
老後の生活をどのように送れるかは、住む場所によって大きく左右されます。
住み慣れた持ち家で暮らしていても、年齢を重ねることで住みづらいと感じてしまうケースがあるようです。
そこで、老後にマンションへ移り住もうと考える方は少なくありません。
国土交通省が平成31年に発表した、「平成30年度住宅市場動向調査」によると、中古マンションや分譲マンションの二次取得者は60歳以上が最も多いという結果になりました。
出典:国土交通省「平成30年度住宅市場動向調査」世帯に関する事項 一次取得・二次取得別の世帯主の年齢
老後にマンションへと移り住むシニア世代は多くいるのです。
今回は、老後にマンションに移り住む場合のメリットとデメリットを中心に、選び方のポイントや資金を捻出するためのコツを紹介します。
目次
1. 老後をマンションで過ごす7つのメリット
慣れ親しんだ戸建てに住み続ける場合、メリットとデメリットの双方があります。
メリットには土地が広くプライベート面を守りやすいなど、戸建てならではの安定感が伺えます。
デメリットは、老朽化が進むと自分で手を加えていかなくてはならかったり、空き巣などのセキュリティ面で不安があったりと、自主的に負担しなくてはならない面が多い点です。
詳細を表にまとめたのでご覧ください。
戸建てに住み続けるメリットとデメリット
戸建てに住み続けるメリット |
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戸建てに住み続けるデメリット |
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高齢になると広い戸建てを持て余しやすくなり、庭の手入れなどにかける体力がなくなりがちです。
生活スタイルの変化に合わせて、よりコンパクトな暮らしを求める場合、マンションに移り住むことが選択肢に入ります。
老後の生活をマンションに住みながら送ることのメリット面を紹介します。
主に、以下の7つの恩恵を受けられるケースが多いようです。
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1−1. セキュリティ面で安心できる
マンションに住むことで、戸建てよりもセキュリティ面の安心が期待できます。
マンションの入口はオートロック式である場合も多く、不審な人物の入場を防ぐことが可能です。
防犯カメラが設置されていれば、トラブルが起きた際の証拠になり、犯罪の抑止にもつながるでしょう。
また、警備会社と契約しているマンションの場合は、何かあってもすぐに警備員が駆けつけてくれるため、安心感があります。
1−2. 管理人がいて安心できる
管理人が常駐しているマンションの場合、入口で不審者を見はったり、施設の清掃や修繕などを行ってくれるため、非常に安心できます。
ゴミの捨て方など、個人では指摘しづらい内容でも、管理人を通すことで円満に解決できる可能性が高まります。
気さくに挨拶のできる相手がいれば、日々の生活にも楽しみが生まれるかもしれません。
1−3. 徒歩で買い物に行ける
高齢者が自主的に運転免許証を返納するケースが増えています。街の中心部から離れた場所に住んでいる場合、買い物や通院の手間がかかってしまうでしょう。
毎回タクシーを使っていては、交通費だけでも大きな出費になります。
そこで、街の中心部や駅に近い場所のマンションに住むことで、徒歩でも気軽に買い物にいけるのは大きなメリットです。
スーパーやコンビニ、医療機関、公共施設などにアクセスしやすくなることで、引きこもりがちな生活にならずに住み、健康的な生活を維持しやすくなります。
1−4. 不要な部屋がなくなる
戸建ての場合は子供の独立などライフスタイルの変化により、使わない部屋ができてしまいます。
物置にしておくのはもったいないし、掃除の手間がかかってしまいます。
そこで、個人や夫婦で住むためのマンションならば、必要な部屋のみの間取りにでき、生活スタイルをコンパクトにまとめることが可能です。
これまでの人生を見直しながら、不要な物を断捨離する際にも、部屋数は少ないほうがよいといえます。
1−5. 建物の耐震性が高い
マンションの多くは鉄筋コンクリート造であり、地震や台風などの自然災害に強いといえます。
近年は突然の大雨が発生するケースが多いため、ある程度の高さに住んでいれば、浸水のリスクはありません。
戸建てと比べて耐震性が高く、災害に見舞われた際にも落ち着いた判断ができるようになるでしょう。
定期的に防災訓練を行っているマンションなら、緊急時にも迅速な避難が可能になります。
1−6. メンテナンスの手間が不要になる
マンションは定期的に補修を行っており、老朽化した部分の不安を解決できます。
戸建ての場合は自分でメンテナンスをしなければならないため、その負担がなくなるのは大きなメリットです。
また、庭の手入れなどはマンションの管理会社や管理人が行ってくれるため、常に清掃が行き届いた状態で生活できます。
