
高齢になった親の介護をしてあげたくても、自分たちの生活も守りながら介護を長期間続けるのは大変です。精神面のケアは家族がして、介護サポートは適切な施設でプロにお任せするのが最善策でしょう。
介護付き老人ホームは、まさにそのようなスタイルの介護サポートを目的とした施設なのですが、さまざまな種類の施設が存在するため、パンフレットをいくつか取り寄せて比較しても、自分の親にとって、どこが最適なのかをうまく選び出せないことがあります。
そこで今回は、介護付き老人ホームについて以下のようにまとめました。
- 介護付き老人ホームは「介護」「場所」「費用」で選ぶ
- 介護付き老人ホーム5タイプ別 特徴10項目
- 特別養護老人ホームに入居するために
- 介護付き老人ホーム選びで注目すべき7項目
最後までお読みいただければ、介護付き老人ホームの中で、自分の親にはどの施設が適切であり、「今・どこ」を選ぶべきなのかがわかります。
また、費用面から見た時にも、親と家族に無理のない範囲で長く介護ができるような施設が選べるようになり、各施設の書類のどこを重点的に見れば比較ができるのかがわかります。
目次
1. 介護付き老人ホームは「介護」「場所」「費用」で選ぶ
介護付き老人ホームとは、そこに入居すれば、施設のスタッフから介護サービスが受けられる高齢者向けの専門施設です。
自治体(都道府県・市町村)からの許認可を受けた施設だけが、介護保険制度上の「特定施設入居者生活介護」という制度を適用できるため、介護付き老人ホームは、基本的には介護保険が適用できる施設のことを指します。
介護サポートがついている老人ホームは、大きく分けて以下の5種になります。
A.特別養護老人ホーム
B.認知症グループホーム
C.ケアハウス
D.サービス付き高齢者向け住宅(特定施設のみ)
E.民間の介護付き有料老人ホーム
介護付き老人ホームへの入居を検討されている方は、この5種の中から、介護度と家庭の状況に適したものを選んでいくことになります。
介護付き老人ホームは必要な基準を満たして許認可が下りてさえいれば、どのような体制で運営しても良いため、サービス・スタッフ・部屋・設備などが、ホームによって大きく違い、選ぶのが難しいほどバラエティに富んでいます。
自分と家族にとって適切なホームを選び、必要な介護を・必要な時に・必要なだけ受けていくためには、
- どのようなケアを
- どこで
- いくらでしてもらうのか
を入居する本人と家族で徹底的に話し合い、そのうえで、「今」の状況にあったところを選ぶ必要があります。選び方が不適切だと、入居する親に居心地の悪い思いをさせることになり、最悪の場合は、今ある病状の悪化や老化を早めてしまうこともあります。
以下のチャートは、介護付き老人ホーム選びの参考にしてください。ABCDEの各タイプは、2章で詳細説明があります。
1-1. 介護・場所・費用について家族で話し合うべき3ポイント
家族全員にとって最も良い介護付き老人ホーム選びのために、家族でよく話し合っておく3つのポイントをまとめました。
1-1-1. 家族の話し合いポイント1 介護度 「うちの親にはどの程度の介護が必要なのか」
これから入居予定の方が、現時点でどのくらいの介護を必要としているかを確認し、「必要としている介護」をしてくれる施設の中から選びます。
また、入居時から介護の状態が変わったときに、そのままそこで暮らせるのかどうかも確認しておきます。
介護の必要度は、「要介護認定」*という公的な判断基準があります。特に、公的な福祉施設サービス(特別養護老人ホームなど)に入居する際には、この基準に合ったところにしか入れません。
民間施設でも、基準として設けた要介護認定の重さで、入居できる施設が変わってきます。
<*介護度合いの基準「要介護認定」>
要介護認定とは、介護サービスの必要度(今、どれくらいの介護サービスを行う必要があるか)を判断する公的基準です。病気の重さとは比例せず、介護の総量で判断します。
例えば、重度の癌があっても日常生活は出来ているAさんと、認知症の症状があり、時に夜間徘徊などがあるBさんでは、Bさんのほうが介護の総量が多くなります。
正確な判断が求められるため、コンピュータによる一次判定と、それを元にした保健医療福祉の学識経験者による二次判定の二段階で慎重に判断をします。
施設を選ぶ時には、入居予定者の「現在の状態」に合ったところを選ばないと、居心地の悪い思いをさせることになります。
例えば、身の回りのことはまだまだ自分でできる状況なのに、重度の要介護入居者が多いところに入ってしまうと、自分でできることまですべてスタッフにさせることになります。(例:排泄や入浴)そのような環境下では、周りの入居者やスタッフとなじむのは難しいでしょう。
一度入居した場所から短期間で再び引っ越しをするのは、若い人でもかなりの精神的・肉体的な労力がかかります。高齢になってからの頻繁な住み替えは、心身ともに健康状態の悪化を招く可能性が高まることもわかっています。
要介護度の診断があると介護保険の適用があり、費用面では助かります。この点に関しては、入居者である親の理解と協力が必要です。
【参照:沖縄県立看護大学紀要 赤星成子ほか「国内文献にみる高齢者のリロケーションに関する研究の現状と課題-リロケーションの理由とリロケーションダメージに着目して」】
1-1-2. 家族の話し合いポイント2 場所 「どこの地域で見てもらうのか」
介護付き老人ホームの場所を、どこにするかという問題です。
- 親の住んでいる地域
- 子供が住んでいる地域
- 親と子の中間
という3つの選択肢があります。ただし、公的施設やサービスを選ぶ場合は、原則的に、その地域に住民票のある高齢者を優先して入居させるため、親の地元にするほうが良いでしょう。
親が元気な状態でのホーム入居であれば、親の意志で住みたい場所に決定できます。
しかし、入院や介護が必要になってから施設を選ぶ場合は、将来、子世代が在宅介護をすることができず、最期まで施設でのサポートが必要になるケースを想定し、子供がリーダーシップをとって場所を決めていく必要があります。
場所の決め方は大きく分けて2パターンあります。
①パターン1 すでに親と同居 または近い場所に住んでいる場合
親子とも近隣に住んでいる場合は、家の近所から探すのが一般的です。病気やケガなどのために介護付き老人ホームに入った場合でも、順調に回復すれば在宅介護や通いでの介護に切り替えることも可能です。
親子とも、今までの生活スタイルを大きく変えないままで、介護がスタートできます。
②パターン2 遠距離の場合
遠距離の場合、親の近くか子の近くかで悩むことになります。それぞれ、メリット・デメリットがあります。
場所 | メリット | デメリット |
親の家の近く | 親には馴染みやすい | 子供に交通費と時間体力負担がある |
