
定年後の生活費はどのくらいあれば大丈夫なのだろう。年金や貯蓄などを合わせて、果たして老後までの人生で足りるのか、子供たちに迷惑をかけないで自立した生活を送るには、どのくらいの生活費があれば十分だと言えるのかがわからず、お困りでしょうか。
そこで今回は、定年後の生活費に関して
1.定年後生活費はひとり15万円・ふたりで22万円・ゆとり生活で36万
2.定年後の生活費で気をつけるべき3大リスク
3.定年後の生活費不安を解消する3つの方法
をまとめました。最後までお読みなれば、定年後の生活費に対する不安が消え、自分の家の場合はどうすればいいのかが具体的にわかります。また、生活費の計画を立てる際に知っておくべき事柄もわかりますので、自分にぴったりの定年後の生活費設計が出来ます。
目次
1. 定年後生活費はひとり15万円・ふたりで22万円・ゆとり生活で36万
定年後の生活費の目安を、ひとり・ふたり・ゆとりのある生活でまとめました。総務省が毎年統計を行っている家計調査を数年分平均した数字によれば、定年後の生活費は、ひとり暮らしなら月額15万円、夫婦で月額22万円、ゆとりのある豊かな暮らしぶりを望む場合は家族構成を問わずに月額36万円の生活費がかかります。
【参照:数字サンプル 総務省 家計調査2019】
1-1.ひとりの定年後生活費
・生活費の必要最低金額:15万円
定年後のひとり暮らしで必要な生活費目安は月額15万円です。この中に、税金や保険料などの非消費支出は含まれておらず、純粋な生活のためのお金にかかる金額です。
・ひとりの定年後生活費内訳
具体的に、定年後のひとり暮らしの生活費内訳がどのようになっているかをまとめました。
【参照:総務省家計調査 家計収支 2019年】
【参照:政府ポータルサイト 統計でみる日本 単身世帯2019】
①住居費:
ひとり世帯で、持ち家の住宅ローンが終わっている人を基準に算出しています。不動産に関するものとして
・家屋のリフォームや修繕代金
・火災保険と家財保険
・地代
も含まれています。固定資産税などの公的な税金は含まれていません。
②水道光熱費:
上下水道代、ガス代、電気代です。
③食費:
スーパーなどで買う生鮮食品・米パン類・調味料・お菓子・酒・外食の費用が含まれています。宅配型のお弁当や惣菜などの代金なども含みます。
④家具・家事:
家具と家庭用雑貨はここに入ります。また、生活用品としての洗剤類・掃除道具(家電含む)などもここに入ります。
⑤被服費:
下着類、衣類、靴や帽子などが含まれます。
⑥保険・医療:
国民健康保険などの代金です。医療費は、通院した際に支払った金額です。生命保険・医療保険などの任意保険の代金は、定年後の生活費には加算しません。セルメディケーションと特定保健用食品は医療に含まれますが、普通のサプリメントは⑨その他になります。
⑦交通費・通信費:
バス・電車賃と、携帯電話代金、テレビの視聴代金の代金です。車やバイクに乗る人はガソリン代や高速代金も含まれます。
⑧教育・娯楽:
習い事、勉強の授業代が入ります。趣味(ゆとり)以外の書籍代もここに含まれます。娯楽には日帰りバスツアーなどの短期の旅行が含まれます。3泊4日以上の旅行は、ゆとり生活になります。
⑨その他
その他の消費の中には、美容院・理容室やマッサージなどの自分の身の回りを整えるサービスおよび、サプリメント、交際費、嗜好品(タバコなど)などが含まれています。
*嗜好品の中でも、酒類は食費に含まれます。
・ゆとりのある生活費のための金額:プラス10~20万円必要
ひとり暮らしで老後にゆとりのある暮らしをするためには月額36万円程度の生活費が必要です。
定年後には自由時間が増え、今までできなかったことが出来るようになります。ひとり世帯では定年後に子供や孫などにかかる費用もなく、家族に遺産を遺す必要もないため、ゆとり生活ができる資金を確保できれば、あまり将来の心配をせずにかなり自由な暮らしが出来るでしょう。
豊かな老後の活動のために必要な資金として、必要最低限の生活費15万円に加えて月額10~20万円を多く見積もっておく必要があります。定年後ひとり暮らしでゆとりのある生活とは、例えば
・行きたいと思っていた国内外の名所に行きたい
・パソコン一つで世界を自由に旅してみたい
・ゆっくり温泉につかって旅をしながら長年の疲れを癒したい
・なにか新しい習い事や資格にチャレンジしてみたい