1−7. バリアフリーの恩恵を受けられる
高齢になると、階段や段差の上り下りがつらくなるもの。
高層階に住んでいても、エレベーターがあれば移動は容易にできます。
マンションはバリアフリー設計されている場合が多く、身体に負担をかけずに移動することが可能です。
室内にも段差が少なく、隅々まで清掃しやすいというメリットもあります。
2. 老後をマンションで過ごす5つのデメリット
多くのメリットのあるマンション暮らしですが、デメリットも存在します。
戸建てのように、一つの建物内に家族だけで生活している訳ではない点を納得して住む必要があるのです。
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2−1. 購入の費用がかかる
マンションを購入する際には費用が発生します。
後の6章で詳しく説明しますが、仕事を辞めて年金や預金で生活している場合、マンションの購入費は大きな負担となるでしょう。
経済的に余裕がなければ、マンションに住み代えるという選択肢は難しくなります。
2−2. 管理費や修繕積立金がかかる
マンションで暮らす場合、管理費や修繕積立金の負担が必要です。
管理費はエレベーターや防犯面などの設備の維持費、修繕積立金はマンションの老朽化に備えた修繕費用に充てられます。
マンションの購入費用に加えてこれらの出費が発生する点を踏まえ、きちんと生活できるだけの老後資金の用意が不可欠といえます。
2−3. 隣室の生活音が気になる
戸建てとは違い、隣室の住人の生活音が気になりがちです。
子供やペットのいる家庭の場合、どうしても足音や鳴き声が聞こえてしまうでしょう。
防音性の高いマンションであれば騒音リスクは減らせますが、ある程度は受け入れながら生活する必要があります。
騒音のストレスにより、近所とのトラブルに発展しないように注意しなければなりません。
2−4. 近所付き合いが疎遠になりがち
マンションの場合、居住者の年齢層にもよりますが、隣室の住人と交流する機会は少なくなるケースがあります。戸建てのような町内会などの地域のつながりが希薄になった場合、人によっては孤独を感じてしまうこともあるでしょう。
セキュリティ面に強いマンションだからこそ、隣人との接点も少なくなってしまう点を理解しておく必要があります。
マンション生活で孤独を感じがちな場合は、インターネット上のSNSを使って交流を深める方法がおすすめです。
富士通コネクテッドテクノロジーズ製のらくらくスマートフォンの利用者や、それ以外の機種ユーザーも無料で利用できる「らくらくコミュニティ」は、50代以上のシニアが多く集まるSNSです。
写真や旅行など、自分と趣味の合う仲間を見つけて、自由に交流を深められます。
投稿内容は24時間監視されており、誹謗中傷や個人情報の流出に関する書き込みが行われないようになっているため安心です。
2−5. 設備の老朽化で価値が下がる
マンションを購入してから住み続けると、必然的に設備は老朽化していきます。
それは、マンションの資産価値が下がることを意味しており、何らかの目的で手放すことになったとしても、購入時よりも低い価格で売らなくてはなりません。
築年数の古いマンションの場合、あちこちで老朽化が進んでいる可能性があります。
雨漏りによる浸水や、それによる腐食などにより、生活に不安を覚えることもあるでしょう。
3. こんなタイプの方が老後にマンションに住むのに向いている
老後にマンションに住むメリット、デメリットを把握したうえで、どのような方がマンション生活に向いているかをチェックしましょう。
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主に、上記の条件を多く満たしている方ほど、マンション生活が適しているといえます。
3−1. 子供が独立して離れて生活している方
子供が独立して離れて暮らしている方は、何事もコンパクトにまとまるマンション生活が向いています。
戸建ての場合は不要になった部屋や敷地の管理など、何かと手間がかかります。
また、広い部屋に個人や夫婦だけで暮らしていると、ふとした瞬間に孤独を感じがちです。
そのため、マンションに住む場合は最低限の広さの空間に、必要な家財道具を揃えてコンパクトな暮らしが可能です。
3−2. 車の運転をしない方
日常的に車を使わないという方は、都市部や駅に近い場所のマンションに住むのがおすすめです。
徒歩で移動できる範囲内に主要な設備が整っており、車がなくても不自由なく生活できます。
高齢者の運転はトラブルにつながる場合があるため、車を手放して暮らしやすいマンションに移り住むのはよい判断といえるでしょう。
3−3. 十分な老後の生活資金を持っている方
安定した収入を失った後の老後は、贅沢な暮らしは期待できません。
何かと節制しがちですが、老後の生活資金が十分にある方は、マンションの購入費用で困ることも少ないでしょう。
管理の行き届いたマンションで暮らすことで、セキュリティ面の安心も得られます。