子の家の近く | 子供は負担が少ない | 親は馴染みにくい環境で不安負担 |
・親の家の近くの施設
メリット
親の家の近くの施設は、親は馴染みやすいでしょう、食事の味付けや方言なども気にならず、施設に知り合いがいる可能性もあります。
また、施設外には見慣れた風景もあり、外に出れば、知人友人との付き合いも今まで通りです。通院先も変えずに済みますので心理的な不安もありません。
デメリット
ここに子供が頻繁に通うのには、時間と交通費と労力がかかり、家族と職場に大きなしわ寄せが来ることがあります。また、施設に入っていても、体調の急変などで「すぐ来てください」と施設からお呼びがかかることがあります。
その場合は、仕事先から飛んで帰って、病院に連れて行かなければならないことがあります。
・子の家の近くの施設
メリット
子の家の近くに施設を選んだ場合、子供は親に会いに行きやすく、サポートもしやすくなります。
仕事を今まで通りにしながら、親の面倒が見られるので、職場と家族へのしわ寄せが出にくい傾向があります。
デメリット
親にとっては食事の味付けや、方言・慣習が違う馴染みのない場所になるため、落ち着くまでに時間がかかります。移動と同時にかかりつけ医が変わってしまうため、病状に対しても不安になりやすい傾向があります。
近所に知人友人もおらず、周辺の風景などにもなじみがないため、介護で思うようにならない体調とあいまって、心細い思いをさせることになります。
介護付き老人ホームの場所選びは、正解のない難しいテーマではありますが、家族それぞれのメリット・デメリットを検討したうえで、今後どういう介護をしていくかを全員でよく話し合いましょう。
そのうえで、親にまだ判断力があれば、親の意見もしっかり聞きましょう。家族と兄弟の協力体制の確認なども含めて総合的に判断するようにします。
1-1-3. 家族の話し合いポイント3 介護費用
介護費用は「いくらかかるか」ではなく、「いくらかけるか」で考えます。
つまり、予算を決め、その範囲内で介護を収めるという考え方をします。かかる費用は世帯の年収などによって変わってきますので、支払う金額は、入居前の時点でもだいたいのことがわかります。
1-1-3-1.介護保険の負担割合が何割かを確認する
介護保険の負担割合は65歳以上の方がいる世帯の、本人または世帯収入で決まります。つまり、親が単身で住んでいるのと、働き世代の子供と同居している家庭では、負担事情が大きく変わってきます。以下は、厚生労働省のサイトをもとに、介護保険の負担割合を分けたものです。
例えば10,000円の医療費に対し、1割なら1,000円、2割なら2,000円と負担割合が変わります。負担割合は確定申告(住民税)をもとに毎年7月更新、7月末までに自治体から通知ハガキが来ます。
【参照:厚生労働省 平成30年8月から 現役並みの所得のある方は介護サービスを利用した時の 負担割合が 3割になります】
1-1-3-2.介護保険で月額どのくらいまかなえるのかを確認する
介護保険制度を使えば、前項で説明した通り1~3割負担でサービス利用ができますが、これはあくまで利用限度額までの話で、限度額を超えると10割負担になります。以下の表Aは、サービス利用限度額の中から、要介護1~3を抜粋したものです。例を出して計算してみましょう。
【表A 介護保険の利用限度額表】
介護度 | ①月額限度額 | ②平均受給額 | ③限度額を超えた人の割合 |
要介護1 | 165,800 (166,920)* 円 | 75,800円 | 2.1% |
要介護2 | 194,800 (196,160)円 | 104,560円 | 4.2% |
要介護3 | 267,500 (269,310) 円 | 156,700円 | 4.5% |
* 平成25年介護給付費実態調査を基に作成。( )は平成26年4月1日以降。
【参照:厚生労働省 区分支給限度基準額についてPDF】
例)親の介護が必要な状況 要介護1の認定済 1割負担の年収の場合
例えば、親に介護の必要があり、要介護1(緑の部分)の認定を受けたとします。この場合、介護保険の利用限度額は①166,920円で、1割負担ならば16,692円です。
要介護1の平均受給額②は75,800円と、利用限度額を超えた介護費を出している人は③全体の2.1%であることから、介護が必要なほとんどの家庭では、介護保険の利用限度額内で介護をしていることがわかります。
この例の場合は、介護サービス費が①の限度額である166,920円以上になると、そこからは10割負担になります。
【参照:公益財団法人生命保険文化センター 平成30年度 生命保険に関する全国実態調査】
1-1-3-3.介護のお金はどこから捻出するか 予算と資金計画
介護保険を利用しても、ホームなどの施設入居をした場合は、自己負担分が発生することがわかりました。この介護費用は、基本は親の資金で賄うことを前提に計画します。そのためには、
・年金
老齢基礎年金以外に、企業年金や個人年金があるか
・預貯金
現金資産でいくらあるか
・不動産
今住んでいる家の売却は可能か、それ以外に不動産があるか
・その他の資産
上記以外の資産(株・車・美術品など)があるかどうか
など、親の資産状況の確認が必要であり、家族への情報開示をしてもらう協力も必要です。また、これらの話は、将来の相続問題とも関わりが深いため、親の介護がスタートする前の段階で、家族でよく話し合っておく必要があります。
ここまでの情報を総合し、年金や資産ともに予算があまりない場合は、所得によって軽減制度のある介護保険施設から選ぶことになります。
潤沢な資金がある場合は、資産状況に応じて、有料の介護付き老人ホームなど、介護保険の利用限度額を超えた介護から自由に選べます。
2.介護に関する総合的な相談先3つ
本項では、介護のことがまるで分からないところからスタートする場合でも、頼りになる相談先をまとめました。
2-1. 地域包括支援センター
地域包括支援センターは、その地域の介護サポートに関した情報をまとめて入手できる場所であり、介護についての総合相談窓口的な役割を担う場所です。
センター内には
・社会福祉士
福祉サービスが必要な人の相談に応じ、助言や援助を行う専門職
・保険師(看護士)
健康な生活が送れるように手助けをする専門職
・主任ケアマネジャー
ケアマネジャーとして一定のキャリアと研修を積んだ指導的な立場を担う専門職
などの福祉に関した資格を持つ職員が、その専門性を生かして、以下のような幅広い分野のアドバイスをしてくれます。
- 生活での困りごとや心配事全般
- 介護保険・その他保険や福祉サービスの紹介と利用手続きサポート
- 認知症などの病気で判断能力がなくなった場合の成年後見人制度の手続き援助
- 高齢者介護をしている家族へのサポート
