
同居している両親や配偶者に対して、どのような食事を提供すればよいかは、毎日のメニューを考えるうえで大きな悩みでしょう。
高齢者向けに好まれる調理法や味付けを考えるのは大変なことです。
生活習慣病を患っていたり、認知症が進んでいたりする場合は、今まで以上に食事の栄養バランスにも気を配らなくてはなりません
今回は、高齢者への食事におけるポイントや注意点、介護が必要な場合について解説します。
目次
1. 高齢者はさまざまな理由で食欲が衰えていく
年齢を重ねるほどに、食事の量は減っていく傾向にあります。
まずは、高齢者の食欲が衰えてしまう理由から確認しましょう。
以下の3つが主な理由です。
- 加齢による食事量の減少
- 噛む力の衰え
- 孤独感による食欲不振
1−1. 加齢による食事量の減少
加齢によって身体能力が低下し、運動や外出の機会が減ってしまうため食欲も減少してしまいます。
運動量の低下によりお腹がすきにくくなり、食事量も減ってしまうのです。
併せて、胃腸の働きも弱くなるため消化不良や便秘がちになり、食欲不振につながります。
1−2. 噛む力の衰え
高齢になると天然の歯の数が減り、入れ歯や差し歯をする方が多くいます。
自身の歯と比べて噛みにくくなり、食べる楽しみを感じにくくなってしまうのです。
また、しっかり噛むことができないと、食物が喉頭や器官に入ってしまう誤嚥(ごえん)を引き起こす原因になります。
誤嚥は肺炎の原因にもなるため、病気への不安から食欲の低下を招くこともあるでしょう。
1−3. 孤独感による食欲不振
一人暮らしや施設で生活している高齢者の場合、孤独感によって食欲を減らしてしまう場合があります。
環境や人間関係の変化により、不安を感じやすくなってしまうためです。
家族と同居している場合でも、同じ席で食事をしない場合は孤独さを感じてしまうかもしれません。
結果として食事の喜びを失ってしまい、食べることへの欲求が少なくなってしまうのです。
2. 高齢者用の食事を考える上でのポイントは“栄養バランス”と“食べやすさ”
高齢者が食欲をなくしてしまう理由を把握したうえで、どのような工夫をすれば楽しく前向きに食事をしてもらえるかを考えていきましょう。
高齢者への食事を考える場合、意識すべき点は以下の2つです。
ポイント1:栄養バランスを意識する
ポイント2:食べやすさを意識する
毎日の料理にひと手間を加えるだけで、高齢者向けの食事としてふさわしい内容にできる可能性が高まります。
2−1. ポイント1:栄養バランスを意識する
高齢者への食事は、常に栄養バランスを考えてつくるように心がけましょう。
高齢者にはビタミンやタンパク質、ミネラル、食物繊維を多く含む食品を食べてもらうのが理想的です。
食事の量が減る高齢者だからこそ、バランスのよい食事で栄養素を補いましょう。
バランスよく栄養を採れる食材一覧 | |
ビタミン | 豚肉、緑黄色野菜、フルーツなど |
タンパク質 | 肉、魚、大豆製品など |
ミネラル | 卵、乳製品など |
食物繊維 | 緑黄色野菜、淡色野菜、芋類、フルーツなど |
食事のバランスを考えたうえで、野菜や肉、卵、乳製品などをメニューに含めるのが効果的です。
毎日の食事が楽しいと思ってもらえるよう、レパートリーを増やすとよいでしょう。
2−2. ポイント2:食べやすさを意識する
バランスのよいメニューだけでは高齢者は充分に食べる楽しみを得られません。
噛む力が弱まっているなど、食事が難しいと感じられないよう、調理の際に工夫を盛り込みましょう。
食べやすさを意識しながら、栄養バランスを考慮したメニューにする必要があります。
2−2−1. 高齢者が食べやすいメニュー一覧
高齢者にとって食べやすい食事について把握しておくことで、積極的に栄養を摂ってもらいやすくなります。
以下は、高齢者が食べやすいメニューの一覧です。
高齢者が食べやすいメニュー | |
とろみのある食事 | おかゆ、とろろなど |
やわらかい食事 | ヨーグルト、ポタージュスープ、カレー、シチューなど |
ゼリー状の食事 | ゼリー、プリン、茶碗蒸しなど |
