれば、契約しているもののURLに直接リンクできたり、IDやパスワードもパソコン上でコピーして貼り付けることができて便利です。
STEP4:外付けメモリに一覧を保存する
作成した一覧は、万が一のウィルス侵入やハッキングによる流出を避けるため、USBなどの外付けメモリにだけ保存して管理しておきましょう。
死後に家族が分かるよう、外付けメモリの存在と内容を伝えておくと安心です。
また、大元となるスマホやパソコンそのもののロック解除のためのパスワードについても、死後に家族に見てもらいたいものとして、この一覧または遺言書やエンディングノートなどに記しておくと良いでしょう。
5-2.データの生前整理における注意点
スマホアプリの中には、通常のログインに指紋や顔認識などの生体認証を活用しているものがあります。
死後に自分以外の家族がログインできるよう、生体認証以外のパスワードでもログインができるように設定しておきましょう。
6.生前整理のメリット
生前整理のメリットは、大きく以下の3つが挙げられます。
生前整理の死後の3つのメリット |
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いずれも「立つ鳥跡を濁さず」という、日本人らしい終焉を飾る美意識と言えるでしょう。
しかし実は、生前整理をすることで、死後だけではなくあなた自身が生きているいま現在においても、以下のようなメリットがあるのです。
生前整理の生前におけるの3つのメリット | |
時間的余裕 | 必要な物品やデータを探し出すためにかける時間がなくなる |
経済的余裕 | 今後の人生に必要なものの判断がつきやすくなり、無駄遣いや不要な投資がなくなる |
精神的余裕 | 「いつ何が起きても大丈夫」という具体的な安心感の下で暮らすことができる |
生前整理をしておけば、病気や事故による怪我などが起きた場合にも、適用される保険の手続きをすぐに済ませることができたり、入院に必要なものを家族が見つけやすかったりと、「やっておいてよかった」という場面が多くなります。
生前整理は家族にとってはもちろん、これからを生きるあなたにとっても、大きく役立つものになるでしょう。
7.生前整理のデメリット
生前整理のデメリットと言うと、以下の2点が挙げられます。
- 労力がかかる
- 費用がかかる
とはいえ、どちらも生前整理でなくても、何かしようと思えば多少なりともかかってくるものです。
自分で自分の身の回りや資産を整理すれば、自分の労力や費用がかかります。
死後に家族にすべてを任せてしまえば、家族の労力や費用がかかります。
生前整理そのものに興味を持ち、この記事をお読みの方であれば、おそらくはこのデメリットは元から想定済みなのかもしれませんね。
8.生前整理が大変だと感じたら重要なところから始めましょう
生前整理でやるべきことについて、4つの事柄を挙げました。
しかし、物品の整理ひとつ取ってみても、実際に行うには労力のかかることですし、資産の整理を始めたところで、思いもよらなかった事態が起きる場合もあるでしょう。
すべてを一気に片付けることは、とても手間のかかるものですし、ストレスもかかります。
生前整理の目的は「死後の遺族の負担を軽減すること」ですが、同じようにいまを生きるあなた自身の健康と生活も重要です。
無理をせず、自分にとっての優先順位を見定めて、できるところから少しずつ始めて行きましょう。
エンディングノートと呼ばれる、終活に必要な事項を網羅的にまとめることのできるノートを活用すると、優先順位を決めたり、進捗状況を俯瞰できたりするのでおすすめです。
9.元気で健康なうちに手配しておくと安心なもの
生前整理をすると、自分のこれからの人生や死の迎え方について、いまよりもさらに具体的にイメージが湧くようになります。
ここでは、生前整理するべき4つのことを終えた後で、手配しておくとさらに安心できる以下のことについて解説します。
- 葬儀の手配
- 相続手続きの手配
- 介護や福祉の手配
それぞれどんなことをするのか、詳しく見ていきましょう。
9-1.葬儀の手配
実は葬儀社(葬儀屋・葬祭業)選びは、死亡が確認された病院などの紹介で決める場合がほとんどです。
遺体を病院などから家に運ぶ時点から葬儀社の手が必要になるため、死亡が確認されてすぐの落ち着かない状態のまま、比較も選択もできないまま決定されるというのが実情です。
やり直すことのできないものなので、後から「ああしてあげればよかった」「こんなこともできたのではないか」と、後悔とまではいかなくても、見送る側の家族からすると、慌ただしいまま十分な検討もできずに終わってしまいがちなものなのです。
事前に自分で手配しておけば、いざという時にも家族が困らないだけでなく、生前のあなたが決めたあなたらしいお見送りができることで、寂しい気持ちも少しだけ癒されることでしょう。
■葬儀プランを選ぶ
どんなお葬式を望んでいるのか、来て欲しい人はだれなのかを考えて、生きている間に自分で準備して家族に伝えておくと安心です。
葬儀にかかる費用をどこから捻出するのかも、明らかにしておくと良いでしょう。
実際の葬儀プランまで決めておかない場合でも、自分の宗教の有無を明らかにしておいたり、喪主や施主をお願いしたい人と、きちんと話をしておくことだけでも大切です。
◼︎納骨方法を選ぶ
納骨には以下の選択肢があります。
- 先祖のお墓に入る
- お墓を新設する
- お墓には入らない
お墓を新設する場合は、「自分がどんなところで眠りたいか」といったお墓のスタイルや周辺環境だけでなく、「お墓参りに来やすいか」といった遺族にとっての立地も考えて場所を選ぶと良いでしょう。
「お墓には入らない」という選択肢には、墓石の代わりに樹木を目印にする「樹木葬」や、納骨をせず海洋や宇宙に「散骨」といった、より自然に還る形があります。
散骨を希望する場合は、残された家族がその後の供養をどのようにすればいいのかについても、事前に話し合っておきましょう。
◼︎遺影写真の選定や撮影
人生のエンディングにふさわしいと思える写真を、あらかじめ用意しておくことができます。
