
あなたは今、お父様・お母様に先立たれて単身になった親御さんのことや、何らかの事情により単身世帯になった高齢者のことを心配していませんか?
歳を取ると、生活意欲が低下し、何をするにも億劫になってしまうのは自然なことです。
また、
- オレオレ詐欺や悪徳商法などの消費者トラブルに巻き込まれる
- 加齢による認知症やうつ病の発症
- 一人暮らしの高齢者には孤立死(いわゆる孤独死)の可能性
- 年老いても、楽しい生活を送りたいものです。
などの心配もあります。
そこで、
- 元気なシニア世代が何を望んでいるのか
- 高齢者が孤立しない社会にするには
- 単身で生活する高齢者とのコミュニケーション
について考えてみましょう。
この文章を読んで、高齢者の孤独に対する不安が取り除ければ幸いです。
目次
高齢者が孤独に陥りやすいライフスタイル
日本は、これまで誰も体験したことのない高齢化社会になる、というニュースをよく見聞きしますよね。内閣府の資料によると、2017年10月現在で65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は27.7%であり、2035年には3人に1人が高齢者になるという推計があります。
今後も増え続ける高齢者が「孤独」に陥りやすい原因は、
- 核家族
- 単独世帯
- 日中孤独
- 未婚
- パラサイトシングル
などの、現代ならではのライフスタイルが大きく関わっています。
核家族・単独世帯
以前はサザエさん一家のように2世代で住むことはめずらしくありませんでしたが、現代は夫婦や親子のみで生活する核家族が増え、子どもが結婚・独立して家を離れた後、伴侶を失った高齢者が一人で生活することはよくあります。
日中孤独
子や孫と同居していても、日中、家族は仕事や学校などのため外出してしまい、「日中独居」の状態になる高齢者も少なくありません。
未婚・パラサイトシングル
近年は、結婚しない人、離婚した後に再婚しない人、2000年頃からは「パラサイトシングル」と呼ばれる人が増えているのをご存知ですか?
“パラサイトシングル”とは「学校を卒業後も親と同居し、基礎的な生活を親に依存している未婚者」のことを指します。
2016年の総務省統計局によると、若年未婚者(20〜34歳)は約908万人(若年未婚者人口の45.8%)、高年未婚者(45-54歳)は158万人(高年未婚者人口の9.2%)がパラサイトシングルに該当すると言われています。
専門家から「彼らは、同居する親が亡くなった後、社会的に孤立する可能性が高い」という指摘があり、超高齢社会を迎えつつある日本では、「パラサイトシングルの高齢化」という新たな問題も生まれています。総務省統計局「親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)」より
このように、現代のさまざまなライフスタイルにより、孤独に陥りやすい高齢者は増え続けているのです。
参照サイト:
内閣府 平成30年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/index.html
内閣府 平成30年版少子化社会対策白書
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2018/30webhonpen/index.html
総務省 平成30年版 情報通信白書「単独世帯の増加」
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd141110.html
単身世帯の高齢者が抱える問題
一人暮らしの高齢者が増えているという現実、そんなシニアたちが孤立しやすい状態にあることは見えてきました。
実際、単身世帯の高齢者は、どのようなリスクを抱えているのでしょうか?