ミンチ状の食事 | ハンバーグ、つくね、肉団子、 |
なるべく強く噛む必要のない、食べやすい柔らかい食事がよいといえるでしょう。
肉類は噛みやすいように柔らかい料理にするのがポイントです。
茶碗蒸しを出す場合は、具を入れずに食べやすくしておくとよいでしょう。
2−2−2. 高齢者が食べにくいメニュー一覧
高齢者が苦手とする、食べにくいメニューについても把握しておきましょう。
苦手な食事ばかりだと、高齢者の食事への意欲が衰えてしまう原因になりかねません。
下記は、高齢者が食べにくいメニューの一例です。
高齢者が食べにくいメニュー | |
固い食事 | キャベツ、レタスなど |
繊維が多い食事 | ゴボウ、タケノコ、パイナップルなど |
パサパサとした食事 | パン、麺類など |
口の中に張り付く食事 | ワカメ、海苔、こんにゃく、餅など |
液体と固体が混ざった食事 | お茶漬けなど |
高齢者が食べやすいメニューと正反対の食事が多いことがわかります。
固い食事は噛みづらいため、食欲を失う原因になります。
パサパサとしたものや口の中に張り付くものは、不快感の原因になるためおすすめできません。
2−2−3. 高齢者が食べやすくなる調理テクニック
高齢者が苦手な食事は多くあります。
しかし、それらをすべて除いてしまうと、食事だけで栄養バランスを賄うことが難しくなってしまうでしょう。
そこで、高齢者が食べやすいように調理を施すことが重要となるのです。
- 肉や野菜、芋類は一口で食べやすい大きさに切り揃える。
- 繊維の多い野菜類は隠し包丁を入れてから、煮込む時間を増やして嚙み切れるよう柔らかくする。
- 肉や魚は切ったり叩いたりすることで細かく柔らかくする。
- 肉類はすり潰してミンチ状にする。
- 固い食材はミキサーにかけて飲み込みやすくする。
- パサパサとした食感の食べ物は、卵や乳製品でとろみをつける。
上記のように、調理の段階でひと手間加えることで、高齢者が格段に食べやすいメニューに仕上げることが可能です。
栄養バランスを考慮して、そのままでは食べづらい食品も毎日の食事に盛り込めるように工夫していきましょう。
3. 高齢者の食事で注意すべき点
高齢者の食事は栄養バランスはもちろん、食べ方にも工夫が必要です。
そのためには、視覚的な面や食事を楽しめる環境づくりも大切になってきます。
下記の5つの注意点を押さえて、高齢者への食事を考えていきましょう。
- 食事での栄養バランスに気を配る
- 塩分の摂りすぎに気をつける
- 食べやすい大きさに整える
- おいしそうな盛りつけを心がける
- 楽しく食べられるようにする
3−1. 食事での栄養バランスに気を配る
先述の通り、高齢者への食事は栄養バランスを考えることが大切です。
とはいえ、すべての食品が持つ栄養素を把握し、毎日適切にメニューに取り入れていくというのはなかなか難しいもの。
そこで、スマホのアプリなどを使って栄養管理を行うのがおすすめです。
食事バランスやメニュー作成の参考になるアプリ |
その他の健康アプリについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
健康アプリで管理すべき9つの項目と項目別おすすめアプリ28選
スマホやタブレット端末を使ったことのない方は、初心者向けのらくらくスマートフォンの利用がおすすめです。
「らくらくスマートフォン F-42A」は、大きな画面で文字が見やすくボタンが大きく表示されるため操作がしやすい点がポイント。
インターネットでの調べものもしやすく、上記で紹介したアプリのほか、標準でインストールされている「血圧ノート」などの健康アプリを活用できます。
家族と合わせて自分の健康管理もできるためおすすめです。
3−2. 塩分の摂りすぎに気をつける
高齢者への食事は、塩分の摂りすぎにならないよう注意が必要です。
年齢とともに味覚を感じにくくなり、塩辛い食事を食べすぎてしまうケースがあります。
また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を患っている場合は、塩分を減らした食事にすることが必要です。