遺影写真の選定は、通常、限られた時間で遺族が遺品をひっくり返したりそれぞれで持っているデータを持ち寄ったりして行われなければならないものです。
そのため、葬儀が終わった後で「こっちの写真の方がよかったね」という後悔も、少なくなかったりします。
プロに綺麗に撮影してもらった写真を事前に用意しておくことで、参列者への最期のご挨拶を美しい姿ですることができます。
9-2.相続手続きの代行手配
資産の生前整理をしたことで、相続トラブルについてはおおよそ回避できる目算が立ちます。
しかし、実際に相続をする際には、とても面倒で手間のかかる手続きが必要になります。
相続手続きには、税務署、法務局、金融機関など相手先が複数あるうえ、期限が設けられていることもあります。
初めて見る書類を集めて記入し、指定された箇所に足を運んで行う手続きは、知識のない素人にはかなり労力のかかる作業なのです。
遺言状の作成を相談した司法書士・税理士・弁護士などの専門家は、相続手続きの代行も受けてくれることがほとんどです。
事前に依頼しておくか、相続手続きの代行を依頼する旨を遺言状に記載しておくことで、相続手続きにかかる家族の負担を、物理的に減らすことができるでしょう。
9-3.人のお世話が必要になった時の手配
病気による入院や、介護が必要になった場合に利用する施設を選んだり、自分で判断ができなくなった際の後見人などは、元気で健康なうちに決めておくと安心です。
◼︎介護施設や高齢者住宅の手配
自分がどんな生活を送りたいかを見据えて、介護施設や高齢者住宅、サービスなどをあらかじめ選んでおきます。
介護施設やサービスは、家族にかかる介護の精神的・肉体的負担を減らすことができるのです。
介護施設や高齢者住宅選びでは、送迎や面会をする家族のことを考えた立地も重要なポイントです。
高齢者住宅への住み替えや施設への入所などにおいては、元気ないまだけの視点だけでなく「健康でなくなるとどんなことが不便になるのか」の視点を持って、実際に見学をしてみましょう。
また、以下のグラフをご覧いただくと分かるように、介護施設や高齢者住宅が終の住処となるケースは、年々増加しているのです。
※「介護施設等」は介護医療院・介護老人保健施設、介護医療院、老人ホームの総計
参考:厚生労働省 厚生統計要覧(令和2年度)第1編人口・世帯第2章人口動態
介護施設や高齢者住宅は、そこで人生の終焉を迎える可能性が高いからこそ、できるだけ自分自身で納得のいく場所を選びたいものですね。
◼︎成年後見人を任意で選ぶ
成年後見人制度とは、認知症などにより財産管理能力を喪失した人の財産を、正しく保護するための制度です。
裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と、本人の判断能力があるうちに自ら後見人を選ぶ「任意後見」があります。
未成年者や過去に社会的に問題を起こしたことがあるという人以外、後見人はだれでもなることができます。
血縁関係でなくとも、各種士業や法人なども後見人として選任することができるため、資産の生前整理で相談した専門家に、後見人について合わせて依頼するのも良いでしょう。
10.生前整理は思い立ったいまが始めどき
生前整理は、70歳初め頃までに始めることをおすすめします。
生前整理をしようと思うきっかけは、一般的には子どもが独立したタイミングや定年後など、時間や空間に余裕ができた時に、荷物の整理や住み替えなどと合わせて考える人が多いようです。
その一方で、近年は20代や30代でも、独身であっても生前整理を始める人が増えてきています。
生前整理そのものはいつ始めても良いものですが、実は「遅くともこの年齢までには開始しておくべき」という限界年齢があります。
それは、肉体的にも精神的にも元気な「健康寿命」に関係しています。
「健康寿命」の年齢の平均は、おおよそ以下の通りです。
| 男性 | 女性 |
平均寿命 | 81.41歳 | 87.45歳 |
健康寿命 | 72.68歳 | 75.38歳 |
ご覧いただくと分かるように、元気で健康でいられる年齢は、男女ともそれぞれの平均寿命よりもおよそ9年〜12年も短いのです。
これまで解説してきたように、生前整理は肉体的にも精神的にもかなりの労力が必要になります。
病気にかかって体が思うように動かなくなったり、焦りを感じたりしながら生前整理をするよりも、健康で体力にも気持ちにも余裕があるうちに進めるほうが、作業をスムーズに行うことができるでしょう。
そして早く始めるほど、これからの人生も有意義に過ごすことができるのです。
生前整理に興味を持ち始めたいまこそが、何よりのベストタイミングと言えます。
生前整理や終活について、同じ世代の人たちと楽しく情報交換してみましょう!
まとめ
今回は、生前整理について、やるべきことと手順について解説してきました。
生前整理をするべきものは、以下の4点です。
生前整理するべき4つのこと |
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それぞれの生前整理で押さえておくポイントは以下の通りです。
生前整理で押さえておくべきポイント | |
物品の生前整理 | 遺族にとっての優先度と緊急性の高い順から手を付ける |
資産の生前整理 | 生前整理の目的を明確にしてそれぞれの専門家に相談をする |
連絡先の生前整理 | 電話番号で一覧を作成する |
デジタル情報の生前整理 | 作成した一覧はパソコンの中には置かない |
生前整理のメリットとデメリットは、以下の通りです。
生前整理のメリットとデメリット | |
メリット | デメリット |
【死後】
【生前】
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この記事が、死後の家族の負担を軽くするだけでなく、これからを生きるあなたのためのお役に立てれば幸いです。
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