もう少し具体的に見てみましょう。
2-1.ADL低下
生きていくために必要な食事・更衣・洗面・入浴・排泄・移動など、高齢者の日常生活動作(Activities of Daily Living、略称ADL)が低下する背景には、身体機能と認知機能の低下、精神面や社会環境の影響があります。
身体機能が低下すると、以前のように動けなくなったり、疲れやすくなったりするので、外出も億劫になりますよね。また、食欲不振になれば、体力が落ち、楽しみも失われます。
認知機能が低下すると、人や物の名前が思い出せなくなったり、季節や目的にあった洋服を選べなくなったり、料理の手順がわからなくなったり、外出すると道に迷ってしまうこともあります。
あまり動かなくなり、脳で考えることが減り、コミュニケーションの機会まで失われると、寝たきりの状態へと進行しやすくなるのが問題です。
2-2.詐欺などのトラブル
悪質な業者は、言葉巧みに高齢者の不安をあおり、親切にして信用させ、年金や貯蓄などの大切な財産を狙っています。
高齢者は自宅にいることが多いので、電話勧誘販売や家庭訪販(自宅を訪問して、商品やサービスなどを勧める商法)による消費者トラブルにあいやすいのが現状です。
そのほか、劇場型勧誘(※1)、還付金詐欺(※2)などの手口によってだまされてしまう高齢者が少なくありません。
※劇場型勧誘:劇場型勧誘は、複数の業者が役回りを分担し、パンフレットを送り付けたり電話で勧誘したりして、消費者があたかも得をするように信じ込ませて実体不明の金融商品などを買わせる手口。
消費者庁HP(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2013/honbun_2_column.html)より
※還付金詐欺:社会保険事務所の職員などを装って医療費を還付しますと騙し、お金を振り込ませる詐欺。
警視庁HP(https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/tokushu/furikome/furikome.html)
2-3.認知症やうつ病
認知症の最大の危険因子は加齢であり、日本の65歳以上の高齢者は、現在8~10%程度が認知症であると推定されています。
認知症のなかでも、アルツハイマー型認知症が最も多いという説が有力で、症状が進むと時間・場所・人物などの認識ができなくなり、一人での生活が困難となります。
また、すべての人が年を重ねるほど、さまざまな喪失を経験します。健康の喪失、退職や子どもの独立による社会的役割の喪失、収入が減少する経済的な喪失、家族や友人などの死による人間関係の喪失など、喪失感は高齢者のうつ病の誘因となり、単身での生活が難しくなります。
2-4.孤立死(孤独死)
誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される孤立死(いわゆる孤独死)も、社会問題としてニュースで取り上げられることが少なくありません。
数字を見てみると、独立行政法人都市再生機構が運営管理する賃貸住宅約74万戸で、2015年に確認された単身居住者の死亡者数(1週間を超えて発見されたもの、自殺や他殺などを除く)は179件であり、65歳以上であったのは136件、全体の約76%が高齢者の孤独死となります。
そのほか、東京都監察医務院の2015年のデータによると、東京23区内で、一人暮らしの高齢者が自宅で死亡した数は3,127人です。
参照サイト:
公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿医療ネット」
https://www.tyojyu.or.jp/
独立行政法人 国民生活センター「高齢者の消費者被害」
http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/koureisya.html
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」:認知症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html
第52回日本老年医学会学術集会記録 高齢者のうつ病
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/47/5/47_5_399/_pdf
内閣府 平成29年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/index.html
高齢者を孤独感から遠ざける方法
「孤独だな」と感じる状況は
- 誰とも話さない(会話などコミュニケーションのない状況)
- 誰にも頼れない(経済的に不安な状況)
といえますよね。
高齢者がそうならないように、社会・地域・家族ができることを見ていきましょう。
3-1.社会ができること
まず、当事者であるシニア世代が、何を望んでいるのか見ていきましょう。
内閣府が発表している「高齢社会白書」のなかにある、社会活動に関するアンケート結果によると、60~69歳では71.9%、70歳以上では47.5%の人が
- 働いている(仕事をしている)
- ボランティア活動をしている
- 地域社会活動(町内会や地域の行事など)に参加している
- 趣味や稽古事を行っている
と回答しています。
健康であれば65歳を超えても働き続けたいという人が多いので、社会としてできることは、高齢者も働ける環境を充実させることが大切です。
また教育機関や自治体が中心となり、年齢問わず学習できる場が増えることも望まれています。
高齢者が社会的な活動を行うメリットとしては
- 新しい友人を得ることができる
- 地域に安心して生活するためのつながりができる
- 社会に貢献していることで充実感が得られる
- 健康維持や身だしなみにより留意するようになる
などが挙げられています。
3-2.地域ができること
高齢者が実際に参加している社会活動にもあるように、町内会や地域の行事などに参加すれば、地域の人々とのつながりが生まれますね。
そのために、地域全体で高齢者が生活しやすい環境を整えられれば理想的です。
市町村の単位で考えると、災害時に助け合える仕組みを作ったり、バリアフリーな施設を増やしたり、高齢者が強引な訪問販売などの被害に合わないような取り組みも有効で、すでに対策が取られている自治体も多く存在します。
3-3.家族ができること
家族がすべきことは、コミュニケーションをとることです。もし近くにいなくても、電話やEメールなどを利用して会話すれば、高齢者の孤独感は薄れます。
また近年は、民間会社の「見守りサービス」も多様化しています。
郵便局のスタッフが高齢者の家を訪問し、その状況を離れた場所で暮らす子どもに郵便で連絡するというサービスもあります。
民間の警備会社は、高齢者の家に空調センサーや施錠確認センサー、非常ボタンなどを取り付けて、何かあったときは駆け付け、家族に連絡するというサービスも提供しています。
高齢の親が遠くに住んでいる場合は特に、利用価値のあるサービスですね。
高齢者向けのSNSを活用
3章でさまざまな提案をしましたが、そうはいってもこれまで地域で社会的な活動をしていなかった高齢者が、知らない人ばかりの集まりに参加するのは簡単ではないと思います。
そこで今注目されているのが、コミュニケーションツールである「SNS(Social Networking Service=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」です。
SNSと聞くと、「若い人たちが使うもの」というイメージがありませんか?