・世界遺産を全て訪れてみたい
・高級レストランの食べ歩きをしたい
・自分の趣味を究めたい(例:バイクや車など)
・好きなもののコレクションを存分に楽しみたい
・老後の生活を想定し、ホーム購入などのために財テクをしたい
ひとりのゆとり生活項目 | 金額目安 |
国内名所の旅 | HIS屋久島一週間1人旅 70,000円~ |
世界を旅する | HISイタリア旅行 210,000円~ |
自分の財産を自分で管理! FP資格を取ってみる | ファイナンシャルプランナー(日本FP協会) 20,000円~ テキスト代10,000円、受験料6,000円・問題集2,300円前後 |
レストラン食べ歩き 週3回 | ミシュランガイド2つ星 25,000円×夜3回=75,000円 |
将来のホーム入居ための財テク | 毎月の投資資金10万円~12か月=120万円~ ハイクラス・シニアレジデンスの月額代金820,000円 ※施設により費用は異なります |
などです。夫婦ふたり生活に比較すれば自由度はかなり高いですが、万が一のケガや病気の場合は看病や介護をしてくれる人がいないことなども想定した資金計画が必要です。
1-2.夫婦ふたりの定年後生活費
定年後に夫婦ふたり暮らしをした場合の、生活費のまとめです。
・生活費の必要最低金額:22~24万円
定年後の夫婦ふたり分の生活費は、1か月平均で22~24万円です。この中に、税金や保険料などの非消費支出は含まれておらず、純粋な生活のためのお金にかかる金額です。
・夫婦ふたりの生活費内訳
具体的に、夫婦ふたりの暮らしでどのような生活費内訳になっているかをまとめました。
【参照:総務省家計調査 家計収支】
【参照:政府統計ポータルサイト 統計でみる日本】
①住居費:
夫婦ふたり世帯以上の持ち家で、住宅ローンが終わっている人を基準に算出しています。
不動産に関するものとして
・家屋のリフォームや修繕代金
・火災保険と家財保険
・地代
も住居費に含まれます。固定資産税などの公的税金は含まれていません。
②水道光熱費:
上下水道代、ガス代、電気代です。
③食費:
スーパーなどで買う生鮮食品・米パン類・調味料・お菓子・酒・外食の費用が含まれます。
④家具・家事:
家具と家庭用雑貨(洗剤類・掃除道具・家電含む)などです。
⑤被服費:
下着・衣類・靴・帽子などが含まれます。
⑥保険・医療:
国民健康保険などの代金です。医療費は、通院した際に支払った金額です。生命保険・医療保険などの任意保険の代金は、定年後の基礎の生活費には加算しません。セルフメディケーションや特定保健用食品は含まれますが、一般的なサプリメントは⑨その他になります。
⑦交通費・通信費:
バス・電車賃と、携帯電話代金、テレビの視聴代金の代金です。車に乗る人はガソリン代や高速代金も含まれます。車本体の代金などはゆとり資金です。
⑧教育・娯楽:
習い事や勉強の授業代と、1~3泊以内の温泉や日帰りバスツアーなどの短期間の行楽費用が含まれています。3泊以上の国内旅行や海外旅行は、ゆとり資金として別枠になります。
⑨その他
その他の消費の中には、美容院やマッサージなどの自分の身の回りを整えるサービスおよび、サプリメント、交際費、嗜好品(タバコなど)などが含まれています。
*嗜好品の中でも、酒類は食費に含まれます。
・夫婦ふたり、ゆとりのある生活費のための金額:プラス10~14万円必要
夫婦ふたりで老後にゆとりのある暮らしをするためには月額36万円程度の生活費が必要です。
定年後には自由時間が増え、今までできなかったことが出来るようになります。その活動のために必要な資金として、生活費に加えて月額12~14万円多く見積もっておく必要があります。具体的なゆとりのある生活とは、例えば
・お稽古や習い事を充実させる
・毎週末はゴルフ、平日は打ちっぱなしで練習三昧
・夫婦で美味しいものを食べ歩き
・年に2~3回の海外旅行
・子供や孫たちと一緒に、温泉旅行などを楽しむ
・自分の趣味を究めたい(例:音響に凝った部屋を作りたいなど)
夫婦ふたりのゆとり生活項目 | 金額目安 |
習い事 | 朝日カルチャーセンター 1教室1回代金 1,000~4,000円 |
ゴルフ打ちっぱなし×平日3日 | 楽天GORA予約 2,000円/H×3回×4週=24,000円 |
週末ゴルフ | 楽天ゴルフ予約 近県に一泊3食で14,000円 |
