定年後の住宅ローン返済よくある問題5つと老後破綻回避法3つ

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定年後は、例え再雇用があっても年収が減少しますので、住宅ローンが残っている場合には、現役時代とは違った支払いプランを考えておく必要があります。しかし、あれこれ老後の返済プランを考えても

  • 退職金はどの程度まで使ってよいのか
  • 再雇用すれば問題は解決するのか
  • 今のままの支払い方法で大丈夫なのか
  • 高齢になっても年金だけで支払いが続けられるのか

など、定年後の住宅ローンに、これからどのように対処すればよいのかわからずにお困りではないでしょうか。

そこで今回は、定年後の住宅ローン返済に関して以下のようにまとめました。

  1. 定年後の住宅ローン返済5大パターンとメリットデメリット
  2. よくある定年後の住宅ローンに関する5つの問題と対処法
  3. 定年後の住宅ローン問題をできる限り回避する方法
  4. 定年後の住宅ローンで注意すべき3つのこと

最後までお読みいただければ、定年後の住宅ローン支払いに対する漠然とした不安が解消し、将来の生活不安となる要因を取りのぞくために、「今から」何をすべきかがわかるようになります。


1.定年後の住宅ローン返済5大パターンとそれぞれのメリットデメリット

本章では、定年後に住宅ローン返済をしていくパターンを5つにわけて、それぞれのメリットとデメリットを解説しています。

パターン1 今まで通りに返済
パターン2 一部繰り上げ返済
パターン3 全額繰り上げ返済
パターン4 住宅ローンの借り換え
パターン5 住み替えローン

どの方法であっても、完済または限りなく残債が少ない状況になるのが理想ですが、ご自身の今とこれからの経済状況に合った、無理のない方法を選択していきましょう。

1-1.パターン1 今まで通りに返済

定年後も在職中と同様に、今まで通りの金額を返済し続ける方法です。前提条件として、以下の2条件のうち、最低1つは必要です。

①定年後に再雇用がある
再雇用をすれば、多少の年収減額があっても、次の定年タイミングまでは、住宅ローン返済が進みます。再雇用先を選ぶ時には、残りのローン期間と再雇用期間とのバランスをよく考えておく必要があります。

②預貯金にかなりの余裕がある
預貯金にかなりの余裕があれば、再雇用の有無に関わらず、毎月の返済が続けられます。

定年後の住宅ローン

条件が揃わない状態で、今まで通りの金額を支払い続けるのは、将来の老後生活に影を落とす可能性があります。今まで通りの返済を続ける期間を設けつつ、2章を参考に、より負担の少ない返済方法へとシフトすることをおすすめします。

  • 今まで通りに返済を続けるメリット
    今まで通りの返済を続けていれば、ローンを組んだ当初の返済計画通りに返済が進んでいきます。必要となる金額があらかじめわかっているため、年間・月間収支の計画も立てやすくなります。

    定年後、再雇用での減収があったとしても、年間収入が年間ローン総支払額を上回っていれば、返済は今まで通り続けられます。

    実質的には、子育ても終わり、学費負担もなくなり、生活費も半分以下に収まっているケースが多いため、減収をしても再雇用をすれば支払いを続けることができます。

  • 今まで通りに返済を続けるデメリット
    現役就業中に組んだローンのため、再雇用時の年収から見ると、支払額負担を重く感じることがあります。(再雇用の条件によります)

    大幅に減収している場合は、ローン支払い額に変更がないと、生活費に使える金額が減ることがあるため、完済まではとてもシンプルな暮らしを余儀なくされることがあります。

    また、長期間ずっと同じ金利で支払いをしていますので、現行の同内容の金利よりも高い金利設定のままである可能性もありますので、確認の上、大きな金利差がある場合には、借り換えを検討してみるのも良いでしょう。

1-2.パターン2 一部繰り上げ返済

一部繰り上げ返済とは、資金のゆとりがあるときに、通常の返済額に、ある程度まとまった金額を上乗せして支払う方法です。繰り上げ返済方法には「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。

<期間短縮型>
期間短縮型は、毎月の返済額は今までと変わりませんが、返済期間が短縮されます。元金が減るのと同時に、短くした返済期間中に支払う予定だった利息分も減ります。返済期間が短くなるため、年金生活開始前にローンを終えたい方に向いています。

<返済額軽減型>
返済額軽減型は、返済期間は変更せず、月額の支払い額が減ります。返済総額が減った分の利息分も減ります。完済までの全期間中、毎月の返済額を確保する必要がありますが、家計を安定させるのに効果的です。

定年後の住宅ローン

  • 繰り上げ返済のメリット
    繰り上げ返済をすると総支払額を減らすことができます。どちらの繰り上げ返済方法を使っても、返済分は元金の返済に充当されます。元金が減ると、利息負担が減るので、総支払額も減ります。

    繰り上げ方法を期間・金額の2つから選べるため、定年後のライフスタイルに沿った支払いが出来ます。金利負担分が大きく減るのは「期間短縮型」ですが、ご自身の定年後の生活に合ったほうを選択しましょう。

  • 繰り上げ返済のデメリット
    支払った繰り上げ返済分は、返還されませんので、手元に現金を用意しておきたい場合には、あまり多くの繰り上げをしないようにしましょう。

    定年後も家族の教育や生活費にお金がかかるなど、支出が続く場合には、毎月の支出額の目途がつくまでは、あまり繰り上げ返済額を多くせず、生活とのバランスを考えた金額を繰り上げましょう。