- 介護保険の認定が要支援1~2だった場合や、将来に介護が必要となる可能性が高いと判断された場 合の介護予防マネジメント*作成 (*必要な介護やサポートが何かを判定し、適切なサービスが受けられるようにする)
- 高齢者の虐待に関すること
- 遠距離介護の心配ごとと対処方法
【*参照:東京都渋谷区 介護予防マネジメント作成手順】
など、高齢者本人とその家族のための具体的な相談対応をしています。現段階で、入院や介護の必要がない場合でも相談できますので、少しでも気がかりなことがある場合は、まず相談してみましょう。
住所地ごとにセンターの管轄が決まっているので、相談は、親の住所の地域センターに行きます。場所や連絡先がわからない場合は、親の住所がある役所に連絡をすると教えてくれます。
上記の相談内容以外にも、自治体ごとに地域の独自サービスなどがあり、相談を具体的にしなくても、センターに行けば、介護に関したあらゆる資料が揃っていて、無料で資料が手に入ります。
また、地域包括支援センターでは、介護保険の代理申請もしています。
親本人が役所まで出かけられない状態や、子供も遠距離ですぐに親元に行かれない場合などには、地域包括支援センターで代行申請を依頼できます。
この場合は、職員が親元に訪問し、手続きを代行してくれます。
2-2. 親の地域の高齢者福祉担当窓口
主に介護と福祉に関した総合的な情報を一括でもらえ、相談もできる場所で、地域包括支援センターと同様の機能を持つ場所として各自治体の役場の中などにあります。
内容は地域包括センターと同じですが、自治体の大きさや、地域の在住者数などによって、高齢者福祉担当窓口で全対応をしています。地域によって「福祉課」「長寿サポート」「高齢者支援」という名前のこともありますが、すべて内容は同じです。
2-3.NPO法人支えあい医療人権センター コムル
医療に関した相談をする場所です。治療をされる側の立場になって医療を考えるための機構で、日本にインフォームド・コンセントの概念を広く知らしめた団体でもあります。
治療とその後の介護を受けるにあたって、本人と家族が「受け身ではない」状態で、希望に沿ったサポートを受けるために、第三者的な立場の意見を参考に、別の診断との比較検討をし「賢い患者になりましょう」を合言葉に、すべてを納得したうえで治療と介護を開始できるようにします。
主に東京と大阪での電話相談・ディスカッション形式のスクール・講義などを通じ「担当医師に聞きたいことが全部聞けた状態」になることを目指しています。患者本人とその家族が参加でき、未病の状態でも勉強のために参加できます。
3.介護付き老人ホーム5タイプ別 特徴10項目
本章では、1章で使ったチャート診断をもとに、介護付き老人ホームの5タイプ別の特徴をまとめました。それぞれの診断結果のところを確認してください。
名称 | 要介護度 | 初期費用 | 負担軽減 | 認知症受け入れ | 地域条件 |
A 特別養護老人ホーム | 要介護3~ | なし | ◎ | 〇 | 全国どこでも |
B グループホーム | 要介護2~ | 0~100万 | △ | 〇 |
住民票のある自治体のみ |
C ケアハウス | 要支援1~ | 0~数百万 | 〇 | 〇 | 全国どこでも |
D サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) | 要介護1~ | 0~1億円 | △ | 〇 | 全国どこでも |
E 民間の介護付き有料老人ホーム | 要支援1~ | 0~1億円 | ✖ | 〇 | 全国どこでも |
3-1. Aタイプ 特別養護老人ホーム
1. 特徴
介護保険で入居できる施設で「特養」とも呼ばれています。低コストのために人気が高く、待機者が多い地域もあります。入居から看取りまでの対応がある施設がほとんどです。
2.申し込み地域
基本的には全国どこでも申し込めますが、住民登録のある方を優先するので、親の住民票がある地域のほうが入居はしやすい傾向があります。
3. 入居対象者
常に支援や介護が必要な状態の65歳以上の方で、自宅での介護が困難であることが条件です。申し込み順ではなく、緊急性の高さで優先順位が決まります。
4. 介護度
入居申し込み時に、要介護3以上の診断を受けている方が対象です。
5.初期費用めやす
初期費用はありません。
6. 月額利用料
月額利用料の平均は5~10万円、施設サービス費・居住費・介護費・食費・日常生活費などを含んだ金額です。所得による負担軽減によって利用料が変わります。詳細は8項を参照してください。
【要介護4の1人親が入居 所得軽減がない場合】
施設サービス費 | 居住費1日 | 食費1日 | 日常生活費 | 合計 |
778円×30=23,340 | 840円×30=25,200 | 1,380円×30=41,400 | 10,000円程度 | 99,940円 |
【参照:厚生労働省 サービスにかかる利用料】
7. 認知症受け入れ
認知症の受け入れをしています。
8. 所得による負担軽減
利用者負担の軽減があります。軽減対象は、入居する人と同じ世帯に住む人全員の所得が低く、住 民税が非課税の場合になります。つまり、同じ世帯に働き盛りの息子や娘が同居している場合は、補助は受けられません。
親世帯だけの場合で、負担軽減を受けるためには以下の条件が必要です。(2021年2月現在)
- 夫婦そろって住民税が非課税であること
- 資産が預貯金で夫婦で2000万円以下・単身で1000万円であること
項目6の「月額利用料」で使った例を参考にすると、仮に、前年の合計所得金額と公的年金収入額
合計が年間80万円以下だった場合は以下(黄色部分)のように約半額なります。
【要介護4の1人親が 貯金1,000万円以下、住民税非課税で負担軽減の第2段階を適用した場合】
| 施設サービス費 | 居住費1日 | 食費1日 | 日常生活費 | 合計 |
適用前 | 778円×30=23,340 | 840円×30=25,200 | 1,380円×30=41,400 | 10,000円程度 | 99,940円 |
適用後 | 上限額15,000円 | 370円×30=11,100 | 390円×30=11,700 | 10,000円程度 | 47,800円 |
【参照:厚生労働省 サービスにかかる利用料 負担限度額第2段階を適用】
9. 入居スピード
入居スピードは特別養護老人ホームの混雑具合によります。低コストで的確な介護が受けられる施設ですので、人気が高く、順番待ちです。
入居は申し込み順ではなく、入居予定者の介護の緊急度合いに応じて優先度が決まります。スムーズに入居するためのコツは3章にまとめがありますので、特別養護老人ホームの入居を検討している場合は、参考にしてください。
10.看取り対応
看取り対応があります。特別養護老人ホームの介護報酬欄には「看取り介護加算」の記載があります。