家族との旅行(全額負担) 一泊2日、親子3世代計算 | ファミリーパックツアー旅行代金(HIS) 1人5万円×宿泊日数×人数(親2・子2・孫2)=30万円前後 |
グルメ代金(夕食) 月に2回を予定 | ミシュランガイド一つ星 夜コース+ワインペアリング 15,000円×2人×2回=60,000円 |
などです。これらの金額が足りない場合は貯蓄から切り崩す形になるケースが多く、定年後の生活設計を無計画なままで進行すると、老後破産の要因になる可能性があります。
【参照:老後破産】
1-3.自分の場合の生活費をシミュレーションしてみる
本章1項2項では統計上の全国平均をまとめましたが、実際には、1世帯ごとの定年後の生活費は、
・家族構成
・地域
・ライフスタイルや考え方
・持病の有無
・年金額
・貯蓄額、資産額
などによってかなり違います。本項では、自分の場合は生活費がいくらになるのかをざっとシミュレーションしてみましょう。定年後には、今まで必要だったけど不用になるもの、今後も変わらないもの、これからプラスされるものがあります。
Aは今後はかからない予定の費用ではありますが、今までどのくらい使っていたかの参考に、計算をしておいても良いでしょう。
Bはご自宅に来ている請求書などを元に、実際の金額を記入しましょう。
Cは目安金額を書きましたので試算の参考にしてください。
現時点で定年後の生活費(年金金額・預金総額・退職金など)がはっきりとわからない人は、以下のシミュレーターを使うとおおよその老後の生活費の金額がわかります。
・老後資金がいくらになるのかを知りたい:JA 老後資金シミュレーター
・年金がいくらなのかを知りたい:カシオ 年金退職金シミュレーター
・住宅ローンの返済を確認したい:カシオ ローン返済シミュレーター
定年後の生活費の金額に「正解」はありませんが、全国平均よりも目立って多すぎる項目がある場合は、定年後のライフプランが先々になって破たんする可能性もありますので、今から見直しをしておく必要があります。
【定年後の生活費シミュレーションシート】
2.定年後の生活費で気をつけるべき3大リスク
本章では、定年後の生活費に影響が大きい3大リスクとして
- 物価上昇リスク
- 無収入期間発生のリスク
- 健康リスク
まとめました。
2-1. 定年後の物価上昇リスク
物価が上昇すると生活費に影響します。簡単に言えば、1万円で買えるものが変わります。
例>65歳定年・毎年0.1%の物価上昇あり・定年後生活費を20万円と算定していた場合
・1年後の生活費(66歳)
20万円×1.01=20.2万円
→1年後は前年度と同じものを買うときに20万2千円出さないと買えなくなる。
・2年後の生活費(67歳)
20.02万円×1.01=約20.4万円
→2年後は2年前と同じものを買うときに20万4千円が必要になる。
・10年後の生活費(75歳)
→22万円出さないと、10年前と同じものが揃えられなくなる。
という計算が成り立ちます。ここで問題なのは、定年後という無職の生活の中で新たに生活費をねん出するのが難しいため、実際には、物価上昇によって上がった値段分は生活費を切り詰めることになります。
つまり「定年後には生活費を20万円でやって行こう!」と決めていても、少しずつ物価上昇が起きれば、10年後の生活費は実際には18万円でやりくりすることになります。
2-1-1.定年後の物価上昇リスクに対する対策
公的年金・厚生年金・貯金額などの試算総額を計算し、物価上昇リスクを考慮した生活費の組み立てをしておきます。
物価上昇リスクに追い付けないと算段した場合は、定年後に再雇用の道を選択して資産を補填するなど、生活費のための資産の切り崩しが無いように調整をする必要があります。
2-2. 定年後の無収入期間発生リスク
定年後に無収入時期が発生するリスクを考えておく必要があります。仮に60歳定年の場合、公的年金の需給が開始する65歳までの間は、年収が不安定になりがちです。例えば、
ケース1>60歳から定年生活をスタートする場合
60歳から定年生活をスタートしても公的年金の需給が始まる65歳までの5年間は無収入です。この5年間で気を付けなければいけないのは、
・もう働かなくてもよい解放感
・退職金などの大きなお金が入っている安心感
・住宅ローンなどが終わった身軽さ
