
デジタル終活とは、自分の死後のデジタル機器やデータの扱い方について考える活動のこと。自分が亡くなったあと、残された家族が個人情報やアカウント、写真データなどの管理や片づけをできる限りスムーズにできるよう整えるための作業です。
デジタル終活は現代を生きる人なら誰しもが、今すぐ始めるべき大事な活動。デジタルデータは形には残らないものの、立派な「遺品」にあたります。お金や生活、プライベート情報などは事前に整理し、適切に管理しておかなければなりません。まったく無頓着でいることによって相続問題に発展したり、家族に余計な手間や面倒をかけたりすることもあるのです。
葬儀・供養事業を行う株式会社よりそう、が行った終活意識調査の結果をご覧ください。自分が亡くなった後にもっとも困るであろう事柄について、60代の240人を対象にアンケートを行ったところ「IDやパスワードなどの個人情報を含むデジタル遺品」と答えた人が非常に多いことがわかりました。
参考:株式会社よりそう【終活関意識調査】のデータをもとに作成
この調査で上位を占める項目は、銀行口座や生命保険に関する情報、葬儀の参列者など。これらも最近では、スマホやパソコンを使って管理している人が増えています。
そのため、現に多くの方が「デジタル遺品を整理せずに亡くなった場合、残された家族は困ってしまうだろう」ということを予見しているのです。
ただ、スマホやパソコンの中の整理は「整理すべきデータが多くて手が付けにくい」「普通はどういう風にやるものなのかわからない」などの理由で気が進まなかったり、着手するに至らないことも少なくありません。そのうちに……と先延ばしにしがちなテーマでもあります。
そこでこの記事では・・・
- デジタル終活とはなにか?
- デジタル遺品にあたるのはどんなものか?
- 始めるべきタイミング
- デジタル終活を先延ばしにするリスクと事例
- デジタル終活の手順
- デジタル終活の注意点
- デジタル終活Q&A
- 便利なツールやサービスの紹介
上記のことを詳しくまとめています。この記事を最後までしっかり読んでいただくことで、デジタル終活の必要性や、やり方などが理解でき、取り組みの全体像をイメージできるようになるはずです。
あなたの大事なデジタル遺品を正しく管理し、家族へ継承するための「デジタル終活完全ガイド」としてぜひお役立てください。
目次
1.デジタル終活とはスマホやパソコン内の生前整理
デジタル終活とは、スマホやパソコンの中に入っているデジタルデータの生前整理です。ご自身が亡くなった後、残された家族に必要な情報を伝えることや、不要なものを削除して整理整頓させるのが目的になります。
スマホやパソコンなどのデジタル機器や、ネットバンキングの預金やネット証券などの金融関係の情報、写真データや友人の連絡先、SNSアカウントやブログなど……デジタル終活で整理すべき項目は実にさまざま。これらへのアクセス方法やログイン情報を自分自身でしっかり把握し、家族に必要な情報を適切に伝えられるように整えておくための活動です。
デジタル終活は、身の回りの生前整理と同じように「家族に負担をかけないため」という目的もあります。
しかし、自分がどんなネットサービスを使っていて、どのくらい個人情報を管理できているか把握することは、今現在すでに必要とされる意識です。所有している資産やデータと向き合うことで自分自身の心がスッキリ整い、これからの貴重な時間に向き合えるようにもなります。
デジタル終活は「終わりに向けた作業」というより、現代人としてデジタルと正しく付き合うための取り組みです。家族のためだけでなく、自分のためにこそ取り組んでおきたい作業ともいえるでしょう。
2.デジタル終活で対象となる「デジタル遺品」の一覧
一言にデジタル終活といっても、具体的にどのようなものを整理すればよいのかピンとこない方もいるかもしれません。故人が残したデジタル機器や、その中に入っている重要なデータのことを「デジタル遺品」といい、種類ごとに整理するポイントが異なります。
そこで、デジタル遺品にあたるものを一覧表にまとめましたのでご覧ください。
デジタル終活3要素 | 具体的な項目 |
デジタル機器 | スマホ・パソコン・タブレットなどのハードウエア機器 |
デジタル遺産 | 金融・証券・年金・仮想通貨・FX取引・マイレージ・電子マネー・通信事業者・プロバイダー・ITサービス・有料サイト・有料アプリ・デジタル知的財産 |
デジタル遺品 | 動画・写真・日記・電子書籍・資料・住所録・電話帳等・SNSアカウント・ブログ |
デジタル遺品には「デジタル機器」「デジタル遺産」「デジタル遺品」の3つがあります。
デジタル遺産は、ネットバンキングの預金やネット証券、仮想通貨などお金に関係するもの。またデジタル遺産の中には相続に関係する金融商品だけでなく、継続的に支払いが必要な負のデジタルデータもあります。