看取り介護加算とは、看取り期にある入居者について、本人や家族とともに、医師・看護職員・介護職員などが共同して、随時、本人や家族に対して十分な説明をしつつ、合意を得ながらその人らしさを尊重した看取りができるように支援することに使われる費用です。
本人にエンディングプランなどがある場合なども含め、入居時に看取り指針・体制について本人と家族が説明を受けます。その上で、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意思表示をしておくことを指します。
3-2. Bタイプ 認知症介護「グループホーム」
名称 | 要介護度 | 初期費用 | 負担軽減 | 認知症受け入れ | 地域条件 |
B グループホーム | 要介護2~ | 0~100万 | △ | 〇 | 住民票のある自治体のみ |
1.特徴
正式名は「認知症高齢者グループホーム」と言います。認知症の高齢者が家庭的な雰囲気の中、5~9人くらいで共同生活を送りながら、日常生活の介護を受ける場所です。
居室・リビング・食堂・浴室などを備え、利用者がそれぞれホームの中で役割をもって家事をするなどして、認知症の症状の進行を緩和しながら安心した生活をすることが目的です。施設というよりも、家庭に近い雰囲気です。
2.申し込み地域
住民票のある自治体のみ申し込みができます。
3.入居対象者
基本的に、要支援2~と、要介護1~5で、さらに認知症と診断された高齢者です。自治体サービスの中でも、地域密着型サービスとなるため、原則的に施設のある市区町村に住んでいる人が対象です。
4.介護度
要支援2~と、要介護1~5で、認知症の診断がある人が対象です。
スタート時点が比較的軽い症状でも入居できます。毎日の生活に支障はないが、なんとなく1人にしておくのが不安な場合などでも入居対象となります。
また、認知症の診断がある状態で日常生活に問題はないが、本人が「日常生活に不安」を感じているのであれば、入居対象となります。
5.初期費用めやす
施設のあるエリアや立地により、初期費用が発生する施設があります。施設の重要事項説明書欄に記載があります。都心部などの、比較的、地価の高い地域は初期費用が発生する傾向があります。
6.月額利用料
要介護度別に決められた負担額の1~3割です。生活するための場ですので、居住費は家賃に相当し、立地の良し悪しで値段に幅があります。
認知機能の衰えていない部分に関しては健常者と同じですので、プライバシーに配慮をし、基本的に個室です。また、日常生活費は別途負担です。(1万円程度)
7.認知症受け入れ
認知症症状のある高齢者の受け入れ専門施設です。
8.所得による負担軽減
地域によって負担軽減策が違うので自治体に確認して申し込みをします。また、自治体によっては居住費と食事の負担軽減をするための独自補助をしているところもあります。
【参考:東三河市グループホーム入居者負担軽減事業】
9.入居スピード
グループホームは5~9室(個室なので5~9人)のグループで共同生活をする場所です。そのため、空室があればすぐに入居できます。居室の空き確認と同時に、良質なホームを選び、面談などにも時間が必要です。
なるべく早く入居をするためには、先に地域包括センターでグループホームの空き状況を確認します。ネット検索はサイトによっては情報更新が遅れている場合がありますが、地域包括センターであれば、その場で電話確認をしてくれます。
いくつかの施設を見学し、入居申し込みをすると、入居候補先の責任者との個人面談があります。
この面談には本人と家族が同席します。面談とは別日に、入居希望先のスタッフが家に訪問をし、毎日の暮らしと健康状態などの確認に来ます。
このように、生活を共同ですることが前提ですので、普通の入居や入院とは違うポイントで審査があります。
10.看取り対応
看取り対応は施設によります。グループホームは、普通の暮らしをする場所ですので、医療用設備が整っていません。
そのため、医療依存度の高い状態になると、退去を命じられることがあります。ただし、認知症の症状のままで看取ることは、施設によっては可能です。
入居時に看取り指針・体制について本人と家族が説明を受けます。その上で、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意思表示をしておきます。
3-3. Cタイプ ケアハウス
名称 | 要介護度 | 初期費用 | 負担軽減 | 認知症受け入れ | 地域条件 |
C ケアハウス | 要介護1~ | 0~数百万 | 〇 | 〇 | 全国どこでも |
1.特徴
軽費老人ホームC型という、社会福祉法の中で定められた福祉施設のひとつで、「公的要素の強い低料金老人ホーム」という位置づけです。
運営には、社会福祉法人・地方自治体・民間の3種があり、国からの運営助成金が出ているため、どこも低コストなのが特徴です。
介護がしっかりとしたケアハウスを希望する場合は、「特定施設」(特定施設入居者生活介)という指定があるところにすれば、スタッフによる介護サービスが提供され、内容的には民間の介護付き有料老人ホームと変わりません。
2.申し込み地域
住民票のある自治体のみが対象です。全国どこでも申し込みができますが、利用者の住民票がある地域が優先される施設もあります。
3.入居対象者
ケアハウスには自立型と介護型があり、介護が必要な場合は、「特定施設」の指定があるところを選びます。介護のあるケアハウスは、65歳以上*で以下のような方が主な対象です。
- 自炊ができない程度に身体機能が低下している方
- ひとり暮らしに不安がある方
- 身寄りがなく、家族からの援助が受けられない方
- 家族との同居が困難な方
夫婦の場合は、どちらかが65歳以上であれば入居できます。
*介護サービスのつかないケアハウスであれば、60才以上で入居できます。
4.介護度
介護型である「特定施設」に入るには、要介護1以上の認定が必要です。「特定施設」の指定があるケアハウスであれば、今後、要介護が重度になっても他所に移動せずにそのまま住み続けることができます。
この「特定施設」の指定のないところに入ってしまうと、介護サービスは個別の別途契約になり、介護が重くなった場合などに、介護サービスの外注費が嵩んでしまいますので注意が必要です。医療ケアに関しては、施設ごとに違いがあります。
5.初期費用めやす
初期費用は施設によって違いがあり、入居費がほとんどない~数年分を一括払いするところまで多種多様です。初期費用の多い・少ないは、主に、エリアと立地条件(高級住宅街や駅前などの地価)が影響しています。特に、都心部においてはその傾向が強くあります。
ただし、一時金などの初期費用を設定している施設では、民間の有料老人ホーム同様に、入居者の背景に合わせ、さまざまな支払いプランを用意してくれています。