・子育ての終わった自由さ
などから財布のひもが緩み、想像以上にお金を使ってしまうことです。特に、最初の数年間は、あとで明細を見るとびっくりするような大金を使っていることがあります。
また、夫婦で正社員をしていた場合は、どちらかが「自分が使ってしまっても、まだ妻(夫)の退職金がある」という目算があるため気持が大きくなり、今までなら買わなかったような大きな買い物を自己判断でしてしまうこともあります。
もちろん、家族のために働いてきた報酬として、定年後に好きなことをするのは良いのですが、これからも続く長い定年後の生活を守るため、何をどこまでなら使っていいのかなど、退職する前から家族でよく話し合っておく必要があります。
ケース2>再雇用をした場合
60歳の定年後、再雇用などで一旦は仕事を得ても、収入は定年前の6割程度と言われており、さまざまな要因で退職してしまうケースもあります。せっかくの再雇用先を辞めてしまう原因の多くは
・定年前との気持の切り替えがうまくできない
・プライドが邪魔する
・体力が続かない
などです。また、定年後から新しいキャリアを組み立てるのは非常に難しく、万が一資格などが取れたとしても、新しいキャリアでの就職は稀なケースであると思った方が良いでしょう。
2-1-1.定年後の無収入期間発生リスクに対する対策
ケース1・2とも、公的年金が始まるまでのおよそ5年分の生活資金を事前に準備してあれば、問題はおきません。定年後に働くつもりでも、収入が変動したり、シミュレーション通りには行かないケースもあることを想定して、途中で再雇用先を辞めても働き分を補える方法を、定年前から準備しておくことが大切です。
2-3.健康リスク
健康であれば、定年後の生活費の支出が減ります。定年後の生活費の中で、今後、年齢と共に増えていく可能性が最も高いのは「健康に関する支出」です。
厚生労働省の平成20~30年度の「医療費の動向調査」によれば、70歳以上の医療費は年間 79~80万円前後、月額は平均6.5万円くらいです。
しかし実際には健康保険により、この金額の2割負担になりますので、月額の医療費負担は10,000~13,000円、つまり年間10万円前後の支出になります。
また、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によれば、自分や家族に持病がなくても、何らかの理由で介護が必要になった場合は「公的介護保険の範囲外の費用に対して必要と考える月々の費用」として平均で月額10~15万円がかかるというデータがあります。
つまり、定年後の生活に病気または介護などの要素が加われば、それだけで年間10万円~の費用が発生します。現時点で持病のある人は少なくとも現状維持を、それ以外の人は心身ともに健康であり、さらにケガや事故などが起きないように安全な生活が出来る環境も目指しましょう。
【参照:厚生労働省 医療費の動向調査】
【参照:公益社団法人生命保険文化センター 生命保険に関する全国実態調査】
3.定年後の生活費不安を解消する3つの方法
本章では、定年後の生活費に関した不安を解消するため以下の3つの方法をまとめました。
- 制度を利用する
- 生活費のダウンサイズをする
- 再雇用・アルバイトをする
3-1. 方法①制度を利用する
定年後の生活費に関した不安を解消するため、さまざまな制度を利用する方法があります。
定年後の生活費の不安内容に対応できる制度を記載しましたので、ご自身の状況に合わせて参照してください。
60~65歳までの生活費不安 | A:在職老齢年金・B:雇用保険・E:年金繰り上げ受給 |
定年後全般の生活費不安 | A:在職老齢年金・B:雇用保険・C:確定拠出金・D:高齢任意加入・F:個人年金 |
特に老後の生活費の不安 | C:確定拠出金・D:高齢任意加入・F:個人年金 |
3-1-1.在職老齢年金
厚生年金の支払いに関する制度です。在職老齢年金の「在職」とは、厚生年金に加入していることを意味します。もし定年後に働いている場合でも、厚生年金に加入していなければ、老齢厚生年金は全額支給されます。
定年後も厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金も受け取る場合、毎月の給料と年金額の合算が一定額を超えると、支給額が減額または支給停止になります。