デジタル遺品には、スマホやパソコンの中に保存している写真や動画、資料といったオフラインのものから、SNSアカウントやブログなどのオンラインで公開された個人情報も含まれます。
一言にデジタル遺品といってもこれだけの種類があることに、驚かれた方もいるかもしれません。あなたのスマホやパソコンには、どのくらいのデジタルデータが入っているのか改めて見直してみましょう。
各品目をどのように整理するかや具体的対処方法については、5.失敗しないデジタル終活のやり方6STEPで詳しくお伝えしていますのでチェックしてみてくださいね。
3.デジタル終活を始めるタイミングは「今すぐ」
デジタル終活は、年齢や状況に関わらず「今すぐ」始めるべきです。本来、デジタル終活は年代に関係なく、デジタル機器を扱うすべての人が常に意識しておくべきことだとされています。
2020年の国内モバイル端末所有率は、96.8%にのぼります。さらに2020年のインターネットの利用率は83.4%。今や国民のほとんどがデジタル機器を使い、ネットを利用している状況です。
参考:総務省 令和3年度版 情報通信白書|インターネットの利用状況のデータをもとに作成
これだけデジタル化が進んだ一方で、本人が亡くなったあとの機器やデータの取り扱い方は広く知られていません。今現在でも「こんなサイト登録したっけな?」「このパスワードはなんだったっけ…」などと把握しきれず管理が乱雑になっていることもあるでしょう。
自分がいつ亡くなるかは、誰にも予測することができません。最期は前触れなく、突然訪れることも多いので「そのうち」「もっと歳をとったら」では遅いこともあります。
デジタル終活は、ネットを使うすべての人に当事者意識をもって取り組んで欲しい活動です。アカウントや個人情報の管理状況、亡くなったあとの対処方法を一度真剣に考えてみてください。
4.デジタル終活の先延ばしで起こる4つのリスク
デジタル終活は「自分にはまだ早い」「何から手を付けていいかわからない」といった理由で先延ばしにされがちです。しかし、デジタル終活を先延ばしにしたまま亡くなった場合、あなたの家族は次のようなことで頭を悩ませてしまうかもしれません。
- 交友関係を知ることができない
- ネット遺産にアクセスできない
- 定期購買や有料アプリなどの利用料が発生し続ける
- 家族に見られたくないデータを残してしまう
デジタル終活をしなかった場合、このような痛手が発生することがあります。これらのことがなぜ家族を困らせてしまうのか、さらに詳しく説明していきます。
4-1.訃報を知らせる人の連絡先がわからない
スマホの連絡先データにアクセスできないと、故人の交友関係がわからない可能性もあります。
昔のように住所録帳をつけている人は少なくなり、年賀状のやりとりも減っている現代。スマホの中の連絡先情報やメールの宛先などでしか、交友関係が把握できない可能性があるのです。
葬儀の準備はかなり慌ただしく進みます。スマホにアクセスできないと葬儀の参列者や、訃報の知らせを送るべき人がわからないといったことになりかねません。あなたが亡くなったことを知らなかった……という人が出てくる可能性すらあります。
事例:妻のスマホのパスワードがわからない! |
【Yさん(61才)の事例】
Yさんは、亡くなった妻のスマホへのアクセスを試みていました。スマホを勝手に見ることを忍びなく思ったものの、亡くなったことを妻の友人や知人に知らせなければなりません。思い出の写真データなどを見たい、妻の面影を感じたいといった気持ちもあり、思い当たるパスコードを入力してみました。 しかし何度入力しても、パスコードを当てることができません。解除したい一心で何度も繰り返しているうちになんと端末が初期化されてしまい、元に戻せない状態になってしまったのです。 |
スマホの場合、設定によってはパスコードの入力に繰り返し失敗することで端末が初期化され、すべてのデータが消えてしまうことがあります。現状、iPhoneやAndroidの場合、3~4回パスコードを間違えても問題ありませんが、何度も連続で間違えると長時間スマホが使えなくなるよう強制ロックされたりデータが消えるおそれも。
スマホの中に入っている情報にまったくアクセスできないと、家族は大変な不便を被ることになります。
4-2.家族がネット遺産にアクセスできない
資産にアクセスするために必要な情報がわからないと、相続トラブルにつながるおそれがあります。
ネットバンキングに預金をしていたり、ネット上で株やFX取引などをしている場合、それらのデジタル遺産を相続する必要があります。しかし、取引のある金融機関名や、所有している口座情報がわからない場合、相続すべき財産があることすらわかりません。