実は、高齢者の方にも多く利用されているのです。
SNSのメリットには
- 趣味を通じて新しい友だちができる
- うつ病や認知症などの予防・対策にも効果的
- などが含まれており、高齢者の孤独感を軽減するのにも活用できます。
高齢者グループに1日1回のSNS投稿を続けてもらい、8週間後に認知能力を調べるテストを行ったところ、認知能力が25%改善したというアリゾナ州立大学の研究結果も存在します。
(参照サイト: https://uanews.arizona.edu/story/should-grandma-join-facebook-it-may-give-her-a-cognitive-boost-study-finds )
世の中では、フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)、インスタグラム(Instagram)、国内ではライン(LINE)などのユーザーが多いのですが、同世代の友だちがほしい高齢者向きのSNSもいくつかあるので紹介します。
らくらくコミュニティ
https://community.fmworld.net/
ウェブ(インターネット)上で、いろいろな人と共通の趣味や話題を通じて交流することができる、コミュニケーションの場です。
- 母校の人々が集う同窓会グループや、地域コミュニティに参加している人々と会話を楽しめる。
- 「らくらくコミュニティ」で知り合った、趣味の合う仲間と盛り上がれる。
- 写真コンテストなどのイベントも開催されている。
などの特徴があります。
趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)
https://smcb.jp/
“趣味“と“meet(ミート=出会い)”と“クラブ“とを組み合わせた造語が「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」です。趣味でつながる大人世代のためのSNSであり、日記や写真、趣味のコミュニティを通して、新しい仲間と出会いが期待できるサイト。利用者の約7割が50代以上のシニア世代です。
Slownet(スローネット)
https://slownet.ne.jp/
“始める・繋がる“がテーマの、セカンドライフを楽しむアクティブシニアのためのコミュニティーサイト。60~70代を中心に、約8万人の会員が活動しています。
「趣味がない」「同世代との交流したい」と思っている人に優しいのが特徴です。
憩いの喫茶店.com
http://www.ikoi-cafe.com/
シニア世代の生き方さがし、助け合い、励まし合い、喜び合い、相談、安らぎ、友だちづくりを応援する、良識ある中高年のための温かいコミュニティサイトです。
「良識ある」という言葉を全面に出しているだけに、穏やかな雰囲気が漂います。
シニアコム.JP
https://www.seniorcom.jp/
シニア世代が集まり、ブログ・写真の投稿・メッセージのやり取り、サークル活動への参加などを通して、コミュニケーションを楽しむコミュニティサイトです。
「MASTER会員」になれば参加型企画が利用でき、サイト内で獲得したポイントを商品券やカタログギフトに交換できるサービスもあります。
まとめ
この記事では、高齢者の孤独(孤立)について考え、その対策を見てきました。
日本ではさまざまなライフスタイルの変化により、核家族や単独世帯、日中独居、パラサイトシングルなどの高齢者が増加しています。
特に単身世帯の高齢者にとっては、
- 日常生活動作(ADL)の低下
- 悪徳な業者による電話勧誘販売や家庭訪販(消費者トラブル)
- 加齢による認知症やうつ病
- 誰にも看取られない孤立死(孤独死)
などが大きな問題です。
そのような問題を減らすためにも、高齢者が孤立しないようにすることが不可欠です。
- 社会では、高齢者も働ける環境を充実させたり、学びの場を設ける
- 地域では、社会活動に参加しやすい状況や、高齢者が生活しやすい環境を整える
- 家族では、高齢者に孤独感を感じさせないよう、積極的にコミュニケーションをとる
それ以外にも多様な対策方法があり、すでに実施している自治体や家庭も多いと思います。
最近は高齢者向けのSNSも存在し、
- 趣味を通じて新しい友だちができる
- うつ病や認知症などの予防・対策にも効果的
などのメリットもあるので、高齢者の孤独感を軽減するのにも活用できます。
若年層だけでなく高齢者も適度にSNSを利用して、インターネット上でのコミュニケーションを楽しめれば、新しいつながりが得られるのではないでしょうか。
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