6.月額利用料
ケアハウスの月額利用料には3種の基本料金があり、それぞれ、めやす金額設定があります。
- 居住費(賃料として3万円前後)
- 生活費(食費として4万円前後)
- サービス提供費(入居者の年収に応じて1~10万円)
上記のめやす金額を、1~3割負担します。
入居は、ケアハウスと利用者の直接契約になるので、万が一、想定していた料金設定と違った場合でも、行政が間に入って解決をしてくれません。
必ず、希望しているプランのある施設であることを確認してから申し込みをしましょう。
7.認知症受け入れ
認知症の受け入れをします。医師による認知症の診断書が必要です。
8.所得による負担軽減
月額利用料の中で「サービス提供費」のみ、入居者の世帯所得の状態によって1~4段階の軽減措置適用があります。公的側面の強い介護施設のため、経済状況が苦しい状態でも入居ができます。
【参照:厚生労働省 サービスにかかる利用料】
【参照:軽費老人ホームにおける生活困難者等による利用者支援のあり方に関する調査研究事業 報告書】
9.入居スピード
低コストで民間の介護付き老人ホームと同程度のサービスが受けられるため、特別養護老人ホームと同じくらいの人気があります。
地域サービスのため申し込みできる場所が限定されていますが、緊急の場合は他地域の施設でも入居可能です。
10.看取り対応
看取り対応は施設によって違いがありますが、おおむね、看取り対応はあります。確認方法は、重要事項説明書に「看取り介護加算」の説明があるかどうかでわかります。
入居時に看取り指針・体制について本人と家族が説明を受けます。その上で、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意思表示をしておきます。
3-4.Dタイプ サービス付き高齢者向け住宅(特定施設のみ)
名称 | 要介護度 | 初期費用 | 負担軽減 | 認知症受け入れ | 地域条件 |
D サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) | 要介護1~ | 0~1億円 | △ | 〇 | 全国どこでも |
1.特徴
サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者ケアの専門家による安否確認と生活相談をベースに、高齢者が日々安心して暮らせるように整備された「見守り機能のある高齢者向け住宅」です。主に民間業者が運営をしています。サ高住、サ付きとも呼ばれています。
ただし、都道府県単位で許認可登録された高齢者向き賃貸住宅で、「特定施設」の指定を受けたところは「見守り+介護サービス付きの住宅」になります。本記事をお読みの方には、こちらの介護がついている住宅が該当します。
【参照:高齢者住まい法】
2.申し込み地域
全国どこでも、好きなところに申し込みができます。ほとんどのサービス付き高齢者住宅は民間業者が運営していますので、地域指定などもありません。
ただし、地域包括支援センターと地域医療との連携が前提となっているため、持病などがあってかかりつけ医などがいる場合は、地域から探したほうが入居者のためには良いでしょう。
3.入居対象者
入居対象者は以下の2通りです。
60才以上の高齢者 |
|
・60才以下の方 |
|
60才以上の高齢者が入居した場合、将来、病状や介護が重くなった場合でも、長期入院や介護を理由に退去を命じられることはありません。ただし、連帯保証人が立てられない場合は、入居が難しい可能性があります。(地域包括支援センターで相談をしてください)
4.介護度
自立~要介護度5の範囲で入居可能です。
5.初期費用めやす
介護サービス付き高齢者向け住宅の初期費用は、以下のどれかに該当します。運営業者によって初期費用に対する考え方が違います。どの方法であっても、ある程度まとまった金額は必要になります。
・入居一時金(賃料の前払いタイプ)
ほとんどの介護サービス付きの高齢者向け住宅では、数か月~数年分の賃料前払いを入居一時金として設定しています。家賃を前払いしているので、その間の月額家賃は不要ですので、月の支払いは楽になります。
・敷金・礼金(一般の不動産と同様タイプ)
前項の入居一時金の代わりに、普通の賃貸契約と同様の敷金・礼金を初期費用として設定している運営会社もあります。敷金は退去後の部屋掃除や瑕疵の修繕などに充てられ、残金は返却されます。礼金はオーナーへの謝礼なので、返金はありません。
・保証金(保証料としてお金を預かるタイプ)
保証金を設定しているところもあります。保証金は、入居一時金・敷金や礼金とは少し違い、万が一、月額費用などが払えなくなった時などに支払いに充当するためのお金として賃料の3~6か月分を、入居時にオーナーが預かります。支払いに滞りがなければ、退去時に全額清算されます。
6.月額利用料
サービス付き高齢者住宅の月額利用料に含まれている内容は以下の通りです。
・賃料(管理費 共益費)
サービス付き高齢者住宅のパンフレットなどに「家賃」と書かれている部分です。エリアや立地条件によって大きく差が出ます。
専用の検索サイトなどで地域相場の把握ができます。探し方は、ご自身がサービス付き高齢者住宅を探している地域をクリックし、検索結果の中から、ご希望の地域名などを頼りに探していきます。
【参照:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム】
・食費(自炊もあり)
食堂や配膳サービスがある場合は、利用料に食費が含まれています。施設によっては自炊もできますので、食費を「なし」~「利用ごとの負担」にすることもできます。
・生活支援サービス
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認と生活相談サービスの提供が義務付けられているので、見守 りと生活相談に関したサービス利用料は、利用しなくても必ずかかります。
※介護サービス(定額制の場合のみ)
介護保険適用の介護サービスを定額制にしているところは利用料として含まれていることがあります。
定額制は、介護が多めに必要になり、上乗せサービスになった場合でも、その分の追加がありません。(例:人員が足りなくて介護スタッフ派遣を増員した場合の人件費など)
介護サービス費用が利用料に含まれない場合は、介護サービスの利用分だけを本人の年収に合わせて1~3割負担します。
7.認知症受け入れ
基本的に認知症受け入れをします。ただし、介護サービス付き高齢者住宅は、医療対応設備のレベルがまちまちですので、将来、認知症以外に医療依存度の高い状態になった場合は、他の施設への転居を促されるケースもあります。
ただし、サービス付き高齢者住宅は、高齢者にとっての「終の棲家」としての役割もありますので、長期入院などの理由で退去を命じられることはありません。