家族がネットバンキングや証券取引の存在を知っていた場合でも、詳細がわからなければ金融機関名や口座情報、ログイン情報などを調べることから始めなければならず多大な苦労が生じます。
場合によっては弁護士への依頼費用が発生することも。証券取引やFX投資などを行っている場合は、いつの間にか財産がマイナスになり、負債として残ってしまうこともあります。
亡くなった方が取引していた金融機関がわからず、困った遺族の事例を参考に見てみましょう。
事例:父親のネット証券の口座が把握できず…… |
【Mさん/49歳】 Mさんは、父親のネット証券の口座情報がわからず困っていました。Mさんも母や兄も、父が生前インターネットを使って株取引をしていたことは知っていましたが、どこで何を確認したらよいのか、株取引の状況はどうなっているのかなどがわかりません。 自分たちだけではどうにもできず、弁護士事務所に相談。弁護士さんのアドバイスどおりに動いて証券会社までは特定できたものの、今度はIDとパスワードがわかりません。結局弁護士さんに財産調査依頼を改めてお願いすることになり、時間もお金もかかってしまいました。 |
ネットバンキングの預金や株などは相続すべき財産になります。どこの株をどのくらい保有しているのかといった情報を確認し継承しなければなりません。放置しているうちに株価が暴落し、負債を背負ってしまうおそれも秘めています。
しかしデータがわからなかったりアクセスできなかったりすると手間や時間、お金などが余分にかかってしまうので、残された家族が疲弊することも少なくないのです。
4-3.定期購読や有料アプリなどの利用料が発生し続ける
利用料の発生するサービスやアプリを契約している場合、亡くなった後に解約手続きをしないと利用料が発生し続けてしまいます。
複数のサービスを利用している場合、家族が一つひとつ解約していかなければなりません。何にいくら払っているかや、それぞれへのログイン情報がわからないと無駄なお金がかかったり、滞納金の請求がくることも。
事例:死亡後のサービス料滞納で思わぬトラブルに… |
大手決算代行サービスPaypal(ペイパル)が、がんで亡くなった女性の遺族に対し、日本円で約47万円の滞納金を請求したという過去の事例があります。 遺族は、女性が亡くなったあとPaypalに死亡証明書と身分証明書、遺言を届け出ました。しかしPaypalからは「あなたが死亡したとの通知を受け取っていますが、あなたはペイパル・クレジット規約の15条4項に違反している状態です。(中略)この規約違反の状態は解決しません」とのメールを送信し、遺族との間でトラブルに発展してしまったのです。 |
この事例はPaypal側が遺族への配慮に欠ける対応をしたことで大きな騒動に発展しましたが、故人が亡くなったあとにそのまま契約続行された分の請求が届くことはめずらしくないのです。
サービスを提供する企業側は、単なる滞納なのか、それとも死亡したのかの判断をすることはできません。引き落としの口座やクレジットカードが凍結することで利用停止になるケースが多いですが、別の形で請求が届くことや、サービス内に保管しているデータまで消滅してしまうといったリスクも。
有料サービスやサブスクリプションなどは、適切な方法で解約できるよう準備しておくのがベストです。
4-4.家族に見られたくない情報を残してしまう
デジタル終活を先延ばしにしていると、スマホやパソコンの中にある秘密のデータを家族に見られてしまうリスクもあります。
秘密にしたい情報や見られたくないものがある場合は、早めに削除するか、ロックをかけて保存するなどの対処をしておかなければなりません。
事例:亡くなった姉のSNSを見てショック…… |
【Kさん/54歳】 Kさんの姉は生前Facebookを使っており、活発で深い交流があった友人も多かったようです。Kさんは「ネット上のお知り合いにも、姉の訃報を知らせたほうがいいかも?」と、覗いてみることに。しかしそこで、姉がダイレクトメッセージでKさんとその夫の悪口を友人知人に漏らしているのを発見してしまったのです。 亡くなった姉のことを想いながら遺品整理をしていたのに、思わぬところで姉の嫌な一面を見てしまい精神的にショック。しばらく立ち直ることができませんでした。 |
故人のプライバシーに関するSNSのアカウントや、家族に見られたくないもの、秘密にしておきたい情報は早めに整理しておくのが安心です。
「自分が亡くなった後のことなんだから、何を見られても構わない」と思う方もいるでしょう。しかし、故人の秘密の情報を目にしてしまうことで、残された家族側がショックを受けることもあります。家族に知られたくないデータ、知らない方がよい情報は早めに処理をしておくのがお互いのためになるでしょう。
デジタル終活を進めることにデメリットはない!
