
「物忘れがひどい自覚がある」「ふとした瞬間に目的を忘れることがある」「認知症が怖い」このような悩みはないでしょうか?特に、物忘れと言えば認知症を連想させるため、「いよいよ認知症になってしまったのか」と不安に思う方もいるでしょう。
この記事では、物忘れの原因と対処法について解説します。認知症かもしれないといった不安を解消できるので、ぜひ最後までご覧ください。
監修者情報 |
柿野 俊弥 ・理学療法士免許 保有 ・脳血管疾患と整形外科疾患のリハビリテーション業務を経験 |
目次
物忘れがひどい原因は?ほとんどが「加齢」によるもの
物忘れには、「加齢」と「認知症」が原因となるものがあります。加齢または認知症による物忘れの違いは、「自覚症状の有無」です。認知症の物忘れは、忘れたことを自覚できないことが特徴的な症状になります。つまり、「物忘れがひどい」と自覚できている場合は、認知症ではなく、加齢による物忘れである可能性が高いということです。
加齢の物忘れでは、次のような忘れ方をします。
• 鍵やスマホの置き場所を忘れる(指摘されれば思い出せる)
• 今しようとした作業・目的を忘れる
加齢の物忘れは、脳の病気が原因ではないため記憶力にも問題はなく、生活にほとんど支障はきたしません。しかし、加齢による脳機能の低下を防ぐ取り組みは大切です。自身の状態を知るため、具体的に加齢または認知症による物忘れの違いを見ていきましょう。
物忘れの自覚がない状態は「認知症」の疑いあり
物忘れをしていることが自覚できていない状態の認知症では、次の症状が現れ、生活に支障をきたします。
• 人と約束したこと自体を忘れる
• 朝食を摂ったことを忘れる/指摘されても思い当たらない
• 新しいことを覚えられない
物忘れとともに危険を伴う場合(火の消し忘れなど)も少なくありません。認知症の疑いがある場合は、医師に診てもらうことが重要です。
しかし、認知症は周囲からの指摘で発覚する場合が多く、自身で気づくことは困難なため、不安なときは家族や友人に聞いてみるのも良いでしょう。
脳の疲れが原因の場合もある
物忘れは加齢や認知症以外に「脳疲労」が原因になる場合もあります。仕事や家事による疲れ、過度なストレスにより、一時的に脳の機能が低下する影響で物忘れが発生します。
脳への過剰な負荷は、制限を超える(キャパオーバー )と、物忘れやうっかりミスが増えてしまいます。
「最近、疲れていると感じている」「大きなストレスを感じる出来事があった」と思い当たる方は、脳に休息を与える時間を作ると、改善を見込めるでしょう。
【物忘れのレベル診断】認知症の疑いを確認しよう
物忘れのレベルや、認知症の疑いがあるかをセルフチェックしてみましょう。
もしかして病気の兆候?物忘れが起こる病気一覧
物忘れを起こす病気として、認知症は代表的な病気ですが、他にも物忘れを生じる病気があります。
• うつ病:過度なストレスで疲れやすさや倦怠感が現れ、物忘れが起こることもある
• 脳の病気:脳血管障害や正常圧水頭症などの脳疾患による脳機能障害が原因
• 睡眠時無呼吸症候群:睡眠時に何度も呼吸が止まる病気で、認知症の合併リスクがある
• 甲状腺機能低下症:新陳代謝の促進に関わる甲状腺ホルモンの分泌が低下することで、認知機能の低下が起こる
それぞれの病気で起こる物忘れは、加齢による物忘れとも、認知症による物忘れとも異なる特徴を持っています。例えば、うつ病での物忘れでは、突発的に近々の出来事を忘れてしまい、他にも気分の落ち込みなどの症状もあります。
しかし、認知症が併発する可能性や、どの病気の物忘れなのかを見分けることが難しいため、病院を受診して医師の診断を仰ぐと安心できるでしょう。
物忘れ予防に効果的な対処法
ここからは、物忘れ予防への対処法をご紹介していきます。すぐに実践できるものを挙げているので、ぜひ参考にしてください。
1回10分以上の有酸素運動
ウォーキングやジョギングなど、小~中程度の負荷を筋肉に与える有酸素運動 が認知症予防になることは、世界的に効果が確認されています。WHO発行の「認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン 」や、日本神経学会発行の「認知症疾患診療ガイドライン 」などの権威ある団体や学会においても、認知症予防に有酸素運動が効果的だと言及されているため、信憑性が高いと言えます。