    また、一度に繰り上げできる金額は、金融機関とローン商品によって、1~100万円までと幅があります。繰り上げ返済の申込のたびに手数料が発生する金融機関もありますので、繰り上げ金額・手数料とも住宅ローンを組んだ金融機関で確認が必要です。

1-3.パターン3 全額繰り上げ返済

住宅ローン返済中に、残債のすべてを返済することを全額繰り上げ返済といいます。その時に残っているローンを支払うと、その時点で金利を含めた全ての支払いが完了します。多くの場合、退職金や預貯金などを使って、支払いをする傾向があります。

定年後の住宅ローン

  • 全額繰り上げ返済のメリット
    全額繰り上げ返済の最大のメリットは、住宅ローンの総返済額を少なくし、さらに定年後の支払いの心配から解放されることです。借入れ時に保証料を一括で支払っている場合は、残期間に応じた保証料の返還があるケースもあります。

    大きなローンが無くなりますので、精神的な負担も消え、晴れ晴れとした気持ちになるでしょう。また、完済したマイホームは、名実ともにご自身の資産となります。

  • 全額繰り上げ返済のデメリット
    手元にあるまとまった現金を使ってしまうため、今後、病気・ケガなどの想定外の出費が必要になったときに困る可能性が出てきます。

    また、住宅ローン開始から10~13年以内の方は、完済すると住宅ローン控除適用の対象から外れてしまい、毎年の納税額に影響が出る方もいます。

住宅ローン控除は、借入れから10年間(特例措置適用の場合には13年間)は、年末のローン残高に対し1%が所得税・住民税から控除されます。しかし、適用期間内に一括返済をしてしまうと、その分の控除がなくなります。

特に1%未満の超低金利で借りているケースでは、支払う利息より控除される税金の方が多いため、住宅ローン減税期間に全額返済してしまうと損をしてしまう場合があります。毎月の支払額と、税金支払額を良く比較してから、得になるタイミングを選択する必要があります。

◆コラム◆定年後でも、新規の住宅ローンって借りられるの?

定年後でも新規の住宅ローンは借りられます。ただし、定年後のローンには期間の制限がつきます。金融機関やローン商品によって違いはありますが、申込年齢の上限は70歳前後、完済時は80歳くらいまでが想定されています。

一般的な住宅ローンは最長で35年まで組めますが、それは申込者が若ければの話です。完済時期が80歳ということは、定年60歳で申し込んでも、返済期間は約20年しかありません。

返済期間が短くなるほど、月々の返済負担は大きくなりますので、定年後に住宅ローンを申し込むこと自体は可能ですが、支払いが続けられる安定した収入があるかどうかも検討しておいた方が良いでしょう。

金融機関によっては、年金収入を「収入」とは見なさないところもありますので、定年後に住宅ローンを組む予定があり、再雇用やその他の収入がない場合には、在職中に申込をしておく必要があります。

また、年齢以外にも職業・年収・担保の審査があり、住宅ローンは、年齢の問題をクリアしても審査が通るとは限りません。定年が視野に入っている年齢で住宅購入を検討している場合は、早めの準備をしておいた方が良いでしょう。
【参照:住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査

1-4.パターン4 住宅ローンの借り換え

住宅ローンの借り換えとは、現在の残高分をより金利の低い住宅ローンで新たに借り入れ、それまでの住宅ローンを完済してしまうことです。新規の住宅ローンは金利が低くなった分、総返済額も低くなります。

35年などの長期ローンを組んでいた場合、定年が視野に入る頃にはある程度の返済が進んでいるため、残債分だけを借り換えることになります。

  • 住宅ローンの借り換えをするメリット
    住宅ローンを金利の低いものに借り換えると、毎月の返済額も、支払い総額も下げることができます。どのくらい下がるのかは、借り換えをする金融機関・残債・設定金利によって差があります。

    例として、4,000万円で購入した住宅ローンの支払いが50%終わり、残り約2,000万円分の残債を借り換えた場合をシミュレーションしてみました。

借り換えの例)

  • 最初の借入額4,000万円:金利3%・35年ローンで50%返済した
  • 借り換えの借入額2,000万円:金利2%・14年ローン

定年後の住宅ローン

35年ローン金利3%で、残債が2,000万円台前半になるのは、返済開始から21年目になります。同じローンのままだと完済まで残り14年ですので、同じく、14年で返済*する前提で計算してみましょう。
*一部の金融機関を除き、借り換えによって返済期間を延長することはできません。

期間

金利

借入額

総借入額

現在の残額

月額返済

元金分

利息分

現ローン21年目

14

3%

4,000万円

6,400万円

20,072,000円

153,000

103,000円

50,000円

借り換えローン

14

2%

2,000万円

2,300万円

19,896,000円

136,000

103,000円

33,000円

【参照:カシオ計算機ローン計算 元利均等・固定金利・ボーナスなしの試算結果を編集部でまとめ】

太黒字で示した毎月の月額返済額の差は、期待したほどは大きくはありませんが、1%金利が下がるだけで、赤字で示した利息分の支払い額が、かなり少なくなることに注目してください。

14年間の支払いで比較すると、3%金利の利息総額は約4,517,000円、2%金利では約2,946,000円ですので、約160万円も利息を少なく支払うことができます。減額できる利息分から、ローン借り換えのための諸費用を差しい引ても「得だ」と思える額であれば、借り換えは長期的に見るとメリットがあります。

金融機関によってはウェブ限定申込であれば、1%未満の金利設定を用意しているところもありますので、借り換えを視野に入れている場合は、低金利になるタイミングで検討してみましょう。