デジタル終活を進めることにデメリットはありません。年齢や状況に関わらず、人はいつどのようにして生涯を閉じるかわからないので、自分が亡くなった後のデータの取り扱い方を決め、家族に伝えておくようにしましょう。
デジタル終活にかかる手間や時間を減らしたい場合は、便利なサービスやツールを活用して効率よく進める方法もあります。具体的なサービス・ツールは、7.デジタル終活を進めるうえでおすすめのツール・サービス一覧で詳しく紹介していますので参考にしてください。
5.失敗しないデジタル終活のやり方6STEP
ここからは、実際にデジタル終活の手順とやり方を解説します。デジタル終活の手順は、次の6つのステップで進めると簡単です。
デジタル終活の6ステップ
- スマホやパソコンのパスコードを残す
- すべてのデジタル遺品を書き出す
- デジタル遺品を分類する
- 重要なデータの整理
- 不要なデータの削除や解約手続きをする
- エンディングノートに記録する
まず、スマホやパソコンなどにアクセスするためのパスコードは最低限残しておきましょう。中身の整理は、重要なデジタル遺品を洗い出して整理していきます。不要なものは削除し、残すデータは自分が亡くなった後の扱い方をエンディングノートに記録する、というのが大まかな流れです。
ステップごとに、詳しいやり方やポイントを解説していきます。
5-1.スマホやパソコンへのパスワードを残す
デジタル終活において最低限やっておくべきなのは、スマホやパソコン、タブレットなどのデジタル機器のパスワードを残しておくことです。
機器にアクセスさえできれば、そこから必要な情報を探すことができます。時間や手間はかかりますが「どうにもならない」という最悪の事態を防ぐことはできるはずです。
機器のパスワードは、エンディングノートやカードなど手書きで残しておくのがおすすめ。このとき、パスワードの英数字をそのまま書くより、文字や数字の並びを連想させるような書き方で記しておく方が安全です。
たとえば、「結婚記念日4ケタ」「花子の誕生日と太郎の誕生日の数字をすべて足した数」のように、家族だけがわかるような言葉で残しておくとよいです。
指紋認証や顔認証の場合は?
近年のスマホやタブレットは指紋認証や顔認証機能がついていますが、英数字によるパスワードの設定は必ず行います。故人の代わりにパスワードを入力すれば機器にアクセス可能です。そのためパスワードの保存は絶対必須になります。
5-2.重要なデジタル遺品を書き出す
まず、スマホやパソコンの中に入っている重要なデジタル遺品をすべて書き出してみましょう。
スマホやパソコンのメニューやブックマークを見ながら、管理や継承が必要なデータだけを抽出していきます。書き出すデータの基準は以下のとおりです。
- お金や資産を管理しているもの
- 利用料が発生しているもの
- アカウント登録しているもの
- 思い出や大事なデータが入っているもの
※ログインを必要とせず、個人情報を入力していないアプリなどはスマホを解約すれば消滅しますので、ここで書き出す必要はありません。
このステップでは、自分のスマホやパソコンの中にどれくらい重要なデータがあるのか把握するだけでOKです。「これは遺品にあたるのだろか?」「残すべきかどうか?」で迷った項目はとりあえず書き出しておき、後でじっくり整理しましょう。
5ー3.デジタル遺品を分類する
続いて、書き出したデジタル遺品を分類していきます。基本の分類は次の図表を参考にしてください。
まずは「お金が関係するもの」と「お金が関係しないもの」を分けます。お金に関係するものは重要度が高いデジタル遺産になるため、優先的にデータを整理する必要があります。
お金に関係するデジタル遺産は、さらに「資産になるもの」と「支払が発生するもの」に分類します。アカウント情報やSNS、写真などのデジタル遺品は「オンライン」と「オフライン」というように分けていくとわかりやすいです。
書き出したデジタル遺品をざっくり分類した例を見てみましょう。
① | 資産に関係するもの |
② | 支払が発生するもの |
③ | オンラインの個人情報 |
④ | オフラインの個人情報 |
書き出したデジタル遺品を、こんな風にグループ分けすることで「次に何をすべきか」が明確になっていきます。重要なものとそうでないもの、どこから着手すべきか、何を優先したらよいかの判断もしやすくなるでしょう。
この分類方法はあくまでも参考なので、自分が把握しやすいよう自由にアレンジしてください。
5ー4.デジタル遺品を管理・整理する
続いて、デジタル遺品を管理・整理していきましょう。