普段から減塩を心がけることで、将来的に生活習慣病になるリスクを下げることにつながります。
3−3. 食べやすい大きさに整える
先述の通り、高齢者は噛む力が衰えているため、食事はなるべく一口で食べられる大きさに整えることが重要です。
併せて、柔らかくしたり飲み込みやすくしたりすることで、自発的に食べやすく調理しましょう。
口に入れやすく、嚙み砕きやすいサイズに整えることで、高齢者は格段に食事がしやすくなるのです。
3−4. おいしそうな盛りつけを心がける
食欲を増やすためには、視覚的な工夫も必要です。
おいしいと思えるような見栄えの料理を心がけましょう。
栄養バランスを意識しつつ、食べたくなるような盛り付けを心がけてみてください。
次第に食事への愛着が増して、食欲も増進する可能性が期待できます。
3−5. 楽しく食べられるようにする
食事の時間を楽しく感じてもらうことも大切です。
一人で食事をしていると、どうしても孤独さから味を感じにくくなり、食欲も減退します。
家族と同居している場合は、なるべく高齢者を交えて同じ時間に同じ食卓で食事を摂るようにしましょう。
家族と同居していながら、一人で食事をしている場合、余計に孤独を感じやすくなってしまいます。
単身で暮らしている高齢者に対しては、定期的に料理を作ったりおかずを差し入れするなど、食事のバランスが偏らないように工夫することで、食事への楽しみが増すかもしれません。
4. 介護が必要な高齢者の食事の際のポイント
日常的な介護が必要な高齢者と同居している場合、食事の内容だけではなく食べる際のサポートにも気を配らなくてはなりません。
安全な食事を心がけることで、誤嚥などのトラブルを回避しやすくなります。
楽しいと感じてもらうことで、しっかりとした栄養補給につながります。
- きちんと目が覚めているかチェックする
- 正しい姿勢で食事をする
- 誤嚥を起こさないようゆっくりと食べてもらう
4−1. きちんと目が覚めているかチェックする
介護が必要な高齢者に対しては、食事の前にきちんと目が覚めているかをチェックしましょう。
意識がはっきりしない状態で食事をした場合、喉に食物を詰まらせるなど誤嚥のリスクが高まるからです。
食事前にしっかりと声かけをして、目が覚めていることを確認してから食べ始めるようにしてください。
4−2. 正しい姿勢で食事をする
食事の際の姿勢にも気を配りましょう。
姿勢が悪いと食事に集中できないだけでなく、誤嚥の原因にもなりかねません。
椅子に腰かけて自力で食事ができる場合、背筋を伸ばして両足が床につくよう安定した状態にしましょう。
ベッドの上で食事をする場合は、適切な角度(30~90°)に固定します。
膝を軽く曲げられるようにし、クッションなどを挟むことで姿勢を保ちやすくできます。
4−3. 誤嚥を起こさないようゆっくりと食べてもらう
食事は時間をかけてでも、ゆっくりと食べてもらうようにしましょう。
速く食べ過ぎることを意識すると、誤嚥を引き起こす原因になりかねません。
せかすことなく、高齢者のペースに合わせて食事のサポートを行うことが大切です。
まとめ
高齢者への食事は、栄養バランスを考えつつ、毎日食べることが楽しいと思えるようにメニューを考えることが大切です。
年齢とともに食欲が衰えてしまうことは避けようがありません。
そのため、いかにして高齢者が食事を前向きに捉えられるかを考える必要があります。
バランスを考慮したメニューやひと手間かかる調理法など、毎日の料理つくりは大変なものです。
しかし、大切な家族の健康を意識し、末永く健康に暮らしてもらうためにも、やりがいを持って取り組むことがポイントといえるでしょう。
塩分を控えたメニューを心がけることは、家族の将来的な健康維持にもつながります。
スマホのアプリなど、メニューを考える際に強い味方もいるため、効果的に利用していきましょう。
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