【参考:りそな銀行 ウェブ限定申込プラン

【参考:住信SBI銀行 ネット専用住宅ローン

  • 住宅ローンの借り換えをするデメリット
    新たにローンを組むためには、手続きのために以下のような費用が発生します。

元のローンを完済させるための手続き

全額繰上返済手数料・抵当権抹消費用・保証料解除手続きなどの事務手数料

借り換えローンを始める手続き

住宅ローン新規手続き・抵当権設定費用・印紙税・保証料・これらの事務手数料            

これらの諸経費は、金融機関・借入金額・借入期間・金利などによって異なりますが、2つ合わせると30~80万円ほどかかります。

金融機関によっては、諸費用分を借り換え後の住宅ローンに含めることも出来るので、借り換え時に持ち出しゼロにすることも可能です。しかし、借り換えによる総支払額の減額分を諸費用が上回るようでしたら、借り換えはデメリットになります。

また、借り換えとは、新規に住宅ローンを組むことですので、審査に必要な住民票・所得証明書・自宅の物件資料などの書類準備が必要であり、申込者の経済状況や社会属性によっては、審査が通らない可能性もあります。

1-5.パターン5 住み替えローン

定年後の住宅ローン返済の中でも、少しイレギュラーなのが住み替えローンを使った完済です。

一般的には、住宅ローンが残っている状態では新規の住宅のためのローンは借りられないのですが、住み替えローンを使えば、残債があっても、次のマイホームのためのお金を借りることができ、なおかつ、前のローンを完済できます。

売却するマイホーム査定額にもよりますが、多くの場合、住宅ローンの多くの部分は、マイホームの売却額でまかなうことができます。

以下のイラストのように、今のマイホームを売って住宅ローンが完済できない場合でも、住み替えローンを使えば、次の新居の金額に、残債分をプラスしてローンを組むことができます。

定年後の住宅ローン

住み替えローンを組む時に、前の住宅ローンは完済されます。新居のための新しくローンを組んでいるので、住宅ローンから解放されるわけではありませんが、住み替え先の購入額を低く抑えれば、ローン総額もコンパクトになります。

  • 住み替えローンのメリット
    住み替えローンを使うと、住宅ローン残債があっても新居(住み替え先)を購入できます。つまり、住み替えローンは、家の売却代金がローン残債を下回っている場合でも使える、資金調達プランです。

    住宅ローンはそこに住む人のためのローンですので、本来ならば家一軒分しか借り入れることができません。しかし、住み替えローンの場合は、今住んでいる家を売却した残債分と、住み替え先のローンの2軒分のお金を、まとめて借りることができます。

    住み替え先の購入金額を可能な限り小さいものにすれば、マイホームの売却代金で住宅ローン完済ができる上に、今後のローン負担をかなり小さくできます。

    また、多くの金融機関では、住み替えローンの借入期間は、住宅ローンの借り換えとは違い、残ローン支払い期間よりも長く設定することが出来ます。一般的には80歳まで可能です。

  • 住み替えローンのデメリット
    住み替えローンは、売却するマイホーム残債と住み替え先の購入資金の両方を合わせたローンとなるため、住み替え先によっては、借入総額が前のローンの残債よりも高額になることがあります。(それでも借りられます)また、住み替えローンは、通常の住宅ローンよりも金利は高めになります。

    今の住宅ローンよりも支払い期間が延長できる分、月々の支払額を抑えることは可能ですが、万が一、新居のローンも支払えなくなって売却しなければいけなくなると、住むところが無くなる上に、残債ローン負担も抱えることになるので、住み替え先選びは、慎重に判断する必要があるでしょう。

◆コラム◆定年後の住み替え方いろいろ

定年後は現役時代とはライフスタイルも違うため、マイホームを売却した資金で、シニアライフに適した家に変更することがあります。定年後に住宅ローンの問題解消を兼ねた住み替えには、以下のものがあります。

  • コンパクトな家にダウンサイズ
    戸建てからマンション、郊外から駅前へ移動します。荷物を整理し、2人または1人に必要なコンパクトな生活になります。都心部へ移動すれば、買い物や通院の利便性、セキュリティの高い安全な暮らしができます。車も不要になります。

  • シニア向けの住宅へ引っ越す
    賃貸・分譲ともにシニアが暮らしやすいように設計されたコンパクトなマンションに引っ越すケースです。併設病院・提携病院との緊密な連絡・食事サービス・見守りサービスなどがあります。

  • 建て替えやリフォーム
    今の家を老後に向けて暮らしやすく*する、賃貸収入が入るように家の一部を改装するなどです。場所が同じでも、今までとは違う家に住み替えることになります。

    家賃収入が入るようになると、賃料もローン返済に充てられるため、支払いがラクになります。

    *各自治体には、シニア向けの家造りのための助成金が設置されています。また、賃貸併用の場合は、自宅部分が延床面積の50%以上あれば、住宅ローン適用も可能です。

  • 子世代と同居
    子供世帯と同居するために、2世帯住宅に建て替える、子供の希望するエリアに住み替えるなどがあります。2世帯で住む場合には、親子2代でローンが組めるため、支払い負担を親子とも軽減します。

住み替えにより、定年後の住宅ローン負担を軽くできるのであれば、検討してみましょう。


2.定年後の住宅ローンによくある問題5つと対処法

本章では、定年後の住宅ローン返済に関したよくある5つの問題と、その対処法をまとめました。対処法には、1章で解説をした返済パターンの中で、どの方法が適しているかも紹介しています。