お金に関係する各種サービスへのログイン情報は、わかりやすくまとめて保存しておきます。サービスの利用停止や解約、アカウント削除などをしてもらうなど、亡くなったあとの扱い方を決めていきましょう。
以下に、デジタル遺品の項目ごとにやっておくべきことをまとめているので、データを整理するときの参考にしてください。
デジタル遺品の項目 | 整理の仕方とポイント |
金融関係 (資産になるもの) | 機関名や会社名・ログイン情報などを明確にして一覧にまとめておく。 |
有料サービスやアプリ (支払の発生するもの) | 契約中のサービス名・サイトURL・ログイン情報・料金・更新情報などをまとめておく。 |
SNSアカウント | アカウント削除や死亡の届け出など、どのように扱ってほしいか決めておく。※追悼アカウントの手続きができるSNSもある。 |
ブログ | ブログサービス・サーバーなどへのログイン情報をまとめておく。死後どのように扱ってほしいかを決めておく。 |
メール・連絡先 | 亡くなったときに知らせて欲しい人の名前と連絡先をリストアップしておく。フリーメールの場合はログイン情報もあると◎ |
写真・動画・資料など | ジャンルや日付などわかりやすく整理しフォルダに収納する。もしくは、USBメモリー、SDカードなどの外部デバイスへ保存する。 |
家族に見られたくないデータ | フォルダにパスワードで鍵をかけて保管する。もしくは削除する。 |
お金に関係するもの、家族が扱いに困りそうなもの、見られたくないものをピックアップし、優先的に着手していくとよいです。
管理するデータが多い場合は、次のような基準で優先順位をつけてみてください。
お金が関係するものは、家族にとって債務や権利です。相続にも関係するデータなので、優先順位は高くなります。なかには「へそくり」として家族に知られないようにしてきた預金などがあるかもしれません。へそくりは現時点では内緒のものですが、あなたが亡くなったあとは遺産になるので正しく相続できるようにしておきましょう。
思い出の詰まった写真や動画、訃報を知らせる知人の連絡先情報などは、お金に関係ありませんが「家族が求めるデータ」になるので優先順位は高めです。見られたくないデータや写真なども早めに処理しましょう。
5-5.不要なデータの削除や解約手続きをする
今現在必要のないデータは、これを機に削除や解約手続きなどをしてクリーンにしていきましょう。家族に見られたくないデータなども、あなた自身が不要であれば早めに削除しておくと安心です。
スマホの有料アプリの場合、ホーム画面から削除しただけでは月額課金が解約できないので注意してください。アプリの削除ではなく、サブスクリプションの解約や登録解除の手続きをしっかり行ってください。
5ー6.エンディングノートに記録する
整理が終わったデジタル遺品から、エンディングノートに詳細を記載していきましょう。エンディングノートには次のポイントをおさえて記入してみてください。
エンディングノートに記載すること
- スマホやパソコンへのログイン情報
- 各サービスのログイン情報の保管場所
- 解約すべきサービス
- データの取り扱いへの要望
必要なデータやアプリを、スマホやパソコンのわかりやすい場所に保存しておくだけでも十分です。余裕がある場合や希望があるものに関しては、エンディングノートにデータの扱い方を記入しておきましょう。
- 訃報を知らせて欲しい人のリスト
- SNSアカウントを削除してほしい
- 趣味の作品を公開したブログはそのまま残してほしい
家族が迷いそうなこと、明確な希望があるものはメモ程度に要望を記載しておくとよいです。家族は記載通りに手続きするだけなので、デジタル遺品をスムーズに処理できるでしょう。
6.デジタル終活をする際に注意すべきこと3つ
デジタル終活に取り組むときに注意すべきポイントをチェックしておきましょう。デジタル遺品は、重要な個人情報や大切な思い出などが詰まったものです。データの流出や紛失、漏れなどがないよう、次の3つのポイントに注意してください。
- 暗証番号やパスワードなどログインの扱い方
- エンディングノートの保管場所
- 定期的な情報更新
それぞれ、なぜ注意する必要があるのか詳しく見てみましょう。
6-1.暗証番号やパスワードなどログイン情報の扱い方
暗証番号やパスワードなど、各種サービスへのログイン情報をそのままエンディングノートに記載しないようにしましょう。
重要なデジタル遺品のログイン情報をエンディングノートに直接書いてしまうと、個人情報が流出するおそれがあるため危険です。
とくに資産関係のIDやパスワードの書かれたノートが持ち出されてしまうと、簡単に現金を引き出されてしまいます。