WHOによると、具体的な有酸素運動として次の内容が推奨されています。
・週に合計150分の中強度の有酸素運動
中強度の有酸素運動は、静止している状態の3~6倍の負荷を体に与える運動量を指します。「少し速めのウォーキング」「軽いランニング」「水泳(平泳ぎなど)」「サイクリング」が中強度の有酸素運動に該当します。
・週に75分の高強度の有酸素運動
高強度の有酸素運動は、歩いている状態の2倍の負荷を体に与える運動量を指します。「ランニング」「水泳(クロールなど)」「軽い上り坂を進むサイクリング」が高強度の有酸素運動に該当します。
・週に合計300分の中強度の有酸素運動
150分ではなく300分を目安に中強度の有酸素運動を行うことも有効です。ただし、いきなり体の負担を大きくするとケガにつながるため、少しずつ時間と負荷を増やしていくことをおすすめします。
・週に150分の高強度の有酸素運動
75分ではなく150分を目安に高強度の有酸素運動を行うことも有効です。ただし、高強度とはいえ激しい動きをしてしまうと、過度な息切れを起こしてしまうため、50~70%程の運動強度をイメージするようにしましょう。
・有酸素運動は1回につき10分以上は続ける
有酸素運動は、1回につき最低でも10分以上行うことが推奨されています。
※上記の運動例は一例です。どれ程の負荷が体に加わるかは、人により異なる点にご注意ください。
いきなり体を動かすと体に大きな負担をかけてしまうため、最初は無理のない範囲(体操や軽いウォーキングなど)での有酸素運動を行うのも良いでしょう。
6時間よりも長い睡眠時間の確保
睡眠と認知症の関係はいまだ議論が重ねられていますが、睡眠不足は認知症のリスクを高める可能性が高いと言えます。6時間以下の睡眠が、認知症発症のリスクを上げるとの報告があることから、最低でも6時間よりも長い時間、睡眠時間を確保することが必要になるでしょう。
認知症の代表的な種類に「アルツハイマー型認知症」があります。アルツハイマー型認知症の原因は、「アミロイドβ」が脳に蓄積することなのですが、睡眠不足になると、アミロイドβを分解する能力が低下するという報告があります。また、睡眠不足は脳血管障害も起こすリスクになるため、脳血管障害から認知症になる可能性もあります。
多くの交流で記憶を司る「海馬」の萎縮予防に
家族や友人との会話、ペットとの交流など、多様な関係を持つ人の方が、認知症のリスクが低くなると報告されています。
「東京都健康長寿医療センター研究所」の研究によると、子どもとの世代間交流やボランティアの交流によって、記憶を司る「海馬」の萎縮が抑制されることが明らかになりました。
また、ペットの世話も認知症予防に効果があると言われています。例えば、犬の散歩をすると、自然に行き交う人との交流ができるほか、犬との幸せな時間を過ごせます。「幸せ」を感じると、認知症予防の効果が期待できる「オキシトシン」が分泌されます。
脳トレゲームで認知症のリスクを下げる可能性あり
脳トレとは、計算や間違い探し、ナンプレ (数字を使ったパズルゲーム)などを指します。専門的には認知刺激療法とも呼ばれ、認知機能に刺激を与えることで、いくらか認知症予防になるとされています。
WHO発行の「認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン 」でも「認知機能低下や認知症リスクを低減するために行ってもよい」と記載されています。
ただし、物忘れや認知症予防として、脳トレが確立されているわけではないため、積極的な推奨はされていませんが、「行わない」よりは行うべきと言えるでしょう。
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声だしや指さしで脳を刺激
声だしや指さしは、医療や交通機関、工事現場などでミスを防ぐ対策としてよく取り入れられていますが、物忘れ対策としても役に立ちます。よくありがちな「玄関のドアを閉めたかどうかが分からなくなる」で考えてみましょう。