2-1.問題1 定年後の返済比率が年収の3割以上ある

定年後の住宅ローン支払い額が年収に対して大きく、支払いが苦しい状況になってしまう問題です。「住宅ローンの年間返済額は年収の3割」までが健全です。

しかし、定年後は年収が先細っていきますので、仮に再雇用があったとしても、年収に対する住宅ローンが占める割合は、自然と大きくなってしまう傾向があります。

特に、定年後の返済額が年収の5割以上になってしまう場合は、老後生活はかなり厳しいものになるか、最終的に自宅を手放さなければならなくなる可能性が高まります。

2-1-1. 対処法 繰り上げ返済で返済比率を下げる

最もおすすめなのは、繰り上げ返済です。定年後に住宅ローンがかなり残っている方は、ローンを組んだ時に「定年の時に退職金でまとめて払えばいいや」と楽観的に構えていたケースが多いのですが、長い不況で思ったように給与が上がらなかったため、退職金を使った返済計画が思ったように行かない傾向があります。

そのため、退職金をほぼ全額使ってしまうよりも、預貯金と退職金を足してある程度の備えをした上で、比較的大き目な繰り上げ返済をする方法が良いでしょう。

対処法

おすすめ度

対処内容

普通に返済

再雇用が長期間あるならば検討の価値あり

繰り上げ返済

支払い期間短縮か、月額負担を3割までに抑える

一括返済

退職金が残債を大きく上回っていれば検討可

ローン借り換え

今組んでいるローン金利が高い場合はおすすめ

住み替えローン

住み替え後の総支払額が、現残債より下回るなら検討

返済期間を短くする期間短縮型であれば、支払い完了時期を前倒しにできます。例えば、75歳までの支払い期間だったものを年金受け取りが始まる65歳までになる分の金額だけを、繰り上げ返済すれば良いことになります。

返済額軽減型は、支払い完了時期は変わりませんが、毎月の支払負担を減らし、年収に対して健全な支払い額に調整することができます。

仮に、毎月のローン返済額が20万円(年間支払額240万円)で定年後の再雇用先年収が400万円であった場合には、400万円の3割である年間120万円近くにまで支払額を抑えられる分だけ、繰り上げ返済をすれば良いことになります。

どちらを選ぶかは、

  • 定年後のライフスタイル
  • 退職金額
  • 貯金額
  • 再雇用の期間
  • 年金額
  • 扶養家族の状況

などによって違いますので、ローンを組んでいる金融機関の担当者に相談をしてみましょう。また、どちらの場合でも、支払いがある間は、再雇用をしながら預貯金と退職金からの持ち出し分が発生しないように気を付けておく必要があります。

すでに退職をしてしまっているケースで、毎月の支払負担が大きい場合には、ローンを組んでいる金融機関に対し、支払い額の減額相談をすれば、月額負担を減らすこともできます。

2-2.問題2 ボーナス併用返済をしていた

毎月のローン返済分以外に、年2回のボーナス月に一定額を加算してローン返済をしていた方は要注意です。再雇用をしても、基本的に再雇用先はボーナスがないか、あっても年収減額によって今までのボーナス支払額分には足りないことのほうが多いでしょう。

毎月の返済額に加え、ボーナスで支払っていた10~50万円分の支払いが、今後ずっと加算されるとなると、再雇用が終わった時点から、かなり支払いは厳しくなります。

2-2-1.対処法 ボーナス返済を外す・ローン借り換え

定年後はボーナス返済をせずに、毎月定額の返済をするように切り替えます。ボーナス返済比率はすぐに外せますので、定年したら早めに切り替えます。

その上で最善策となるのは、ローンの借り換えです。

対処法

おすすめ度

対処内容

普通に返済

かなりの預貯金があれば検討可能

繰り上げ返済

繰り上げ返済で月額負担を減らせば可能

一括返済

支払い後に、充分な老後の蓄えがあるなら検討可

ローン借り換え

ボーナス返済率を0にして、低金利のローンに借り換え

住み替えローン

住み替え後の総支払額が、現残債より下回るなら検討

一般的に、ボーナス分を減らして均等にならすと、必然的に毎月の支払額が増えます。この場合、借りている金利が、現行の一般的なローン金利よりも高い場合には、総支払額がかなり増えてしまいます。

低金利の住宅ローンへ借り換えをすれば、総支払額が減り、毎月の支払い負担を減らすことができます。この時、退職金の一部を使って繰り上げ返済を併用すれば、さらに支払い負担は軽減します。

今のローンを借りている金融機関で低金利でのローンに組み換えをしてくれる場合は、他の金融機関とよく金利や条件を比較検討します。このケースでも、定年後の再雇用は必須となります。

すでに退職をしてしまっているケースで、ボーナス返済率を0にしても毎月の支払負担が大きい場合には、ローンを組んでいる金融機関に対し、支払い額の減額相談をすれば、月額負担を減らしてもらえます。

2-3.問題3 完済予定が75歳以上である

完済予定が75歳を過ぎたローンを組んでいるケースです。一般的にローンが完済する時期は70~85歳が限度です。

後期高齢者となる75歳以上になってくると再雇用も難しく、自営業以外の方は、収入は年金のみであるケースが多いでしょう。75歳が完済時期の場合、40歳で35年の住宅ローンを組んでいることになります。定年後、60~65歳まで再雇用を続けたとしても、完済までには年金以外の収入がない状態でまだ10年もあります。

その時点での残額、毎月の支払額、貯蓄と年金額にもよりますが、夫婦2人合わせた年金額でならば支払いができても、夫婦のどちらかが他界した時点で、支払いができなくなる可能性も出てくるため、早めの確認と対処が必要です。

