
「夫婦二人、これから年金だけで暮らしていけるのか?」
「年金だけでは暮らしていけない……ってよく聞くけど本当なの?」
老後のセーフティーネットの代表である年金制度ですが、2000年過ぎから年金未納問題をはじめとしてさまざまな年金の関する問題が噴出し、最近では、年金暮らしを心配する人が非常に多くなっています。
さらに、日本人の平均寿命がどんどん伸びて、90歳を超えるような長寿のシニアが増えていることもあり、ますます年金暮らしを危惧するシニアが増える傾向が続いています。
そこで、安心して年金暮らしをスタートするために
・年金暮らしのお金の現実
・年金暮らしのシミュレーションをして、未来のお金予測をする
・年金暮らし上手を目指して、賢い節約を行うための4つのコツ
をご紹介します。
やみくもに年金生活を不安がっていても仕方がありません。まずは、自分の資産の現状をしっかり把握して将来の対策を立てましょう。
目次
1.年金暮らしのお金の現実
まず、すでに年金暮らしをしている方たちの「年金暮らし」の状況を知っておきましょう。結論からお伝えすると、最低限の通常の生活を送る分には年金だけで暮らしていくことは可能だと考えることができます。
ただし、当然ですが世帯の状況によって年金だけで生活できるかできないかが大きく異なります。それぞれの状況に合わせた対策をすべきではありますが、まずはここで世の中の相場とも言える年金事情を解説していきます。
1-1.年金支給額の平均は1人あたり月額15万円程度
自分が将来もらえる年金額を知っていますか。厚生労働省が発表した「厚生年金保険・国民年金事業年報(平成29年度)」によると、
男性の平均支給額:165,668円
女性の平均支給額:103,026円
全体の平均支給額:147,051円
となっています。
厚生労働省:厚生年金保険・国民年金事業年報(平成29年度)
男女間では約6万円の差が生じていますが、結婚により離職して専業主婦になった女性の割合が多い世代であることが原因と言われています。
国民年金についてはどうでしょうか。
国民年金(老齢基礎年金)の平均支給月額:55,615円
*40年間満額支払いの場合、支給額は64,941円
となっています。
自分がもらえる年金額をはっきりと知りたいのであれば、日本年金機構の「ねんきんネット」で試算をしてみましょう。(利用するには、「ねんきんネット」にユーザー登録する必要があります)
日本年金機構 年金見込額の試算
1-2.年金暮らし世帯の支出は夫婦で月額26万円程度
年金暮らしをしている世帯の支出はどれくらいになるのでしょうか。
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2018年(平成30年)平均結果の概要」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヶ月の支出は、
消費支出:235,615円
非消費支出(社会保険料や税金等):29,092円
合計:264,707円
となっています。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2018年(平成30年)平均結果の概要」
ここから、
標準的な老後の生活を送るための費用は、夫婦で月額26万円程度かかる
ということがわかります。
1人あたり約15万円の年金支給に対して、夫婦(2人)で月額26万円の支出ということは、普通に生活していく分には大きな支障がないと考えることができます。ただし、どのような老後の生活を送りたいのかという希望によって老後に必要となる金額は変動します。年金等の社会保障給付だけで生活していくには今から資金を貯めておかないとまずいかも?といった判断をする目安としてください。
1-3.年金暮らしに対するよくある疑問とその答え
もらえる年金額と毎月必要となる生活費がわかったところで、多くの人が持ちやすい年金暮らしに対する疑問に答えていきます。
Q:年金暮らしの生活レベルはどれくらい?
A:持ち家か賃貸暮らしか、さらには、持ち家の住宅ローンを払い終えているかどうか、などの条件で大きく変わっていきます。
退職金がどれくらいあるのか、その他の資産はあるのか、なども関係してきます。定年退職後に年金をもらいつつ働けば、年金暮らしの生活レベルはかなり変わるでしょう。
Q:赤字になる人と、そうでない人は何が違うのか?