3−4. 持ち家が老朽化してきている方
建物の老朽化は避けられない問題です。
すでにある持ち家が古くなってきた場合、災害時の危険性が増します。
台風の日などは、家のきしむ音に不安を感じながら過ごさなくてはなりません。
瓦が壊れたり飛んでいってしまったりしたら、自分で修繕しなければなりません。
耐震性などに考慮して作られたマンションに移り住むことで、災害などのトラブルを回避しやすくなるでしょう。
また、マンションは気密性が高く、冷暖房を効率よく利用することが可能です。
冬は暖かく、夏は比較的涼しい環境で生活できます。
3−5. 介護など将来のライフスタイルが予測できている方
先の人生で大病を患ったり、次第に体力が衰えることで介護などが必要になるケースは考えておかねばなりません。
親族や介護者のサービスを受けながら自宅で生活する場合は、バリアフリーや生活の導線がまとまったマンション暮らしが適しているといえるでしょう。
将来的に介護施設に入所する可能性もあるため、売却して資産にする可能性も考慮して、マンションを購入する選択肢もあります。
4. 老後に住むためのマンション選びの5ポイント
マンション選びを行う際には、実際に住むことをイメージしながら各部をチェックするのがおすすめです。
以下の5つのポイントを意識しながら、自分に適したマンション候補を絞り込んでいきましょう。
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4−1. 入居後の生活をイメージする
マンションは高額な買い物であり、選び方に失敗すると非常に痛手です。
そこで、入所後の生活をイメージしながら、必要な条件を満たした物件を選ぶ方法が効果的です。
- エレベーターは使いやすいか
- 防犯設備はしっかり機能しているか
- 室内は移動しやすいか
- 周囲の騒音は気にならないか
- 日当たりはよいか
など、生活するうえで自分たちにとって欠かせないと思う条件をくまなくチェックしましょう。
モデルルーム見学など、実際に住む部屋に近い環境を見ておくことも大切です。
写真や間取り図だけでは読み解けない、細かな部分を見極めるチャンスといえます。
4−2. 周辺の環境を調べておく
マンションの建っている周辺の環境は要チェックです。
駅や病院、スーパーなどとの距離はどのくらいあるかを調べておきましょう。
買い物や移動が苦にならないよう、交通の利便性や立地条件は重要なポイントです。
また、周囲の環境もチェックしておきましょう。
自然や公園の有無や、災害時にネックになりそうな場所がないかなど、可能な限り調べておくのがおすすめです。
4−3. 設備がきちんと管理されているか確認する
マンションの各種設備の管理がきちんと行き届いているかを確認しましょう。
- 防犯カメラやオートロックなどのセキュリティが機能しているか
- ゴミの収集場所がきちんと管理されているか
- 庭やエントランスなどの公共の部分が清潔に保たれているか
など、生活に直結する部分は見ておきたいところです。
もし、不衛生な場所などが見つかれば、適切な管理が行われていない可能性があります。
4−4. 十分な耐震性があるか確認する
地震の多い日本だからこそ、万が一に備えて十分な耐震性のあるマンションを選びたいもの。
新築のマンションの場合、「耐震等級」を確認しておきましょう。
耐震等級1 | 建築基準法で定められた最低限の耐震性能を持つ。 |
耐震等級2 | 耐震等級1の1.25倍の耐震性能を持つ。学校や病院などが該当する。 |
耐震等級3 | 耐震等級1の1.5倍の耐震性能を持つ。警察署や消防署が該当する。 |
耐震等級の高いマンションの方が倒壊しにくく、安心して住めるといえます。
築年数の古いマンションの場合は、いつ立てられたかを調べましょう。1981年に改正された「新耐震基準」以前の建築物の場合は、十分な耐震性を得られるように改修工事されたか確認しておくと安心できます。
4−5. 資産として残せるか確認する
介護のため施設へ入所するなど、何らかの理由でマンションを手放さなくてはならない可能性は十分にあります。
その際にはマンションを売却することになりますが、なるべく高い金額になれば、その分を資産にできます。
資産価値が下がりにくいマンションの条件として、
- 人気の高いエリアにある
- 公共交通機関の利便性が高い
- 日当たりや立地条件がよい
- 設備の管理が行き届いている
- 築年数が浅い
などが当てはまります。
これらの条件を踏まえながら、マンション選びを行うとよいでしょう。
5. マンション購入前に話し合っておくべき内容
実際にマンションを購入するにあたって、事前に家族や親族間で話あっておくべき内容があります。
購入後の思いもよらないトラブルに発展しないよう、きちんと意見をまとめておきましょう。
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5−1. 持ち家に住み続ける選択肢もある