2-3-1.対処法 低金利ローンに借り換え

夫婦・個人それぞれの年金額と預貯金額を計算し、完済期日まで生活に無理のない範囲で支払いができるなら、何も変更しないでも良いでしょう。

それ以外のケースでは、例えば、

  • 想定よりも退職金額がかなり少ない
  • 年金額が平均よりも少ない

などの場合には、早い段階で低金利のローンに借り換えをして、将来の月額負担を軽くしておく必要があります。

対処法

おすすめ度

対処内容

普通に返済

生活に支障がないのであれば検討可

繰り上げ返済

退職金額・預貯金額とのバランスにより検討可

一括返済

先の長い老後生活のため、老後資金は確保すべき

ローン借り換え

金利の低いものに借り換えて月額負担を軽くしておく

住み替えローン

家族からの協力があるなら検討

このケースの最大の問題は、返済完了時にかなりの高齢のため、定年後から何も対処をせずに返済期間が進んでしまうと、後でローンの組み直しや返済額の変更がしにくいという点です。

かなり高齢になってから返済の減額相談をしても、金融機関は、残った返済期間で支払額を按分するので、かなり高齢になってから返済の減額相談をしても返済期間に余裕が無く、金融機関は支払い相談に対処しにくくなります。

そのため、将来に備え、定年前または再雇用中に低金利のローンに借り換え、毎月の負担を減らしておく必要があります。

すでに定年後で、現時点で再雇用がない場合には、すぐに金融機関に相談をしましょう。必要な場合には、家族との2世代ローンが組める二世帯住宅建築などで協力をしてもらい、高齢になってからの重負担となる要因を早めに解消しておく必要があるでしょう。

2-4.問題4 変動金利型を選択している

変動金利とは、日銀が決める政策金利のことで、年に2回の見直しがあります。そのため、社会情勢によって金利が変動することがあります。2021年現在、住宅ローン金利は低い状態を更新し続けていますが、今後の日本経済の状況により、上昇することは考えられます。

住宅ローン金利は、あらゆるローンの中でもかなり優遇された金利ですので、突然に何%も上昇することはありませんが、住宅ローン金利が1%上がる・下がるで、100万単位で支払い総額が変わります。

定年後にも返済期間が残っている場合、将来に金利が上昇しないという保証はどこにもありません。変動金利を選択している方は、高齢になってから支払額が上昇していく可能性があることも留意しておく必要があるでしょう。

2-4-1.対処法 低金利の固定金利ローンへ借り換え

定年のタイミングなどに関わらず、低金利の時に、固定金利型の住宅ローンに借り換えをします

対処法

おすすめ度

対処内容

普通に返済

金利1~2%上昇でも対応できるのであれば問題なし

繰り上げ返済

退職金などに余裕があるのであれば検討

一括返済

退職金額が残債を上回るのであれば検討

ローン借り換え

低金利+固定金利のローンに借り換えをする

住み替えローン

低金利+固定金利で、今の残債を下回るなら検討

固定金利型とは、契約した時点から金利が変わらないタイプの金利設定です。固定金利には以下の2種があります。

  • 全期間固定金利型:
    完済までずっと同じ金利です。「フラット35」などが、全期間固定金利型にあたります。

  • 固定金利期間選択型
    固定3・5・10年など、設定した期間内のみ金利が変わりません。その後は、変動金利になります。

固定金利の良いところは、社会情勢などに左右されず、固定金利期間中の返済額は借り入れ時点で決定しています。代わりに、変動金利の%がとても低い時にでも、その恩恵にあずかれないというデメリットもあります。

しかし、支払い額が一定になるため、返済計画に狂いが生じにくく、定年後の新たな収入が不安定な時でも、安心して支払いが続けられ、生活設計も立てやすくなります。

借り換えの際には、各金融機関で金利%と返済期間を比較し、できるだけ「生活を圧迫しない負担額」になるプランから選択をしましょう。

また、退職金に少し余裕がある場合には、借り換えの際に一部繰り上げ返済も併用し、まとまったお金があるうちに、支払総額を減らすという方法も検討しましょう。

2-5.問題5 退職金額よりも残債のほうが多い

退職金の金額は人によって違いますが、一般的に、大卒で35年勤務した場合の平均的な退職金額は、退職一時金と退職年金を合わせて2,000万円前後と言われています。

住宅ローンを組んだ時に「退職金を使って住宅ローンの完済」を計画していた方は、住宅ローン残債が退職金相当である2,000万円以上残っていると、残債が残る上に、老後の生活費に使うまとまった現金もなくなる可能性が高くなります。

そのため、退職金額よりもローン残債のほうが多くなる場合には、定年後の住宅ローン返済方法を複数考えておく必要があります。

【参照:厚生労働省 就労条件総合調査より 退職給付

2-5-1.対処法 繰り上げ+借り換えでローン残債を極力減らす

この状況に対処する最善の方法は、可能な限り住宅ローン残債を減らすことです。定年後に退職金を使って完済するという方法は取れませんので、退職金の一部を使って繰り上げ返済をし、その上で、低金利のローンに借り換えをして住宅ローンの総支払額を減らすように努めましょう。

対処法

おすすめ度

対処内容

普通に返済

退職金・預貯金・年金額で完済できるのであれば検討

繰り上げ返済

退職金の一部を使ってローン残高を減らす

一括返済

足りないので、出来ない

ローン借り換え

低金利のローンに借り換えをしてローン残高を減らす

住み替えローン

総支払額が現借入額より低いなら検討

退職金全額を使っても返済できないのですから、手持ちの現金を減らすよりも、完済までの支払い総額を減らす方向に切り替えます。仮に2,000万円の残債を3%金利から2%金利へと下げるだけで、100万単位で支払い総額を下げることができます。