規定額は毎年調整されますが、例えば現在65歳未満の場合だと、年金月額と給与(年収÷12)が28万円を超えると調整開始し、47万円を超えると全額支給停止します。
支給額は毎月計算しなおされますが、自分で正確な計算をするのは難しいので、老齢厚生年金を貰いながら働く場合は「28万円を超えない」ように注意しましょう。
【参照:日本年金機構 在職老齢年金】
※会社員を長く続けてきた人は、以下の2種類の年金があります。ご自身の給与明細から、両方またはどちらの年金が受け取れるのかを確認してください。
①厚生年金(事業所の運営する年金制度)
60歳から支払い開始
*給与明細の厚生年金欄に引き落とし額が書かれていれば厚生年金に加入していますので、厚生年金の支給があります。空欄であれば未加入ですので支給はありません。
②公的年金(日本年金機構)
原則、65歳から支払い開始*給与明細の公的年金欄に引き落とし額の記載があります。公的年金の支払いは国民の義務です。
3-1-2.雇用保険(失業保険)
在職中に雇用保険に12か月以上加入していた場合、定年後~65歳までの期間に再雇用を目指した状態で心身健康であれば、雇用保険(失業保険)が受給できます。雇用保険を受給すると、自動的にAの在職老齢年金の資格が失効します。*給与明細の雇用保険欄に金額の記載があれば、雇用保険に加入しています。
雇用保険は「働く意志があるのに職に就けない状態の人」のための生活保障ですので、期間中には職業安定所の定めた求職活動を積極的にする必要があるなどの細かい規定はありますが、前職時代の生活水準を大きく落とさずに生活費の保証がされるという点では、検討する価値があります。
【参照:厚生労働省 雇用保険制度】
3-1-3.確定拠出年金
会社員を続けてきた場合、年金は国民年金と厚生年金の2つがあります。確定拠出年金はこの2つにプラスして任意で加入する企業年金の一種です。(個人タイプもあります。F項参照)
受取額は、企業が出す掛金額を自分で運用し、その運用結果次第となります。確定拠出年金は、加入期間が10年以上あれば60歳から受給を開始できますので、定年後の60~64歳の期間の資金に使えます。
【参照:厚生労働省 確定拠出年金】
3-1-4.高齢任意加入
公的年金を受給するには、10年間の受給資格期間を満たす必要があり、掛金を支払った期間が10年より短いと公的年金を受け取ることができません。
高齢任意加入はこのようなケースの救済措置で、60~65歳未満の期間に掛金を支払って加入期間を追加し、受給資格を満たすためのものです。
ただし、10年の支払い期間を達成していても、基本的に年金支払い期間が短い人は受取額も少なくなります。この制度を利用した場合、60~65歳間の保険料負担は増えますが、代わりに、将来の年金受取額を増やすことができます。
【参照:日本年金機構 高齢任意加入】
3-1-5.年金の繰上げ受給
公的年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、60~65歳までの期間でも、ひと月単位で繰上げて受け取ることができます。ただし1か月繰り上げる毎に年金額は0.5%減額され、この減額率はその後の年金額に対しても固定されます。例えば
例:5年繰り上げて60歳から年金受給を開始した場合
・1か月:0.5%減額×12か月×5年間=30%減額
・年金受取予定額が30万円だった場合 30万円×30%=毎月9万円が減額
・30万円-9万円=21万円が年金受給額
となります。繰り上げをすれば60歳からすぐに年金が受け取れるので、生活費として即時利用はできますが、受け取りの年金総額に響きますので、注意する必要があります。
【参照:日本年金機構 繰り上げ】
3-1-6.個人年金への加入
公的年金のほかに個人で加入する年金のことです。例えば、生命保険会社などが販売する年金保険などがこれにあたります。さまざまな種類の年金プランがあり、保険商品と同様に
・外貨建て
・定額制
・運用タイプ
・終身タイプ
などがあります。任意のプランに加入し、受け取り年齢を60歳から5年間受け取るタイプにすれば。60~65歳誕生日までの年金として使えます。
【参照:個人型確定拠出年金】
3-2. 方法②生活費をダウンサイズする
生活費を30%ほどダウンサイズし、夫婦ふたりで15万円くらいで暮らせるようにします。おひとりの人は10万くらいまでのダウンサイズを目指しましょう。