8.所得による負担軽減
入居中、本人と家族の経済状況が厳しくなった場合は、負担軽減措置が使えます。ただ、この負担軽減措置を利用しても経済状況が改善できる見込みがない場合は、より経費の安い公的な施設への移動を提案されることがあります。
【参照:厚生労働省 サービスにかかる利用料 低所得の方への支援】
9.入居スピード
全国どこでも入居ができますので、特定の地域やエリア条件にこだわらなければ、ご希望の賃料とサービスのついた住居が見つかります。
また、サービス付き高齢者向け住宅は、今後も増え続ける高齢者のための住まいとして、建築する企業に対しても補助金やサービス付き高齢者向け住宅供給促進税制などの税制優遇があり、より時代に適応した高齢者向け住宅が増えていく予定です。
10.看取り対応
多くのサービス付き高齢者向け住宅では、看取り対応は「あり」と記載があるケースが多いのですが、実際の看取り経験があるかないかまでは重要事項説明書にも記載がありません。
そのため、サービス付き高齢者住宅を終の棲家とする場合は、看取りをした経験があるかどうかを確認しておく必要があります。
また、多くのサービス付き高齢者住宅には高度な医療設備はありませんので、医療依存度が高い状態になった場合は、長期入院~ターミナルケアという形になることがあります。
入居時に看取り指針・体制について本人と家族が説明を受けますので、最期を迎えたい場所や救急搬送時の意思表示をしておけば、可能な範囲で対応をしてくれます。
3-5.E 民間の介護付き有料老人ホーム
名称 | 要介護度 | 初期費用 | 負担軽減 | 認知症受け入れ | 地域条件 |
E 民間の介護付き有料老人ホーム | 要支援1~ | 0~1億円 | ✖ | 〇 | 全国どこでも |
1.特徴
老人ホームの企画から建設、運営までを民間企業が経営する有料の老人ホームです。大きく分けて
介護付き | 介護保険を適用した介護サービスが付いている老人ホーム |
住宅型 | 主に住宅として利用し、介護サービスは個別で外注するタイプの高齢者用民間住宅を兼ねた老人ホーム |
健康型 | 衣食住のサービスがついた、ホテルのような高齢者向け住居。介護サービスは外注対応 |
の3タイプがあります。
公的施設と比べると費用は高めですが、その分、居室が広く、インテリアや内装設備にもこだわりがあり、施設内医療ケアが充実しています。運営する会社と、そのホームの企画コンセプトによって施設のサービス内容が大きく異なります。
2.申し込み地域
全国どこでも、気に入った場所に申し込みができます。人気のある施設の順番待ち・キャンセル待ちはあります。
3.入居対象者
おおむね60~65歳以上の高齢者で、入居時に要支援1~軽度の介護状態である方が対象です。施設によっては介護が重くても対応可能です。
4.介護度
要支援1~要介護5までですが、施設によって受け入れ態勢が大きく違います。気になる老人ホームのパンフレットと重要事項説明書をもとに、受け入れ態勢がどのようになっているかを確認する必要があります。
民間の有料老人ホームも、自治体から「特定施設」の指定を受けているところは、ホーム名に「介護付き」「介護型」の文言を入れることが許可されています。
このような表記がない場合は、介護付きサービスではない可能性がありますので、施設の名前の雰囲気で判断しないように注意してください。
5.初期費用目安
入居する施設によって大きく変わり、0~数億円レベルまでの幅があります。民間有料老人ホームの初期費用は、ほとんどの場合、数年分の賃料を前払いする形になります。
払込み済期間よりも前に退去した場合には、差額は返金されます。
6.月額利用料
施設によって大きく変わります。月額利用料の最低料金は、介護保険適用の範囲で考えた場合、
- 個室1日 1,970円×30=59,100
- 食費1日 1,380円×30=41,400
- 合計金額 100,500円
【参照:厚生労働省 サービスにかかる利用料】
負担軽減なしの値段で部屋代と食費だけを計算すると月10万円くらいがめやすになります。あとは、施設のエリアや立地、しつらえの豪華さ、食へのこだわりなどによって大きな差が出てきます。
7.認知症受け入れ
入居時に認知症症状があっても受け入れをします。ただし、将来、認知症状が重度になり、他の入居者との間にトラブルなどがあった場合は、他施設への転居を求められることもあります。
8.所得による負担軽減
介護保険適用に関した1~3割負担の軽減は使えますが、それ以外の負担軽減の適用はありません。
9.入居スピード
気に入った施設に空きがあればすぐに入居ができます。入居時に健康または介護が軽度であれば、基本的な審査内容は支払い能力の部分のみになります。
10.看取り対応
看取り対応は「あり」としているところがほとんどです。ただし、経営年数が短い施設では、実際の看取り介護の経験がないケースもあります。重要事項説明書の確認と同時に、面談の際に、看取り対応経験の数を確認しましょう。
4.特別養護老人ホームに入居するために
特別養護老人ホームになるべくスムーズに入るためにできることをまとめました。特別養護老人ホームになるべく早く入るために、自力でできる正攻法の対策は以下の2つです。
・複数同時申し込みをする
特別養護老人ホームの入居申し込み申請は、複数同時に申し込めます。例えば、自分の住んでいる地域にABCDの4つの特別養護老人ホームがあった場合、このすべてに同時に申し込み申請ができます。
ニュースなどで「特養は申し込みが多い」と言われている直接的な理由の一つに、高齢者の多くが重複申し込みをすることによって、待機者数が実際以上に膨れ上がっていることがあげられます。
そのため、「混んでてどうせ入れないかも」と諦めずに、自分以外の方も同じように複数の申し込みをしているのだと考えて、とりあえず、特別養護老人ホームへの申し込みはしてみましょう。
・希望地域を広げる
特別養護老人ホームがどこの地域でも同等に混んでいるわけではなく、一つ隣の区域にすれば待たずに入れる施設もあります。希望地域を広げて検討してみるとよいでしょう。
どの地域に空きが多くあるかなどは、自分で調べるよりも地域包括支援センターで確認したほうが確実です。
4-1.特養入居の優先順位の4ポイントチェック
特別養護老人ホームへの入居審査には、以下の4つのチェックポイントがあります。チェックが多いほど、緊急性が高いと判断され、早く順番が来ます。
チェック1: 在宅サービスの利用状況の多い人が優先
在宅サービスの利用状況が多い人は、要介護度が重く、それだけ人の手が必要であると判断し、優先順位が上がります。
チェック2: 他施設からの退去・移動を迫られている人が優先