預貯金と年金で十分な生活が出来るほどの準備がある場合は、かなり多めの繰り上げ返済をすることで、毎月の支払い負担を大きく減らせます。

また、今のマイホームよりもコンパクトな暮らしをするために、住み替えをするケースでは、住み替えローンを使った総支払額が、今の住宅ローンよりも減るのであれば、検討してみるのも良いでしょう。


3.定年後の住宅ローン問題をできる限り回避する方法

本章では、定年後に起こる住宅ローン問題を、出来る限り回避するための方法を4つにまとめています。これらは、定年が視野に入る時期よりも前から準備できるのが理想ですが、定年間近・定年後でも、早めに行動することで、問題を最小に抑えることができます。

方法1 残債の現状を把握する
方法2 金融資産の現状を把握する
方法3 年金額を確認する
方法4 退職金額を確認する
方法5 自分たちの老後にかかる費用の算出

3-1.方法1 住宅ローン残債の現状把握する

住宅ローンの借り入れをしている金融機関からの返済予定表をもとに、定年後の住宅ローンの支払い予定を確認します。返済予定表には以下のことが書いてあります。

● 借入日
● 返済方法(元利均等返済・元金均等返済)
● 最終返済日
● 当初の借入金額
● 金利(利率)
● 毎月の返済日 (27日、末日など)
● 毎月の返済金額(元本・利息の内訳)
● 借入金の残高

全期間固定金利を選んだ場合は、契約~完済までの金利が決定しているため、ローン最終日までの返済予定が全て記載されています。

変動金利や期間のある固定金利を選んだ場合は、金利見直し時点までの返済予定のみが記載され、見直し後に、再計算された返済予定表が送られてきます。

返済予定表を見れば、あと何年・毎年いくら払えば良いのか、トータルでいくらあれば完済できるのかがハッキリとわかります。

3-2.金融資産の現状把握をする

退職金以外で、金融資産をどのくらい持っているのかを確認します。平たく言えば「自分の全財産」を確認します。

金融資産とは現金化できる資産のことで、例えば、以下のようなものを指します。

・預貯金(普通預金・定期預金)
・外貨預金
・株式(外国株を含む)
・債券(国債・社債・地方債・外国債含む)
・投資信託
・生命保険(掛け捨て以外)
・商品券、小切手
・マイホーム以外の不動産(別荘・マンションなど)
・骨董品、絵画、宝石など
・車、バイク

これらの資産を全て数値化して、現時点で、手持ちの資産がいくらになるかを把握します。不動産・骨董品類・車類は、それぞれの専門会社で売却査定をしてもらうと、金額を具体的に数値化できます。

これらの資産をすべて含めた金額と、退職金額を合わせたものが、定年後の全財産です。この金額と再雇用収入・年金をもとに、住宅ローン返済と生活を考えることになります。

これらの資産がない場合は、退職金・再雇用収入・年金で住宅ローンを支払いながら、生活をしていくことになります。

3-3.方法3 年金額を確認する

定年後~老後の生活を支える年金額がいくらもらえるかを確認します。総務省統計局の家計調査によれば、夫婦65歳以上の無職世帯の平均年金収入は、1ヶ月あたり約20万円、無職単身世帯では約12万円です。

この金額はあくまで平均値であり、年金加入期間・年金の種類などの個人事情によって受給額が違うため、各家庭で正確な金額を把握しておく必要があります。年金額の確認方法は、以下の方法があります。

・ねんきん特別便で確認をする(ハガキ・電子版)
・転職を複数回した方は「被保険者記録照会回答書」も参照
・支払開始している方は「年金の支払いに関する通知書」
※所属する会社の共済組合で年金加入している場合は、国民年金事務局からの通知には加算されていません。各企業の総務課・人事課で確認をしてください。

【参照:日本年金機構

これらの書類で、何歳から・毎月いくら・年間でいくらもらえるかが数字で把握できますので、定年後の生活と住宅ローン支払い設計をしやすくなります。

◆コラム◆定年後に再雇用したら年金は増やせるの?

定年後でも、年金の受取額を増やす方法はあります。会社員や公務員の年金は、以下の老齢基礎年金と、老齢厚生年金の2階建てになっており、Aの上にBを上乗せした金額を年金額として受け取るようになっています。

・A 老齢基礎年金
国民年金や厚生年金保険などに加入して保険料を納めた方が、加入期間に応じて受け取る年金。20~60歳になるまでの40年間納め続けると、満額支払いとなります。受給資格は加入10年からです。

・B 老齢厚生年金
会社勤務などで厚生年金保険に加入していた方が受け取る年金。給与・賞与・加入期間で変わります。受給資格は加入1年以上です。

Aを満額支払い済の場合は、これ以上Aの受取額を増やすことできません。しかし、定年の60歳以降も再雇用で働けば、Bの老齢厚生年金に加入して、受取年金額を増やすことができます※。

学生~定年までの間にAの年金未納分がある場合も、再雇用で厚生年金に加入し続ければ、Aを穴埋めすることも出来ます※。ただし、厚生年金加入は70歳までです。

定年後も70歳までは年金受取額を増やすことは出来ますので、再雇用は、将来の住宅ローン支払い・生活費の補填方法にもなります。

※Aの老齢基礎年金は、満額支払い済でない場合のみ70歳まで任意加入を続けて年金額を増やすことができますが、再雇用でBに入った場合はAの任意加入が出来なくなります。