A:1-2.でご紹介した通り、老後の夫婦2人の生活費は月額で26万円程度かかります。この金額はあくまでも平均値ですから、それよりもたくさんお金を使うような生活をすれば赤字になるのは当然です。
ここで、老後の年金暮らしが赤字になりやすい人の傾向をご紹介します。
・住宅ローンの返済が終わっていない
住宅ローンの返済が65歳以降も続く場合は、年金暮らしが始まってからもローンの返済をしていかなければなりません。ローンの返済額にもよりますが、毎月赤字を出してしまうようだと、最悪老後破産してしまうこともあります。
・晩婚・晩産で教育費が払い終えていない
晩婚・晩産が増えていますが、リタイアした後まで教育費がかかる場合には、年金暮らしは苦しくなります。住宅ローン同様、教育ローンなどを利用している場合には、注意が必要です。
・子供の自立が遅い(自立できない)
晩婚・晩産も影響していますが、学校を卒業した子供が自立をしないで、親が生活費を負担し続けるようなケースは、年金暮らしが赤字になりやすい傾向があります。
子供が家に引きこもってしまった場合などは、子供が自力で収入を得ることがないため、家計に重い負担がかかります。
・高収入なのに貯蓄がほとんどない
現役時代に収入が高かった場合、支出も比例して高い傾向があります。計画性なく浪費をし続けて貯蓄がほとんどないまま年金暮らしに突入してしまい、昔のままの贅沢な暮らしぶりを続けていると、すぐに赤字に転落します。
・夫婦仲が悪い(お金について話し合いをしない)
夫婦仲が悪く、将来のお金についてしっかり話し合ったり計画を立てたりしていない場合は、老後の年金暮らしも赤字になりやすくなります。
夫婦の足並みが揃っていないので、一方に浪費傾向があったり、夫婦仲が悪い不満やストレスをお金を使うことで発散したりする悪習慣があると、貯蓄もあっという間になくなってしまいます。
Q:年金だけで生活できないというウワサは本当なのか?
A:年金暮らしに入る前にしっかりと資金計画を立てていれば、老後破産を食い止めることは可能です。まずは、自分がもらえる年金額や現在の資産状況、どれくらい生活費がかかりそうなのか、など明確にしておき、赤字になりそうな見込みであれば、早急に対策を考えてください。
なにも準備をせず、無計画なままで年金生活に突入してしまうと、赤字に転落しやすくなり、老後破産を迎えることにもなってしまうので、今からしっかりと資金計画を立てておくようにしてください。
2.【老後のお金予測】年金暮らしをシミュレーションしてみよう
ここで、年金暮らしのシミュレーションをしてみましょう。おおよそでも、将来の年金暮らしについてお金の予測ができれば、対策を考えることもできるからです。
ネットで簡単に老後のお金のシミュレーションができます。ぜひ以下のサイトで、自分の場合の年金生活について調べてみましょう。
こちらのサイトは、シンプルに
【収入5項目】
・公的年金
・最終就職などによる収入
・配偶者の収入
・退職金など
・その他収入
【支出5項目】
・必要な生活費
・お子さんの結婚祝い、リフォーム、旅行などのライフイベント資金
・ローン残高
・ローン返済額
計10項目を入力すれば計算ができます。項目によっては、ヒントになる平均額などのワンポイントアドバイスがあるので、それを参考にしましょう。
こちらは、9つの質問に答えていくと、最終的に、棒グラフと折れ線グラフで予想される将来のお金の状況を見ることができます。また、ファイナンシャル・プランナーから注意ポイントのアドバイスがもらえます。年金暮らしはまだまだ先、と思っている若い方でも利用できます。
3.賢く節約して安心!年金暮らし上手になるための4つのコツ
今の日本の年金制度では、よほどの資産家でない限り、《年金暮らしは安泰》と言い切ることは難しいのが現状です。さらに、平均寿命も年々伸びており、90歳100歳まで長生きすることが普通になってきているので、老後の資金計画は、昔よりも期間を長めに考えておかないといけない時代になっています。
そこで、上手な年金暮らしのために、賢い節約のコツを4つご紹介します。
・一番最初に見直すのは大きい出費/住宅ローン・生命保険・自動車維持費
・携帯電話・スマートフォンの通信費を見直す
・娯楽費は年間のレジャー計画をしっかり立てておく
・大げさな儲け話や投資の勧誘には用心する
しっかり実践して、安心して年金暮らしができるように対策を立てましょう。
3-1.一番最初に見直すのは大きい出費/住宅ローン・生命保険・自動車維持費