すでに他施設に入っているが、認知症などが進行してしまい、入居中の他施設からの退去を迫られているケースも優先されます。長期入院などの後、在宅介護が難しくて特別養護老人ホームを希望している場合なども当てはまります。
チェック3: 独居・夫婦世帯のみは優先度高め
1人暮らしや、夫婦世帯など、身近な介護者の有無も優先度に関係します。例えば、夫婦同居で、妻が要介護4、妻の介護者である夫が要介護2などで介護がままならない状況の場合、近隣に手助けをする子供世代がいなければ、優先されます。
チェック4: 緊急入居(介護者の急死など)
介護をしてくれる人の急死など、緊急性が高い場合は、緊急入居対象として最優先されます。
【参照:特別養護老人ホームの「特例入所」に係る国の指針(骨子案)について 】
◆コラム◆
将来的に特養に入る予定なら、同居はしないチョイスを
親との同居は、将来的に特別養護老人ホームを使う予定があるならば、とりあえずは、避けておいたほうが良いでしょう。
介護のための同居・別居に関しては、たとえ親子でも大変に話しづらい内容ですが、介護がスタートする時点、またはそれよりも前の時点で、お互い確認・納得しておくことはとても大事です。
親子が同居してしまうと、介護に関して以下のようなデメリットが発生する可能性が高まります。
- 介護者が働き盛りの子供世代になるため、特養の優先順位が著しく下がる
- 介護者であり世帯主となる子供世代の年収が合算されるため、年収による軽減措置割合が低くなってしまう
大切な親の面倒を見てあげたい・不安だから子供にそばにいてほしいという親子の絆の問題と同時に、これから長く続く介護期間、介護する側の生活も守りながらやっていくためには、低コストで確実な介護が受けられる特別養護老人ホームの存在は外して考えることができません。
将来使う予定の介護付き老人ホームに、特別養護老人ホームがリストされているならば、同居は慎重に考える必要があります。
【参考:北九州市 特別養護老人ホームの入所決定方法】
【参考:新潟市特別養護老人ホーム入所指針】
4-2.特養の順番待ち期間に使える5つの施設
本章では、特別養護老人ホームへの入居までの待機期間中に、介護サポートをどうすればいいのかをまとめています。待機期間とは、申請をしてから特別養護老人ホームへの入居許可の連絡がくるまでの返事待ちの期間を指します。
申し込んだホームと、申し込み条件によって待機期間はバラバラですが、その施設ごとの平均待機期間は各施設がだいたい把握していますので、確認しておけば、今後の対策の指針に使えます。
待機期間中の基本は在宅介護なのですが、家庭のさまざまな事情で在宅介護が難しいこともあります。以下は、特別養護老人ホームへの入居をあきらめずに、順番待ちに期間の介護の現実的な問題解決に使える5つの施設です。
4-2-1.有料老人ホームの一時利用
経済的な事情が許すのであれば、民間の有料老人ホームに一時的に預けるという形が、最速でできる確実な解決方法になります。一時利用で介護をしてもらい、特養に空きが出たらすぐに移動をします。
ホーム選択の際、入居一時金がないところからピックアップすれば、移動のためのハードルはかなり低くなります。
4-2-2.介護が軽度ならば高サ住・グループホーム
介護度が軽く、見守り者さえ周囲にいれば、日常生活に支障がないのであれば、サービス付き高齢者住宅(または介護サービス付き高齢者住宅)を利用します。認知症症状がある場合は、グループホームでもよいでしょう。
どちらもひと月単位での支払いスタイルがあり、旅行や、介護者の休息のための短期利用をする方がいます。入居一時金があるところを避ければ、負担はかなり少なくなります。
4-2-3.医療への依存度が高い場合は「介護医療施設」
持病があり、医療依存度高い場合は、介護療養型医療施設・介護医療院に空きがないかを調べてみましょう。調べ方がわからない場合は、地域包括支援センターに聞いてみましょう。
病状が落ち着いていても長期の療養が必要な場合に使えるのが、介護療養型医療施設・介護医療院です。例えば、急な症状で入院搬送されても、その症状が治まると病院からは「退院してもよいですよ」と言われて早々に退院させられます。
しかし、体力や筋力などが戻っておらず、在宅療養にも不安を感じていて「本当は、もう少し入院していたいな」という状態の時に利用できます。
基本的には療養生活をするための場所で、日常生活をするための医療や介護の必要性がある方なら、誰でも利用できます。どちらも、医療保険または介護保険のどちらかが適用になります。
ただし、医師の判断が必要ですので、入院先の担当者か、かかりつけ医へ相談をしましょう。
【参照:介護医療院】
【参照:介護療養型医療施設及び介護医療院】
4-2-4.老人保健施設
療養後やケガなどによるリハビリテーションが必要なケースでは、老人保健施設が使えます。老人保健施設は、ケガや病気などで低下した能力を再び獲得するために、集中的なリハビリをする施設です。
例えば、散歩中に転倒してしまい、手足などに複数のヒビや骨折をしたとします。この場合、骨折やヒビの治療と共に、これらの関節周辺の筋肉を強化し、日常生活の動作に問題が起きないレベルまで
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
などのリハビリ専門職と共に、個別の集中訓練を受けます。入院期間は病名・疾患によって以下のように決まっています。
脳梗塞 脳出血 | 150日 |
高次の脳障害 | 180日 |
多肢の骨折など | 90日 |
神経やじん帯の損傷 | 60日 |
例えば、今回は、多肢の骨折にあたりますので90日(3か月)までの入院利用ができます。利用方法は、入院していた医療機関または、地域包括支援センターで確認できます。
【参照:公益社団法人全国老人保健施設協会】
4-2-5.ショートステイの最大利用7~30日をフル活用
ショートステイとは、利用者が指定施設で最大30日まで宿泊できるサービスです。ワゴン車などで利用者の自宅まで送迎があります。入所中は主に、日常生活上の介護と機能訓練をします。
ショートステイ先は2種類あり
1.短期入所生活介護
特別養護老人ホームなどの福祉系施設の利用。
2.短期入所療養介護
老人保健施設などの医療系施設を利用。
ショートステイは一か月の連続利用日数が介護度によって以下のように決められています。申し込みはケアマネジャーがしますので、相談の上、上手に利用していきます。
- 要支援1: 7日
- 要支援2: 12日
- 要介護1: 18日
- 要介護2: 20日
- 要介護3: 26日
- 要介護4: 27日
- 要介護5: 30日
段階ごとに、連続利用の最大日まで使えます。(この利用方法を1日単位にしたものがデイケア・デイサービスです)
例えば、要介護5であれば、30日の最大日数利用と、一か月の在宅介護を交互に繰り返し使うことができますので、介護者が介護を完全に休める一か月と、介護支援サポートがある一か月を繰り返す介護スタイルが作れます。