【参照:日本年金機構 任意加入制度

【参照:老齢厚生年金受給資格

3-4.方法4 退職金額の確認

勤続年数が一定年数ある場合は、退職金が定年後のまとまった資金となります。ただし、住宅ローンを組んだ当時に想定していた退職金額よりも少なくなっているケースもあり、

「住宅ローンは、定年退職金をもらったときにまとめ払いしよう」という人生計画だった場合には大きく計算が狂うことになります。

そのため、正確な退職金額を知ることは、定年後の人生設計を考えるためにとても重要です。

厚生労働省が行っている「就労条件総合調査」によると、35年務めた場合の退職金の平均額は以下の通りです。

高校卒

現場職

1,300万円

高校卒

管理・技術職

1,710万円

大学卒

一般

1,920万円

【参照:就労条件総合調査 / 平成30年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態

退職金額は企業によって算出方法が違うのですが、「基本給×勤続年数」のような、シンプルな計算方法の場合は、毎月の給与明細にある基本給と、勤続年数を掛け算すればおおよその退職金額がわかります。

それ以外の場合は、政府統計で、ご自身の所属する企業規模・勤続年数・学歴をもとに、近似した詳細な平均数値を参考にしてください。

再雇用先を再び退職する際には、退職金支給はないことが一般的ですが、社会規定・職種・技術などによって変わってきます。再雇用の際には、退職時の条件も良く確認しておく必要があります。

3-5.方法5 老後の生活費を数値で出す

ここまでで、定年後の

  • 住宅ローン残債
  • 手持ちの金融資産(全財産)
  • 年金手取り額
  • 退職金額

が把握できていますので、あとは、定年後の生活費にどのくらいかかるかが分かれば、住宅ローンを支払いながらどのくらいの生活ができるか、今から、住宅ローンをどうしたらよいのかの目安がつくようになります。

老後の生活費には2パータンあり、必要最低限の生活ができればよいシンプルバージョンと、シニアライフを謳歌するゆとり生活バージョンがあります。

定年後の生活費に正解はないのですが、住宅ローンの支払いがある場合は、ローンを支払った上で、シンプルな生活が送れることがひとつの目安になります。

3-5-1.必要最低限 シンプルバージョン

家計調査報告によれば、65歳以上夫婦のみの無職世帯の場合のシンプルな生活費は約22万円、単身世帯の場合は約13万円です。シンプルな生活で使われる生活費の実態とは、以下のような内容です。

品目

 2人世帯

単身世帯 

食費

65,804円

 36,581円

住居費*

14,518円

12,392円

光熱水道費

19,845円

12,957円

家具・家事用品費

10,258円

5,328円

被服履物

4,699円

 3,181円

保険医療

16,057円

8,246円

交通費 通信費

26,795円

12,002円

教育

4円

0円

娯楽

19,658円

12,910円

諸雑費

19,351円

 13,180円

交際費

19,826円

 15,253円

仕送りなど

1,384円

 1,066円

生活費合計

22万円

13万円

*住居費とは、家屋の細かな修繕などに使われる費用のことです。

【参照:家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要をもとに編集部まとめ

単純に、上記の生活に住宅ローンを足した金額が、定年後の全生活費となります。ただし、上記の数値は平均値ですので、ここから節約すれば、さらに生活費を抑えることは可能です。

3-5-2.ゆとり生活バージョン

ゆとり生活とは、前出のシンプルな生活費に加えて、より快適・よりにぎやかに暮らす生活スタイルです。個人と家庭の考え方で「ゆとり」部分はかなりの差が出ますが、統計によれば、平均的なゆとりのある老後生活に必要な月額費用は36万円、シンプルな生活費への上乗せ額としては約14万円です。

上乗せした14万円分の使い道は、以下になります。

  • 趣味や教養
  • 旅行やレジャー
  • 食費や住居費、衣服代など老後の日常生活費の充実
  • 子どもや孫、親族とのつきあい
  • 隣近所や友人とのつきあい
  • テレビや冷蔵庫、自動車などの耐久消費財の買い替え資金
  • 結婚資金援助や住宅取得資金援助、子や孫に対する援助

【参照:生命保険文化センター 令和元年度生活保障に関する調査

ゆとり部分は、全てを満たす必要はなく、また常時満たす必要もありませんので、必要な時に必要な金額が捻出できれば良いという種類のお金です。しかし実際には、住宅ローンの支払いをしたうえで、上記のゆとり資金を用意するのは、収入が増えにくい定年後の生活では、かなり難しいと見て良いでしょう。

本章でまとめた各項目

  • 住宅ローン残債
  • 手持ちの金融資産(全財産)
  • 年金手取り額
  • 退職金額
  • 必要な老後の生活費

上記すべての数値を把握したうえで、住宅ローンを含めた毎月の支払いが赤字にならないのであれば、定年後に住宅ローンが残っていても、大きな問題にはならないでしょう。

赤字になる場合は、定年後に再雇用をし、収入のあるうちになるべく多く返済をする、金融資産の一部を現金化して将来の返済負担を減らしておくなどのリスク管理と工夫が必要となります。


4.定年後の住宅ローンで老後破綻しないための注意3つ

本章では、定年後の住宅ローンの問題に関して、注意するべきことを3つにまとめています。

  • 注意1 見直し計画は早めにする
  • 注意2 余裕のある計画をする
  • 注意3 払えなくなった時のことも考る

4-1.注意1 見直し計画は早めにする

定年のタイミングに関わらず、住宅ローンの見直しは、気づいた時点・気になった時点でスグに始めます。今現在、問題なく払えていても、このまま高齢になるまで支払いが続けられるかを入念にチェックする必要があります。