最低の生活費平均が夫婦ふたりで22万円と言われているのに、本当に7万円も少なく暮らせるの?とびっくりされる人も多いようですが、この定年後の生活費シミュレーションは、人気書籍もたくさん出ていますので一読されることをおススメします。イメージとしては
・家は持ち家でローンなし
・自分の暮らしだけにお金がかかる超シンプルライフ
・習い事は細く長く続けられる
・年1~2回の海外旅行は難しいけど、国内なら行ける
というライフスタイルです。どの書籍や提案者にも共通しているのは、ダウンサイズした分を年金開始まではひたすら貯蓄にまわす、という点です。仮に60~65歳までの5年間、ダウンサイズ分を貯蓄に回した場合を想定してみましょう。
例:夫婦ふたり 生活費15万円でやっていく場合
・生活費夫婦ふたり平均額22万円-15万円(実際の生活費)=7万円のダウンサイズ
・一年間で84万円のダウンサイズになり、イコール貯金額になります。
・84万円×5年間=420万円の貯蓄
が出来ます。定年後の最初の5年間で、65歳からの年金生活までに420万円の貯金が出来るならば、公的年金だけでは生活費が足りなくなるかもという不安も少し薄れていきます。
また、最初の5年間でこのライフスタイルに慣れ、公的年金が開始された後も同じように暮らしていけば、無職でも貯蓄が続けられますので、定年後の生活費対する不安は年数を追うごとに払拭されて行きます。
実際、このペースで貯蓄が出来れば、老後資金の話題として問題になった金融庁報告書の「定年後2,000万円問題」も乗り越えらることがわかります。
【参照:金融庁 人生100年時代における資産形成】
3-2-1.生活費ダウンサイズのポイント6つ
ポイント①生活費の無駄を発見する
今現在の生活費の中で、何に最も費用がかかっているかを確認します。数字から追ってあまり難しく考えなくても、ここ数年、老若男女問わずに流行っている自宅&自分の断捨離をすると、今後の生活には不用なものと、今まで生活費を圧迫していたものがわかります。
例えば、お洒落好きな人は既にクローゼットも引き出しもパンパンになっていると思いますが、これらは生活費の「被服費」に計上されるものです。今日までのような衣装が果たして定年後の生活でも必要かどうかを検討しましょう。
基本的に、2年間着用しなかった洋服は今後の生活でも使わないと言われています。例えば
・年齢と体型に合わない丈のスカートやパンツ
・足が痛くて履けない靴
・今のライフスタイルとは合わないデザイン
・痩せたら着ようと締まってある服
・高かったから着ないけどとってある服
などは、人に譲るかリサイクルで買い取ってもらい、愛用品だけが収まったスッキリしたクローゼットにすれば、必要なものだけを買い足すようになり、余分な被服費がかからなくなります。
同様に、趣味のコレクション、食器、本や家電など、個人の持ち物と家庭の持ち物などを断捨離していく中で、不必要にかかっていた生活費を発見できます。
【参考:人生がときめく片付けの魔法】
ポイント②食費を節約する
夫婦ふたりでもひとりでも生活費の%を最も多く占めるのは食費です。
食費は、ちょこちょこ買いを止めるだけでかなり削れます。ちょこちょこ買いとは、ちょっと足りないものをスーパーやコンビニに行き、ついでにその時に興味を惹かれたもの、特売で目についたものなどを無計画に買い足す買い方です。
このやり方で買い物をしていると、1回の買い物は1000~3000円以下にして無駄使いをしないように気を付けているつもりでも、月額では3万円くらい余分なものを購入しているケースがあります。
1週間のうちスーパーやコンビニに行く日を決め、その日以外はお財布やカードを使わない、食事は家にあるもので作るように決めてしまうと、食費を削減できます。
ポイント③外食費の節約
定年前の人は昼代で外食費の節約をします。一回の平均ランチ代は500~600円です。例えば、週3回を自宅からのお弁当にし、2回を外食にすれば、1か月で1万円近くを節約できます。お弁当はお弁当箱につめなくても、おにぎりと茹で卵でも良いのです。
職場ランチ以外での外食ではクーポンサイトやネット予約サイトなどでポイント還元による割引を狙います。今ではこのようなクーポン利用は店側も当たり前になっていますので、遠慮なく利用しましょう。