仮に特別養護老人ホームまでの待機期間が長くなっても、他の有料施設の選択をせずに待っていられます。
【参照:厚生労働省 通所リハビリテーション】
5. 介護付き老人ホーム選びで注目すべき7項目
本章では、介護付き老人ホーム選びの際に、注目しておくべき7つの項目をまとめました。基本的には、各施設の重要事項説明書を熟読し、パンフレットからのイメージではなく、数字などの「事実」をもとに判断するための7項目です。
5-1.入居率と解約率
重要事項説明書の「入居者」欄には、必ず入居率が記載されています。有料老人ホームの損益分岐点は
- 開業後2年までに
- 入居率80%
と言われています。例えば、全部で100室ある有料老人ホームであれば、オープンしてから2年経過したら80室は埋まっていないと赤字経営ということです。
他にも候補がある場合は、リストから外してしまってよいでしょう。
国民消費者センターへの相談内容を参考にすると、解約に関した相談の多くは「利用料」に関する事柄であることから、施設費の値上げ・サービス低下は解約と解約率に直接影響があるとみてよいでしょう。
【参照:専修大学商学部 小藤康夫 老人ホームの経営と財務分析】
【参照:独立行政法人国民生活センター 有料老人ホームをめぐる消費者トラブルが増加】
5-2.退去者の次の行き先「自宅」か「他の施設」か
退去後の行き先にも注目しましょう。介護付き老人ホームにいる高齢者の主な退去先もしくは退去理由は
- 自宅
- 他の施設
- 死亡
のどれかです。特に、死亡以外で退去した場合で、その数の多さが気になる場合は、退去事例について訪ねてみても良いでしょう。
都道府県によっては、有料老人ホームの重要事項説明書の一覧を公開しているところもあります。
「〇〇県 有料老人ホーム 重要事項説明書」
など、候補としている老人ホームがある地域名で検索をしてみてください。これらの情報をもとに、各施設の運営実態を把握しておきましょう。できれば、重要事項説明書の閲覧は、見学前にしたほうがより役に立ちます。
【参考:群馬県 有料老人ホーム重要事項説明書一覧(令和2年度)】
5-3.サービス提供者
サービス提供者とは、実際に現場で介護にあたる介護サービスのスタッフのことです。離職率の高い職場は介護サービスの内容が安定せず、入居者は不安定なサービスを受けることになります。
運営側が介護関連サービスの会社を経営していない場合、現場スタッフをどうやって募っているのかに注目します。直接採用なのか、介護派遣スタッフなのか、アルバイトなのかなど、スタッフの雇用状態をチェックすれば、人材にいくらお金をかけられる施設なのかがわかります。
また、介護スタッフがしょっちゅう入れ替わるなど、離職率が高いかもチェックしましょう。常に人材が足りない、自前で人材をとれない施設は、
「施設名 募集」
などと入れると、最新の応募状況などが出てきます。介護付き老人ホームを検討してから入居までは1~2か月くらいはかかりますので、その間に、何度も人材募集があるのでしたら、スタッフの居心地が悪く、離職率が高い施設であるといえます。
5-4.事業者
その施設を作った事業主体の会社名を確認し、検索をして会社の事業内容を確認しましょう。その際、その事業主体者が老人ホーム以外で主に行っている事業があるかも確認します。
ある特定の業界だからダメだというわけではなく、その老人ホーム事業をする目的がどこにあるかを類推するために確認します。
5-5.サービス内容
認知症や要介護度が高くなっても、継続してサービス利用と居住ができるのかは必ず確認しましょう。
また、4-4の事業者と、老人ホームのサービス提供をする事業者が違う場合は、両社の協力体制などはどうなっているかも確認します。
例えば、同じ系列会社の中で運営とサービスの両方をするのと、経営部分だけを本体がやり、介護サービスを外注で丸投げするのでは、結果的に入居者へのサービス質に差が出てきます。
5-6.月額利用料に含まれるもの
月額利用料に含まれるものは、チェックを入れながら入念に確認しましょう。
- サービスの種類
- サービス内容
- 必要なサービスがあるか
- そのサービスが施設や利用者に適切か
- サービスの利用回数
- サービスの利用上限
などを厳しい目でチェックします。これらのサービスが入居者の介護内容と合致しないと、お金を払っているのに、必要なことをしてもらえないという結果になります。また月額利用料以外にも初期費用としての一時入居金などが必要な場合、
- どのような支払いプランがあるのか
- 途中でプラン変更はできるのか
なども、合わせて確認し、無理のない支払いスタイルを選びます。
5-7.生活ルール
生活ルールとは、入居先の生活様式などが入居者の性格や性質などと合っているかを見ます。重要事項説明書の「館内ルール」や「規則」の欄に記載があります。例えば、共用部分がある場合、
- 共用の浴室の利用方法
- 洗濯機(ランドリー)の利用方法
- 共同キッチンの利用方法
他人と共同で使うものへのルールを入居者が守れるかなども含め、生活ルールを人に合わせて暮らせるかどうかも考えます。高齢者の場合、長いこと自分の知ってる家に住んでいたため、人と何かを共同で使うことから長い期間遠ざかっています。
そのあたりの事情も配慮し、予算の許す限り快適な生活ができる方を選んであげましょう。
また、以下のような施設ルール
- 外出や帰宅ルール
- 家庭(実家)への訪問ルール
は、まるで学校のようですが、ある程度の人数を預かる運営側としては安全管理をしないわけにもいきません。
あまりにも集団ルールを守れないと、施設側から素行に問題があるとして退去をお願いされる可能性もあることを頭に入れておきましょう。
まとめ
いかがでしょうか、介護付き老人ホームについて以下のようにまとめました。
- 介護付き老人ホームは「介護」「場所」「費用」で選ぶ
- 介護付き老人ホーム5タイプ別 特徴10項目
- 特別養護老人ホームに入居するために
- 介護付き老人ホーム選びで注目すべき7項目
介護付き老人ホームは種類がたくさんあっても、自分たちの経済状況と親の介護の内容を洗いだせば、絞り込んでいけることがお分かりいただけたと思います。
基本的に介護は10~20年の期間がかかる想定で考えておけば、元気なうちにさまざまな対策が打てます。
また数ある介護付き老人ホームから最適な1施設を選ぶためには、自分たちの知識と、地域包括センターなどの公的な情報サポート上手に活用することで、情報整理ができることもお分かりいただけたのではないでしょうか。
家族全員にとって一番良い介護付き老人ホームが見つかることを応援しています。
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