定年直後は退職金・預貯金などのまとまった資金がありますが、今後の収入が先細る中、老後資金を確保しながら、抱えている住宅ローンをどうするべきかを、見ていきます。

このまま定年後も住宅ローン支払いを続けると、将来に生活破綻がある可能性が高いと判断した場合には、マイホームを出来る限り高い値段で売却して売却益を得るなど、住宅ローンを終了させるという選択肢も含め、複数の計画を見直し案にリストしたうえで、最善だと思えるものを選択します。

考えても確信が持てず、判断に不安が残る場合には、お金の専門家である税理士やファイナンシャルプランナーなどに相談をして、プロの意見も参考にしましょう。

【参照:日本ファイナンシャルプランナー協会 無料電話相談

4-2.注意2 余裕のある計画をする

定年後の住宅ローンを見直す際には、老後生活全般を通して、余裕がある生活ができるような支払い計画にします。この場合の余裕とは、無理無駄のない、負担の少ない生活、つまり、住宅ローンによって生活費や精神的な圧迫がない状態のことです。

人生100年時代、定年後の人生は今までの社会人生活と同じ長さがあります。その期間、再雇用・預貯金・年金で無理なく暮らしていけるような支払い計画であれば、つつましい生活ではありますが、老後破綻を避けて生きていくことができます。

4-3.注意3 払えなくなった時の対処法も考えておく

あまり考えたくはないことですが、住宅ローンが支払えなくなったときの対処法も考えておきましょう。住宅ローンの支払い滞納が3ヶ月以上続くと、金融機関から一括返済の要請が来ます。

それに対応できない場合、一般的には、金融機関はマイホーム物件を競売にかけて売却します。マイホームは人手にわたり、残債がある場合には返済義務が生じますので、住む家が無くなったうえに借金まで背負う可能性があります。

実際には、滞納をしても、金融機関に相談の上で、毎月の利息分だけでも支払っていれば、即競売にかけられるようなことはありません。しかし、元金が全く減らないため住宅ローン返済の方法としてはあまり得策とはいえません。

このように、住宅ローン支払いに行き詰った時に使えるのが、リースバックとリバースモーゲージという2つの対処法です。

4-3-1.リースバック

リースバックとは、今住んでいるマイホームを第三者(一部の金融機関・不動産投資会社・不動産会社など)に売却後、家賃を支払いながら引き続きマイホームに住み続ける方法です。

家の所有権は第三者にわたってしまいますが、住宅ローンが完済する上に、売却差益は老後資金として蓄えておけます。住み続けるマイホームへの賃料は必要ですが、引っ越しなどをする必要もないため、肉体的・精神的な負担が少なく済みます。

また、申込者と専門機関とのやり取りだけなので、家を売却したことを近隣に知られずに住み続けることができます。

ただし、すでに不動産は他者のものになっていますので、賃料を支払えなくなったら、一般の賃貸と同様に退去しなければなりません。老後生活費から必ず払える範囲の賃料に設定できれば、良い対処法と言えます。

4-3-2.リバースモーゲージ

リバースモーゲージは、マイホームを担保にして生活資金を借り入れる方法です。借りる生活資金は数十万円~数千万円まで、不動産の担保価値の範囲で何度でも借りられます。

借りたお金は、ローン申請者が亡くなった時に、金融機関や相続人がマイホームを処分したお金で返済をします。リースバックとの違いは、不動産の所有権が本人にあり、そこに住み続けた状態で「家を担保にお金を借りているだけ」であるところです。

住宅ローンの残債をリバースモーゲージへと借り換えた場合、リバースモーゲージによって借り入れできる金額から住宅ローンの残高を差し引いた金額が、自己資金として受け取れます。

例えば、マイホームの売却査定額が6,000万円、住宅ローン残債が2,000万円であれば、4,000万円まで借入が可能です。

住宅ローンの時は「元金」+「利息」を支払っていましたが、リバースモーゲージにすると、元本は自分の死後に不動産を売って一括返済するので、生きている間は利息だけを支払っていれば良いため、毎月の負担が一気に軽くなります。

また、申込をした金融機関によっては、この利息分も元本に組み入れて、死後の不動産売却で一括返済するプランもあるため、お金を借りて生前は一円も返さないでもよいパターンもあります。

リースバック・リバースモーゲージともに、最終的にマイホームを家族に遺産として残してあげることができないのが難点ですが、今直面している定年後の住宅ローンの問題を大幅に解決するという点では、検討してみる価値のある対処法です。

【参照:常陽銀行リースバック】【参照:住宅金融支援機構 リ・バース60


まとめ

いかがでしたでしょうか。定年後の住宅ローンに関わる問題と、その解決方法を以下のようにまとめました。

  1. 定年後の住宅ローン返済5大パターンとメリットデメリット
  2. よくある定年後の住宅ローン問題5つと対処法
  3. 定年後の住宅ローン問題をできる限り回避する方法
  4. 定年後の住宅ローンで注意すべき3つのこと

定年後に住宅ローンを抱えている方に共通しているのは、定年後は収入の先細りがあり、将来的には年金と預貯金の中から住宅ローンの支払いをしていくことです。

しかし、定年後に住宅ローンがあるからイコール老後破綻が起きるわけではなく、残債額・返済負担額が、退職金・年金を含んだ資産全体と、どのようなバランスになっているかで、選ぶべき対処法も変わってくることがお分かりいただけたと思います。

ご自身とご家庭にとって最適だと思える住宅ローンへの対処法を確認でき、少しでも将来への不安が解消できるお手伝いになればと思います。

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