鍵を閉めた後、指をさしながら「閉めた」と声にだすと、閉めたことを再確認するためにドアを「見」て、確認の声を「聞」き、腕や指の動きに伴って脳に刺激を与えることができます。声だしや指さし確認をしないときと比べると、脳への刺激が非常に多く、記憶に残りやすくなります。
物忘れ予防に効果的な食品・栄養素
ここからは、物忘れ予防を期待できる食品と栄養素を紹介していきます。栄養バランスの摂れた食事に加え、ぜひここで紹介する食品や栄養素を摂ることを実践してみましょう。(※ここで紹介した食品や栄養素ばかりを摂れば、物忘れをしなくなるわけではありません)
大豆に含まれる「イソフラボン」
大豆には、認知機能の低下を防ぐ効果があると言われている「イソフラボン」が多く含まれています。認知機能の維持には、神経から神経へ情報を伝達する「アセチルコリン」が重要です。イソフラボンは、アセチルコリンの活動を間接的に促進する効果があると報告されています。
さらに、イソフラボンは神経の維持や発達を活性化することも報告されており、大豆は物忘れや認知症予防に効果があると期待できます。
魚に含まれる「EPA」や「DHA」
サンマやイワシなどに、認知症予防の効果を期待できる「EPA」とその一種である「DHA」が含まれています。オメガ3脂肪酸と呼ばれる栄養素で、悪玉コレステロールを減らす効果が期待できます。
悪玉コレステロールは、脳血管障害や糖尿病といった生活習慣病を起こす原因の1つです。さらに、生活習慣病は、記憶などの認知機能を低下させる可能性があるため、EPAやDHAの摂取で、間接的に物忘れや認知症の予防につながると言えます。
オリーブオイルに含まれる「オレイン酸」
フランスで行われた10年間にわたる調査で、オリーブオイルの消費量が多いほど認知機能の低下を抑えられたという報告があります。(参考:National Library of Medicine)
オリーブオイルの主成分「オレイン酸」は、先述した「DHA」や「EPA」と同じように、悪玉コレステロールを減らす効果が期待できます。
また、オリーブオイルには身体の酸化を防ぐポリフェノールとビタミンEも含まれているため、さらなる生活習慣病の予防につながると考えられます。
どうしても不安な場合は「認知症の兆候」をチェックしよう
「物忘れがひどい」と自覚できている場合は、認知症の可能性が低いと解説しましたが、どうしても不安な方もいると思います。下記の「認知症の兆候」をチェックして、自分がどちらに該当するか見比べてみましょう。
加齢による物忘れ | 認知症による物忘れ |
今日の朝食で何を食べたか思い出せない | 今日はまだ朝食を食べていないと思う |
時々物を置いた場所がわからなくなる | 物を置いた場所がわからずよく物をなくすようになった |
ヒントがあれば思い出せる | ヒントがあっても思い出せない |
顔を見て知人だとわかるが名前を思い出せない | 身近にいる人が誰だかわからない |
日時や場所はわかる | 日時や場所がわからない |
記憶力に問題はない | 新しいことを覚えられなくなった |
趣味や活動の意欲がある | いろいろなことへの意欲がなくなった |
「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の兆候を確認して、加齢による物忘れの徴候に該当する方は、認知症の可能性は低いと言えます。ただし、自身での判断が難しく、不安を感じている方は、医師の診断を受けた方が確実です。
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まとめ
物忘れが起こる原因には、「加齢によるもの」と「認知症によるもの」があります。物忘れがひどいと感じている方のほとんどは、加齢によるものです。
しかし、気づかないうちに認知症が発症する可能性は考えられるため、有酸素運動や睡眠、物忘れ・認知症予防に良いとされる食品の摂取などを、普段から意識することが大切です。
不安を拭いきれない方や、認知症かもしれないと思った方は、脳神経内科・外科や精神科を早めに受診しましょう。