また、自宅にいる人は、なるべく朝とお昼は自宅で簡単にすまし、余計な外食費用を使わないように心がけます。
【参照:新生銀行 サラリーマンおこずかい帖】
ポイント④自動車関連の節約
車がどうしても必要な地域に住んでいる人以外は、マイカー利用をやめると大幅な節約になります。自動車の維持費には以下のような項目と出費額*があり、この金額に加えて車体本体のローン返済があります。*あくまでめやすです。
現在、首都圏~全国中堅都市では必要な時だけ30分から車をレンタルでき、しかも近所のコインパーキングが駐車場になるとても便利なカーリースシステムが完備しており、車が自宅にないことの直接的な不便はなくなりつつあります。
年間の利用日数が100日(3か月程度)以下の人は、上記表にある年間合計費用の4/3を無駄にしていることになりますので、マイカー卒業を検討してみましょう。
【参照:三井のカーリース careco】
【参照:総務省 自動車税】
【参照:日産 カーラインナップ】
【参照:イエローハット カーメンテナンス】
【参照:チューリッヒ自動車保険】
ポイント⑤スマホ・通信費の節約
携帯プランを最小のものにするか、SIMフリースマホに切り替える方法があります。
令和元年の家計消費状況調査では、スマートフォンなどの通信・通話使用料の平均は1万3000円です。しかし、定年後には家族と自分の行動範囲内の知人友人としか電話を使わないのであれば、大手キャリアからSIMフリースマホに切り替え、月額料金を2000円代で済ませることも考えてみましょう。
【参照:総務省統計局 令和元年家計消費状況調査】
ポイント⑥保険を見直す
過去に契約してきた保険で契約中のものを全て見直します。例えば
・生命保険
・自動車保険
・火災保険
・地震保険
・傷害保険
・クレジットカードに自動付帯されている保障
・マンションなどで加入している保険
をすべてリストにし、保証内容が被っているものと、年齢制限があるものをピックアップします。
保証対象年齢がある場合、定年後のライフスタイルに見合わないものがあれば解約しましょう。保証内容が被っているものは、万が一の場合でも二重に請求はできませんので、最も良いプランを残して他は解約してしまっても問題ありません。
定年後の生活費では、任意保険はゆとり生活費として扱われますが、解約すれば生活費として補填もできます。
【定年後の生活費に関した関連書籍一覧】
・あんしん・お気楽!年金15万円のゴージャス生活
・誰も教えてくれなかった!月15万円「年金」の使い方と運用100のコツ
・年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学
・実はそんなに怖くない! ラクラク年金生活入門
・人生100年時代の年金戦略
・ねんきん生活。月15万円で幸せに暮らす
・人生を変える断捨離
・シニアの断捨離
3-3. 対策③再雇用・アルバイトをする
定年後に働く意欲がある場合は再雇用先を探すかアルバイトをしましょう。労働をすると現実に収入が発生するため、老後に対する漠然とした不安感を拭うことができます。また、定年後に特にすることが決まらない人は、セカンドライフへの移行期間として、再雇用やアルバイトをしながら、次の人生テーマや生きがいなどを模索する人もいます。
3-3-1.定年後の仕事先の探し方
- ハローワーク:
定年後に「健康で働く意志がある」人は、雇用保険(失業保険)を貰いながら65歳まで再雇用先探しを続けることが出来ます。再雇用が決まった時点で雇用保険は停止します。
雇用保険の支給中(求職中)でもアルバイトは出来ますが、1日当たりの支給額を超えた金額が発生した月は減額または支給停止します。
【参照:ハローワーク 公共職業安定所】
- 転職サイト:
就職・転職情報の中でも、主に正社員や再雇用情報を掲載しているサイトです。下図のように、キーワードに直接「シニア」と入れるか、シニア案件のカテゴリー欄から探します。
【画像元:Indeed 検索画面】
転職サイトに無料会員登録をし、気になる案件があった場合は自分から応募します。応募内容は転職サイトの担当者を通じて個人情報に配慮したデータが企業へと手渡され、その後、面接へと進みます。
【参照:Indeed】
【参照 ビズリーチ】
【参照:doda】
- 人材派遣:
派遣にはフルタイムからパート、紹介予定派遣、契約社員前提まで幅広くあり、週3日21時間以上の仕事には派遣会社から雇用保険と社会保険が適用されます。仕事先との交渉は着任後も全て派遣会社が間に立ってくれ、社員時代のようなしがらみがなく、とても快適です。
各派遣会社に無料登録をし、その派遣会社で取り扱いのある求人案件の中から選んで応募をします。または、派遣会社のポータルサイトにある複数の派遣求人情報から任意のものを選び、応募情報元の派遣会社から選考された場合、派遣会社に登録をして話を進めます。
どの派遣会社・ポータルサイトにも、こだわり条件のところに「シニア求人」「シニア歓迎」などがありますので、チェックをしてから検索をするとシニアの再雇用・派遣に積極的な求人先がヒットします。
【参照:派遣ポータルサイト en派遣】
派遣の場合は、どのような応募方法をしても、必ず案件を担当している派遣会社に無料登録と面談をするところからスタートします。時間があるときに気になる派遣会社にネット登録をしておくと気に入った応募先が見つかった時に、とてもスムーズです。
【参照:はたらこねっと】
【参照:リクナビ派遣】
【参照:ジョブセンス】
- シニア向け求人雑誌・情報誌
地元のコンビニやスーパー、駅のラックなどにある「無料求人雑誌のシニア版」(フリーペーパー)には、シニア向けの正社員からパートアルバイト情報が掲載されています。
これらのフリーペーパーの特徴は、地域を区切って情報掲載をしているため、地元の情報が多いことです。通勤などを避けて家の近くで仕事をしたい場合は、シニア向け求人情報雑誌で探しましょう。
また、シニア向け求人雑誌に掲載されている情報をまとめたシニア向け求人情報サイトもあります。【参照:グランジョブbyバイトル】
- シルバー人材センター:
シニアに特化した仕事やシニア層の多い仕事場で働きたい場合は、シルバー人材センターに登録してみましょう。地域のシルバー人材センター情報は、サイト以外には町内の掲示板・地域広報誌などに掲載があります。
シルバー人材は会員登録制で年会費(年600円~3000円程度)が必要です。シルバー人材センターが仕事を受注して登録会員に紹介し、仕事量と仕事内容に見合った規定の配分金を受け取る仕組みです。
シニア世代を中心とした職場のため、同年代の人が多く、社会慣習などにも違和感がなく溶け込め、気持よく働けます。
【参照:公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会 】
らくらくコミュニティをのぞいてみよう! 定年後の生活費に関して、ほかの人たちはどんな風にしているのかな?と気になったら「らくらくコミュニティ」をのぞいてみましょう。らくらくコミュニティは日本最大級のシニア向けSNSです。 登録者は2020年現在で200万人、60歳以上の男女が圧倒的に多く、開設7年目の今でも毎月1万8,000人ほどの新規登録者がある信頼と実績のあるコミュニティです。 多くの人が定年後の趣味・家族・旅行など自由な発信をして、毎日の何でもない暮らしをアップしているので、同年代の人たちが毎日どんなライフスタイルを送っているのかを垣間見られます。 らくらくコミュニティは管理人が24時間常駐し、不適切な発言や投稿を巡回管理しているため、一般のSNSにあるような「炎上」が起きず、成熟した大人のマナーを守った大人の社交場となっていますので、イヤな思いをすることもありません。 定年後の生活費やライフスタイルが気になったら、らくらくコミュニティに行ってみましょう。 【参照:らくらくコミュニティ】 |
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。定年後の生活費に関して
1.定年後生活費はひとり15万円・ふたりで22万円・ゆとり生活で36万
2.定年後の生活費で気をつけるべき3大リスク
3.定年後の生活費不安を解消する3つの方法
をまとめました。具体的な金額と対策方法がわかれば、定年後の生活費は自分たちらしく生きるために必要な金額があれば良いことがご理解いただけたと思います。しっかりと働きながら、時間を味方につけていけば、定年後生活費の不安はなくなります。よりよいセカンドライフが送れることをお祈りしております。
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