そのため、エンディングノートにはスマホやパソコンなど機器のパスコードだけを記載するのが安心です。詳細なログイン情報は、安全に管理できるツールを使用するとなお安心でしょう。
具体的な方法としては次のような方法があります。
- エクセルやメモ帳などのデータにまとめ、保管場所をエンディングノートに記載する
- パスワードマネージャーなどの専用管理ツールを利用する
パスワードの専用管理ツールについては、7.デジタル終活を進めるうえでおすすめのツール・サービス一覧で詳しく紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
6-2.エンディングノートの保管場所
エンディングノートの保管場所は、家族がわかりやすい場所、見つけやすい場所にすることが重要です。
亡くなってから葬儀までの間は、手続きや対応に追われてとても忙しいためエンディングノートを探している余裕がないことも多いです。エンディングノートが発見されなければあなたの努力も水の泡になってしまうかもしれません。
エンディングノートの存在があることや保管場所については、日頃から家族に伝えておくか、必ず見つけてもらえるように工夫しておきましょう。
ただし、亡くなる前にエンディングノートを見られたくないという場合も多いはず。生前に家族にエンディングノートの存在を知られたくない場には、次の方法が推奨されています。
- 保管場所のメモを普段使用している財布や鞄などに入れておく
- エンディングノート保管サービスを利用する
エンディングノートの保管場所を記載したメモやカードなどを作り、財布や鞄など毎日のように利用するものの中に入れておくと、早く発見してもらえる可能性が高まります。
また近年では、エンディングノートを保管してくれるサービスやクラウド型のエンディングノートアプリもあります。自分で保管するのが不安な方や、紛失が心配な方は検討してみましょう。
6ー3.定期的に情報更新する
デジタル終活の作業は、一度やったら終わりではなく定期的に更新していく必要があります。
あなたのスマホやパソコン内のデータは日々変わっているはずです。新しく契約したサービスがあれば追記し、不要になって解約したものはノートから削除しておきましょう。
また、安全のためにパスワードを定期的に変更する必要があるサービスも多いです。時間が経つと整理したログイン情報も変わっていることがあるので、更新作業は必ず行いましょう。
このように定期的なデジタルデータの見直しを習慣づけることは、デジタル終活だけでなくあなたのデジタルライフをより安全で、快適なものにしていくために必要なことです。
今回デジタル終活として紹介した作業は「終活」としてではなく、デジタルデータと上手に付き合う「活用能力」ともいえるでしょう。
7.デジタル終活を進めるうえでおすすめのツール・サービス一覧
デジタル終活を進めるなかでは、「個人情報をもっと安全に管理する方法はないか?」「残すべきデータが確実に伝わるか不安…」など、の悩みが出てくることもあります。
そんなデジタル終活における「困った」を解決するには、便利なツールやサービスを利用するのもおすすめです。
ここでは、デジタル終活に役立つツールやサービスを3つ紹介します。より確実な管理や伝達ができるようになるので、必要に応じて利用してみてください。
7-1.パスワード管理ツール「パスワードマネージャー」
デジタル遺品のログイン情報をより安全に管理したい方には、トレンドマイクロ株式会社が提供している「パスワードマネージャー」がおすすめです。
パスワードマネージャーは、あなたが使用するネットサービスやアプリのIDやパスワードなどのログイン情報を記録、保管するためのツール。
エクセルやメモ帳などを使って自分で管理することもできますが、パスワードマネージャーを利用することでセキュリティの強度を高めることや、管理を簡単にすることができます。
パスワードマネージャーでできること
- 予測されにくいパスワードを自動で作ってくれる
- サービスやアプリごとにIDとパスワードを管理できる
- アカウント情報の監視
いざデジタル終活を始めてみると「パスワードの使いまわしが多い」「どのパスワードがどのサービスのものか把握しきれない」といった問題が浮彫りになることも多いです。
アカウントへの不正アクセスや乗っ取り被害を防ぐためにも、ログイン情報の管理は専用ツールを使って守ることも視野に入れてみましょう。
パスワードマネージャー(マイクロトレント株式会社) | |