まず最初にするのは大きな出費の見直しです。チマチマと小さい金額を節約しても長い年金暮らしにはそれほど影響がありませんが、まず大きな出費を見直して、大きな額を削減することができれば、家計の負担は軽くなります。
多くの家庭で大きな出費として家計の負担となっているのは、
・住宅ローン
・生命保険
・自動車維持費
主にこの3つです。この3つにかかる費用負担額を洗い出し、削減できないか考えましょう。特に住宅ローンの返済は滞ってしまった場合、破産するだけでなく、家が競売にかけられてしまう場合もありますので、充分に検討を行うようにして早めに完済させてください。場合によっては、お金のプロであるファイナンシャル・プランナーに相談してみることも考えましょう。
【住宅ローン】
・いつまでに完済できるのか確認する
・早期返済・繰上げ返済ができないか考える
・ローン返済がかなり苦しいのであれば家の売却も考える(売却後は賃貸生活)
【生命保険】
・現役時代に入った生命保険が老後に本当に必要なのかチェックする
・必要なものだけ残して不要な生命保険は解約する
【自動車維持費】
・ローンが残っているのであれば、いつまでに完済できるか、早期完済できないか調べる
・本当に自動車は必要なのか確認する(自動車以外の移動手段とのコストを比べてみる)
・維持費がかからない車種への買い替えを検討する
・任意保険料金の見直し
・駐車場等にかかるコストの見直し
・維持費が大変なら車の売却も考える
3-2.携帯電話・スマートフォンの通信費を見直す
住宅ローンや車の維持費などに比べれば小さいですが、携帯電話やスマートフォンの通信費も見直せば、年間でかなり大きな額の節約ができます。
今は、ほとんどの人がスマートフォンを所持している時代ですが、その機能をフル活用している人はあまりいません。もし、通話とショートメール程度しか利用しないのであれば、携帯電話に買い替えてみてはいかがでしょうか。
docomoのらくらくホンであれば、月額利用料金は最低1,200円から利用できます。(ドコモケータイの場合)
スマートフォンも利用料金が安い格安スマホに乗り換えるなどすれば、月額で4,000円〜5,000円程度、年間にすれば、48,000円〜60,000円程度の節約になります。
3-3.娯楽費は年間のレジャー計画をしっかり立てておく
娯楽費は削りすぎても空しいものです。レジャーを思いっきり楽しむためにも、しっかりと年間のレジャー計画をあらかじめ立てておくようにしましょう。年金暮らしを一番不安にさせてしまうことは、無計画にお金を使うことだからです。
旅行好きな夫婦であれば、3年、5年といった長いスパンで計画を立てておくことをおすすめします。定期的に海外旅行をするといった大きな目標があれば、ムダ遣いも減り、次の旅行までにコツコツ節約・貯金に励むことも苦ではなくなります。
心の余裕を保つためにもレジャーは必要ですから、計画的に行いましょう。
3-4.大げさな儲け話や投資の勧誘には用心する
テレビのワイドショー番組では「年金だけで生活できない」などと不安を煽るようなことを言う場合もありますが、それを真に受けて、怪しい儲け話や投資の勧誘に乗らないように注意してください。
ここまでご紹介した通り、ぜいたく三昧の生活が希望であれば、年金だけの生活ではお金が足りなくなってしまうでしょう。しかし、ある程度節度を持って普通の生活をしていくのであれば、生活レベルを大きく落とさずに暮らしていくことは不可能ではありません。
資金計画をしっかりと行えば、夫婦でときどき旅行に出かける程度の余裕を出すことは可能です。
お年寄りを狙った詐欺も増えていますから、しっかりと用心をするようにしてください。
4.まとめ
将来の年金暮らしに不安を持っている人は、まず現状をしっかり把握しておきましょう。
年金暮らしのお金の現実を復習しておきましょう。
【厚生年金の支給額(平成29年度)】
男性の平均支給額:165,668円
女性の平均支給額:103,026円
全体の平均支給額:147,051円
国民年金(老齢基礎年金)の平均支給月額:55,615円(平成29年度)
*40年間満額支払いの場合、支給額は64,941円
そして、
標準的な老後の生活を送るための費用は夫婦で月額26万円程度
となっています。
まずは、シミュレーションサイトなどで、大まかに将来のお金の状況を把握し、年金暮らしに突入する前に、しっかりと将来の資金計画を立てておくようにしましょう。
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