老後の生活を豊かにするためとはいえ、無理にマンションに移り住む必要はありません。
経済的に厳しい状態でマンションを購入しても、積立金や生活費に困窮しては意味がないからです。
今の家に住み続けながら工夫することで、年齢に合わせた生活スタイルを確立できます。
家の老朽化が進んだ場合はリフォームや一部の補修など、費用を抑えながら問題点を解決するのは可能です。
移動に不便を感じる場合は、ネット通販や食材の宅配サービスを利用するなど、自宅にいながら生活必需品を手に入れられる状況を作ることも可能です。
5−2. まだ元気のある内に決断する
マンションの購入を考える場合、なるべく元気のある内に決断することが大切です。
近年は定年退職の年齢が引き上げられ、収入を得られる期間が長くなっています。
収入や退職金などをマンションの購入費用に充てられるのは、かなり大きなメリットといえます。
マンションを選ぶ際には、元気に移動できる内になるべく多くの物件を見てから候補を選べるでしょう。
5−3. 家族や親戚と意見をまとめておく
マンションは高い買い物であるため、事前に家族や親戚と意見をまとめておくのが好ましいといえます。
物件探しや引越しの手伝いなど、何かと協力を依頼しなければならない相手だからです。
また、マンションは資産にもなるため、慎重に選ぶためにも意見は多いほうがよいでしょう。
できれば、同居人以外の家族も一緒に物件選びに参加してもらうのがベストです。
第三者からの意見は貴重であり、自分たちでは見落としがちな部分にも気づいてくれるかもしれません。
6. マンションの購入資金を捻出するポイント
老後の生活のための十分な資産があれば問題ありませんが、そうでない場合はマンション購入時の資金をいかにして捻出するかが重要です。
以下の5つのポイントを活用し、購入資金を揃えましょう。
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6−1. 持ち家を売却して資金に充てる
マンション購入の資金にするために、今住んでいる家を売却する方法です。
持ち家を子供や親族が利用する予定がなく、誰かに貸すこともしない場合は、売却することで資金に充てましょう。
6−2. 購入する場合は住宅ローンの利用を考える
マンションを購入する際に、一括で支払わない場合は住宅ローンの活用を考えましょう。
住み替えローンを利用すれば、今住んでいる家を売却しても足りない分の購入金額を借り入れることが可能です。
住み替えローンの利用条件は、自宅を売却する際に住宅ローンを払い終えていない場合で、マンション購入時のローンに上乗せすることが可能になります。
6−3. 退職金の一部を使う
退職金の一部をマンション購入の費用に充てる方法です。
ただし、老後の生活費は年金と預金が主な財源となるため、退職金のすべてを購入資金にしてしまうのは考えましょう。
ケガや病気で急な出費が必要になることも考えられるため、退職金のすべてをあてにせず、購入資金を集めるのが賢明です。
6−4. 賃貸を選んで初期費用を抑える
マンションを購入するのではなく、賃貸に住む方法もあります。
賃貸の場合は毎月の家賃を払い続ける必要がありますが、敷金や礼金などを支払えば、購入時のような高額な初期費用は発生しません。
資産として持つことはできませんが、将来的に介護施設への入所を考えている場合などは、気軽に退去できる賃貸マンションも選択肢に入ります。
6−5. 購入資金は老後の生活に支障がない範囲にとどめる
マンションの購入によって、老後の生活が破綻しては意味がありません。
きちんと生活を続けられるように計算し、身の丈にあったマンション選びも重要といえます。
新築にこだわらず、ある程度の築年数のマンションを選択し、耐震性や設備面の条件を満たした場所を探すのも大切です。
マンションの購入資金を払いながら、ゆとりを持って生活できるようにしましょう。
まとめ
老後にマンションを購入する場合、将来的なライフスタイルをイメージしながら選ぶことが大切です。
マンションに住むことのメリット、デメリットをおさらいし、自分たちがどのような老後を送りたいか慎重に考えながら選んでみてください。
■老後をマンションで過ごす7つのメリット
- セキュリティ面で安心できる
- 管理人がいて安心できる
- 徒歩で買い物に行ける
- 不要な部屋がなくなる
- 建物の耐震性が高い
- メンテナンスの手間が不要になる
- バリアフリーの恩恵を受けられる
■老後をマンションで過ごす5つのデメリット
- 購入の費用がかかる
- 管理費や修繕積立金がかかる
- 隣室の生活音が気になる
- 近所付き合いが疎遠になりがち
- 設備の老朽化で価値が下がる
年齢を重ねるごとにできなくなることを踏まえながら、どれだけ楽しみながら暮らしていけるかは、素敵なマンション選びにかかっています。
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