利用料 | 月額版275円(税込) ダウンロード版2,750円(税込)~ ※30日間無料体験版あり |
対応デバイス | ・Windows ・Mac ・Android ・iOS/iPadOS |
【パスワードマネージャー30日間無料体験版はこちら】Windows・Macはこちら
7-2.エンディングノートアプリ「わが家ノート」
デジタル終活をはじめ、エンディングノートの記入や管理に不安がある方には、三菱UFJ銀行が提供しているスマホアプリ「わが家ノート」がおすすめです。
わが家ノートでは、エンディングノートに記載する内容を16項目に分け、自分が入力しやすい項目から自由に記録をつけることができます。セキュリティ対策にも配慮しているので、手書きノートを保管するのに不安な場合にもおすすめです。
わが家ノートでできること
- エンディングノートの記載が簡単になる
- 必要な情報をわかりやすく整理できる
- エンディングノートを共有する相手やタイミングを指定できる
- エンディングノートを確実に届けられる
わが家ノートの入力項目には、預貯金やカード類・電子マネー、ID・会員証などのデジタル遺品に関する項目が設けられています。情報の更新もアプリ上で簡単にできるので修正に手間がかかりません。
エンディングノートを誰に、どのタイミングで共有するかを指定できるのもわが家ノートの特徴。デジタル終活をしたのに、その記録を家族に見つけてもらえなかった…という事態を防ぎます。エンディングノートをより便利に記録していきたい方は、一度チェックしてみてくださいね。
わが家ノート(三菱UFJ信託銀行) | |
利用料 | 無料 |
対応デバイス | ・Android ・iOS/iPadOS |
【わが家ノートのアプリダウンロードはこちら】
7ー3.資産管理ができる「楽クラライフノート 」
ネット銀行や証券、FX投資など、ネットを使って資産運用をしている方には、NTTファイナンスが提供するアプリ「楽クラライフノート」がおすすめ。
エンディングノートアプリの中に、資産や家計の管理ができる機能を備えているのが特徴です。
楽クラライフノート(NTTファインナンス)でできること
- エンディングノートの記載が簡単になる
- 必要な情報をわかりやすく整理できる
- エンディングノートを共有する相手やタイミングを指定できる
- エンディングノートを確実に届けられる
資産情報の入力や管理だけでなく、資産情報を誰に共有するかといった細かな設定をすることができるので、相続トラブルを防止する効果も期待できます。
亡くなった後に解約手続きが必要なサービスと、そのログイン情報を一括管理できるので、デジタル終活にもぴったりのエンディングノートアプリです。
楽クラライフノート(NTTファイナンス) | |
利用料 | 月額300円(税込) ※6ヶ月無料お試し期間あり |
対応デバイス | ・Android ・iOS/iPadOS |
【楽クラライフノートのアプリダウンロードはこちら】
8.デジタル終活のQ&A
最後に、デジタル終活についてをQ&A形式でまとめていきます。デジタル終活はやるべきことや考えることが多いですが、ポイントを把握してひとつずつクリアにしていけば大丈夫です。
Q&Aで、デジタル終活の要点となる部分を今一度確認してみましょう。
8-1.デジタル終活はどんな人がやるべきですか?
デジタル終活をする必要のある人は、スマホやパソコンなど、デジタル機器を使用しているすべての人です。
現代ではデジタル機器を持っている人の方が圧倒的に多い時代。ネット上で資産管理をしていない場合でも、葬儀の参列者に関する情報や、思い出の写真データなど家族が求めるものがあるはずです。
デジタル終活は年齢に関係なく、デジタル機器を使う人なら誰でも意識しておく必要があります。
8-2.デジタル終活を始めるべきタイミングや年齢の目安は?
デジタル終活を始めるべきタイミングは、今すぐです。いつどこで生涯を閉じるかは誰にも予測できません。
「何歳になったら」「あと何年したら」などという目安はなく、必要だと思ったときがデジタル終活を始めるべきタイミングです。
8-3.デジタル終活は何から始めるべきですか?
デジタル終活で最低限やっておくべきなのは、スマホやパソコンなどのデジタル機器へのログイン方法を家族に伝える方法を考えておくことです。
データの中身は、お金や相続に関する情報から優先的に着手することをおすすめします。その次に思い出の写真や動画など「残された家族が求めているデータ」、あなたのプライバシーに関する「家族に見られたくないデータ」という順番で整理するとスムーズです。
8-4.デジタル終活で注意すべきことは何ですか?
デジタル終活において注意すべきなのは、IDやパスワードなどのログイン情報を安全に管理することです。盗難や流出のリスクをできる限り減らし、必要な人だけが見られるように工夫しておきましょう。
また、データについて記録したエンディングノートが家族にしっかり届くような方法を考えておくことも重要です。
8-5.亡くなった後のデジタル機器の処分はどうすればよいですか?
亡くなった後のデジタル機器の処分は、専門の業者に依頼するのがおすすめです。パソコンの場合はハードディスク内のデータを完全に消去してから処分する必要があります。スマホやタブレットも、販売店や業者に持ち込んで処分してもらいましょう。
家族がデジタル機器に詳しくない場合もあるので、処分方法についてもエンディングノートへ記載するか、家族と話し合っておけると完璧です。
9.デジタル終活や老後のことを話したいなら「らくらくコミュニティ」がおすすめ
デジタル終活に限らず、自分の身の回りの整理や老後のことについて「誰かに相談したい」「同じ境遇の人の声を聞きたい」と思うことはありませんか?
終活や老後の暮らしのことは、どこでも誰とでも話せることではないので、ひとりで悶々と考えているうちに気持ちが暗くなってしまうこともあります。
「みんなはどうしているのか知りたい」「同じ年代の人にしかわからない気持ちを共有したい」ということもあるはず。
そこで、中高年の方で集い、気軽に交流できる「らくらくコミュニティ」へ参加してみませんか?
らくらくコミュニティでは、登録した人が共通の話題や趣味の投稿で交流することができる中高年向けのインターネットコミュニティです。
一般的なSNSのように、自由に文章や写真を投稿し、自分だけのタイムラインを作ることができます。気に入った投稿に「いいね」したり、コメントすることで、同じ話題に関心のある人との縁が生まれるでしょう。
9-1.おすすめポイント1.終活・お金の専門家の投稿やアドバイスを読める
らくらくコミュニティ内には、特定の話題や趣味についての情報交換ができるコミュニティ機能があります。
終活やお金に関するコミュニティでは、専門家のアドバイスを読むことができたり、無料相談やサービスの情報などを受け取れます。
9-2.おすすめポイント2.同年代に聞きたいことを質問できる
らくらくコミュニティには「教えて!みんなの声」という投票機能があります。質問投稿に他の会員が投票してくれ、アンケートの統計結果を見ることができる機能です。気になる質問に自分が答えることでも、統計結果を見られます。
もちろん、通常の投稿で質問してもOKです。終活関連のトピックを自分で投稿すると、共感した人からコメントがつくことも!手紙のやりとりをするようにコメントを投稿し合っている方もいます。
9-3.おすすめポイント3.サポートが充実している
SNSと聞くと「自分には難しそう」「誹謗中傷や迷惑行為に遭ったら…」などと抵抗を感じてしまう方もいるかもしれません。らくらくコミュニティ内の投稿は、悪質なユーザーがいないかどうか、スタッフが24時間体制で監視しているのでトラブルに巻き込まれる心配はありません。
らくらくコミュニティでできること
- 共通の話題で交流できる
- 同年代への質問ができる
- 自分の生活や趣味、嗜好に合った人とつながれる
- 安全にSNSを楽しめる
10.まとめ
デジタル終活について、総合的に解説してきました。スマホやパソコンを使いこなしている方であれば、誰でもデジタルデータの管理や整理をしておく必要があります。万が一のときに、残された家族がデジタル遺品の扱いに困ったり、苦労したりしないよう、わかりやすい形で伝えておくことが大切です。
「遺産の入ったネットバンキングにアクセスできなくて困った」「故人のアカウントや登録情報が散らばっていて必要なものが見つけられない…」といった事例が、実際に数多くあります。
「そのうちで良いだろう」「終活はまだ早い」と先延ばしにせず、なるべく早く始めましょう。後回しにしていると、相続に余計な手間や費用が発生したり、家族にとって大事な思い出やデータが失われたりすることもあります。思い立ったが吉日、今こそデジタルデータの整理に取り掛かりましょう!
最後にこの記事の内容をまとめてみると…
- デジタル終活はとは、スマホやパソコン内の生前整理
- デジタル終活はすべての人が今すぐにやっておくべき
- お金や相続に関係するデータは優先的に整理する
- 重要なデータの取り扱い方はエンディングノートに記載する
- サービスやツールを活用するとより便利
デジタル終活は、残される家族のためだけでなく、自分の生活や人生の棚卸しにもなります。デジタル遺品はあなたの足跡として残る大事なものなので、スッキリ美しく残してみては。デジタル終活でより身軽になれば、あなたの老後の暮らしはさらに安心で快適なものになるはずです。
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